共同便所

相変わらず学校をさぼって、ルリコと数人の男といつもつるんでいた。


ある日、夜中に帰ると運悪く父が帰っていてしかも酔っていた。


知らん顔しているといきなり私の顔をみて、「お前みたいな女、何て言うか知ってるか?」

と聞かれた。

「知らん」

「共同便所って言うんや」


黙って睨み付けたら、それが気に入らなかったらしく「何や!その目は!」そう言って殴りかかってきた。

馬乗りになって何度も殴られた。


いつもは丸くなっていたり、ちょっと抵抗したりしていたが、この日は反撃に出た。

共同便所と言われ頭に来ていた私は「死ね、こんなヤツ死んだらええねん」本気でそう思って、殴られる中両手を伸ばして父の首を絞めた。



さすがに殴る手を止め苦しそうだった。


やはり最後までは無理だった。


手を離すと、むせて苦しそうではあったが、何も言わなかった。


そして、その日から父の態度は急変した。

ユキにさえ暴力を振るうことはなくなり、いつも何かをジッと考えているようだった。


父の変化を感じ取ってはいたが、素直になる事は出来なかった。


数週間後、父からどうしたいか聞かれた。

「母ちゃんとこに行きたい」

そう言うと「分かった」とだけ言ってそれ以上は何も言わなかった。


父と母がどうやって連絡を取ったのか分からない。

ただ、それからしばらくして、私達は母に引き取られる事に決まった。


とりあえずユキがあと少しで小学校を卒業するので、ユキは卒業を待って、私だけ先に母の元に行くことになった。



フルタ君はもうどうでもよかった。

「結婚しような」と言っていたが、真っ平ゴメンだった。

でも、ルリコと離れるのは寂しかった。

「また会いに行くわ」そう言って別れた。



父には共同便所と言われた事がいつまでも頭にこびりついて、許せなかった。

離れる事を全く悲しいとは思わず、やっと母と暮らせる、そう思うと楽しみだった。


待ちに待った母との生活。

やっと、やっと。

これからは毎日母ちゃんがいる、それだけで幸せだった。

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