離婚

両親の離婚を知って以来、何もかもやる気を失くしてしまっていた私は塾も辞めようと思っていた矢先、塾が閉鎖されることになったと知った。


経営難という事であったが、詳細は分からない。興味もなかった。


放課後は暇だったので、相変わらず吉田さんの家に入り浸っていた。

表面上は学校に来れない吉田さんの為の連絡係として、また給食の残りのパンを届けたり、勉強も教えたりするという事になっていて先生からも頼りにされていた。


実際は漢字ドリル位は一緒にしていたが、ほとんどは布団の上でゴロゴロしていたり一緒にお菓子を食べたりしていた。


吉田さんの料理の腕は上達していて、持って来たパンでサンドイッチにしたり、フレンチトーストのような物を作ったりとアレンジも上手かった。


ずっとこのままがいい。吉田さんは多分お母さんから「ミキちゃんの家はお母さんはいない」という事を聞かされていたと思う。

でも、全くその件には触れなかったので、当時は知らないのだと思っていた。

大人になってから、知っていたけど黙っててくれていたのだろうという事が分かった。


ある日の放課後、先生に呼び出されて「ミキちゃんの家の事、先生知ったの」と言われた。

「大人の嫌な世界、見せられて辛かったね。でも、ミキちゃん何も変わらないから、シンの強い子なんやなぁって先生、感心してたの。偉いね」

先生の前で泣きたくなかったけど、涙が後から後から溢れ出て来てどうする事も出来なかった。


先生はそっと抱きしめてくれたけど、塾の先生にされた事を思い出して涙を止めることが出来なかった。


その日、妹のユキも担任の先生に呼ばれたそうだ。

「何て言われたん?」

「そんな事でくじけてはいけませんって言われた」


もう皆知ってる。両親の離婚。


今までは隠してたけど、もう隠しても仕方ない。

もう母と会う事は出来ないのだろうか・・・


母ちゃんに会いたい。一緒に暮らしたい。

父ちゃんはお酒ばっかり飲んで帰って来ない事もある。

お酒を飲むと必ず「お前らの母ちゃんはな、男と逃げたんや」とか「母ちゃんおらんから寂しいやろ、そやけどな、浮気しとったんやで」など母を責めるような事しか言わなかった。


非常にネガティブな酒だった。


父は荒れていったが、私も荒れていった。

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