第38話00100110 エス・サークル
A国 穀物メジャー所属 『エス』会員たち。
「さあ。エスでも見るか~?」
「これって殺人現場を配信してるんでしょ?」
「そうそう!!」
PCの左端のブックマークをクリックした。
他にお気に入りサイトはなくこのサイトがいかに特別なものかがよくわかる。
「あっ、サイトリニューアル中だって……ランディングページの画面変わった?」
「腕にバンデージした女子高生じゃん!!」
「サイト名の『サディスティック・サークル』を表現してるんじゃない?」
「ああ~そっか!!」
「けどこの小さい黒い箱はなんだよ?」
「最近いろんな国で流行ってるじゃない。日本の
「
「このキャラの名前かな?」
各国の国家上層組織、政官界、法曹界、財界、メジャーなどの一部が世界規模のイルミンスールというシンジゲートを形成していた。
イルミンスールの人間だけが入会を許される動画配信サイト。
『Sadistic Circle』通称『エス』
入会金はひとりにつき
ただし規約に同意し、かつ正規メンバー三名の紹介状があって入会金を一括納付できるならば一般人でも会員になれる。
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海外 R国 石油メジャー 『エス』会員たち。
「なあ、運営者ってこんなのネット配信して大丈夫なのか?」
「これって殺人実況サイトだけどグロとかじゃないからさ~」
「はっ、どういうこと?」
「まず。観たい動画を選ぶとそのターゲットがしてきた悪行なんかが流れてそのあとに殺される場面が観れるんだよ」
「マジか!?」
「……っていっても。水槽みたいな所に落とされると水になっちゃうだけんなんだけど」
「なんだそれ?」
「本当に透明な水になるんだよ」
「いま、うちって水をエネルギーに変換する実験してるから、それに応用しようとしてるんじゃないか?」
「石油の枯渇も近いし……いらない人間を水に変換して選ばれた人間だけが資源として使用するってことか?」
「まあそんなとこだろ!!」
「スゲーな。そんなことを許される組織って」
「まあ、世界を動かす中枢にいるからな~」
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海外 F国 弁護士団体所属 『エス』会員たち。
「こういうのって規制されないのか?」
「なんたって規制する側が暗に容認してるんだから。とくに俺らの法曹界も黙認だし」
「最近は死刑制度を廃止もしくは停止した国が多いからな」
「もしかして?」
「そうだよ。『エス』が請け負ってる。やっぱり世界中どこの国でもどうしょうもない人間はいるんだよ。それを裁くってコンセプトで創られたサイトらしい……」
「へ~そうなんだ」
「じゃあ、さまざまな国家の上層部が関わってるってこと?」
「当たり前だろ。まあうちの国もそうだけど」
「へ~俺らって、そういうヒエラルキーにいるんだ」
「まあな」
「あの人を溶かす水なんだけど犯罪者一掃なんかにも使用されてるってよ。ちなみにあれは日本の
「海外のどこでも持ちだし可能なのか?」
「そう、各国のどんな科学研究所をもってしてもどんな物質なのかが解明できないんだってさ」
「さすがはMADE IN JAPAN!!」
「日本でそれを生成できるやつだけが独占してるんだってよ~?」
「ただ……その水には人間の血や涙に近い成分が含有されてるってことまでは判明してるみたいだけど……」
「たしかアルブミン、グロブリン、リゾチーム、リン酸イオンは入ってるっていってたな~」
「それって涙の成分だろ。じゃあ憎しみの涙とか?」
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海外 I国 総合商社 上層部 『エス』会員たち。
「『エス』見れな~い。とりあえず再開まで待つか~」
「そういえばなかには水に落ちても溶けない人もいるんだよね~?」
「そういう人はきっと悪いことをしてないんだろ?」
「なんか水にジャッジされてるみたいだね?」
「日本からの輸出時の商品コードってたしか『サバキノミズ』って名前だったはず」
「へ~。前に観たのなんてただ水に落ちるドッキリみたいだったよ」
「どこで善悪の線引きしてんだろう?」
「さあな~。『エス』の運営だろ?」
「うちなんて総合商社をいいことに普通のミネラルウォーターとして大量輸入してるし」
「そうだったんだ~」
「それで政府に卸してる」
「……えっ、知らなかった……」
「うそ~『
「ああ~あれか。神罰って意味だっけ?」
「神の裁き。つまり
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海外 D国 経済連合団体 『エス』会員たち。
「ここ十年。急激に世界経済って悪化したよな~?」
「経済政策失敗したんでしょ?」
「いや逆だよ。個人トレードなんかを普及させて、一般市民から『イルミンスール』が吸い上げたんだよ。とくに投資銀行系グループが」
「そうだったんだ~?」
「だから世界の一ヶ所に資金が滞留してて経済が回らねーのかよ!?」
「もっと動かそうよ~私が好きだった日本の私立高校倒産しちゃった~。そこの制服がちょ~かわいかったのに!!」
「まあ学校経営たって……経済なんだから倒産するところもたくさんあっただろうな?」
「けど日本ってホントクールだよね~。あっ『エス』のTOP画面の娘かわいい。腕のバンデージってファッションなのかな~?」
「あれは日本では
「Kawaii!!」
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日本 『エス』 運営部。
「蒲生エリカがはじまりか?」
「まあな」
「罪の意識に耐え切れず自発的に記憶を消す人間がいるそうだな」
「強いストレスにさらされることで記憶を封印するんだよ。それを解離性健忘という……」
「……蒲生エリカは違うだろ? あの事件のあと転校したさきで入水自殺してるんだから。それに桜木ミサのとりまきがATGCのイニシャルなんてできすぎだ」
「あっ、バレた? まあ蒲生エリカと高田マヤは偶然」
「麻生ヒメカと地居サリナは?」
「必然」
「ふざけんな」
「うそうそ。AとCは俺のキャスティング」
「だろうな……」
「まあ、すべては神の配剤だよ。死んだ蒲生が黒木として教育実習にいったのも」
「名字が神野の息子にサバキなんて名前つける悪趣味なやつの考えはわからんな」
「ハム屋に言われなくないね」
「ここで”公安”をハムと呼ばなくてもいいだろ? すべておまえの手の中で転がされてたんだな?」
「いいや。俺はサバキとシオンちゃんに永遠を与えた。だからすべては神の意思。これから解き放たれるふたりにとって俺もおまえも踏みつぶされる草にすぎない。視聴者は劇的なストーリーを望むんだ。ドラマチックであればあるだけいい」
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