第16話00010000 出席番号二十一番 三浦サツキ
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送信者:divine judgement
件名:三浦 サツキ 死亡
本文:http://www.azami-ghs.jp/21.html/
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「えっ……に、二十一番……。素数じゃない……それに死亡?」
黒木は慌ててリンクをタップする。
――やっぱり!! 高田は心なかで大声を上げていた。
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りか
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サイトの右下に「りか」という平仮名以外はなにも書かれてはいなかった。
「が、画像がない……りか……誰?」
黒木は自分自身が一番混乱していた。
もしかして「りか」とは自分のことなのか?と【エ】りか……エリカ……黒木エリカ。
今度は私が死ぬ?
黒木のなかの優位がとたんに翻された。
予習をして試験に臨む、それが当たって
さきほどまでの黒木はそんな状況だった。
だが試験の中盤でまったく未知の問題が出題された状態だ。
黒木はまだ若く、こんなときの対処法を心得ていなかった。
「黒木先生。きっと出席番号は重要じゃないんだわ」
「そんな……もうなにがなんだか……」
天動説を覆された学者たちのように黒木の憶測が崩れると、黒木の思考は完全に停止した。
「黒木先生。とりあえずメールにあった名前の生徒の親御さんたちに安否確認してください?」
「えっ、あっ、はい!!」
黒木は言葉よりも早く全速力で職員室へと走りだしていた。
それは身体的にも内面的にも逃げるような走りかただ。
黒木は考えることをやめたくて無我夢中で駆け抜けた。
途中で廊下の窓が自分を映した、バカな自分を。
あまりの無念さに後悔さえも声をだして笑っている気がした。
(数学に絡めた根拠のない推理ごっこ。私はなんて単純でバカなんだろう。素数で殺人をするなんて推理ドラマでもあるまいし。そんなことをする犯人も思い浮かばない)
黒木はどこかでホッとしていた、あの複雑にからまった問題を放り投げることができたから。
走れば走るだけ理科室から遠ざかることができる。
足取りも心も軽くなっていく。
一段と速度を上げて肩で風を切った。
加速した勢いと自分のふがいなさで顔が歪んだ。
大きな掲示板に貼られた【廊下は走るな!!】のポスターが風にあおられひらりと舞う。
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