XⅫ 底辺だった僕は不本意だけど魅了を覚えました
夕食を終え、僕は食器を洗う。ただ、笑顔を見せただけで何も言わなかったバルバトス様の反応が引っかかる。でも、今はそんな事を考えるよりも……
「カシウスさんをどうしましょう……」
考えても考えても良い案が思い浮かばない。でも、取り敢えず経緯の説明をしてもらった方がいいか。
「気が引けますが、今後の為です……(でも、コレは使いたく無いなぁ……)」
下腹部にある罪印の辺りに軽くをなぞって溜息を吐く。しかし、記憶に残らない様にするにはこうするしか無いと割り切る事にした。
「さて姫、
……ついに来てしまった。僕の目の前にはバルバトス様が立っている。
「まずは効果の低いものからですが……私が見本をお見せしますね」
バルバトス様がそう言うと、突然彼の目が紅くなった。その目で見つめられていると、少し肌がぞわぞわする。それと同時に、軽く撫でられている様な気がして少し気持ち悪い。
「そしてコレが次に強いものです」
今度は少し心地良い気がしてきた。ただ、まだ思考はまともに出来るが、視界の方は少しボヤけている気がする。それと……少し暑い。
「そして一般の吸血鬼が使う魅惑の魔眼」
「っ!?」
―えっ!? なにこれ!?
身体が金縛りにあったかの様に動かない。見つめられているだけで心臓がきゅうっっと掴まれているみたいだ。それに、身体の火照りが治らない。
「真祖の使う魅惑の魔眼」
―っ!!!!!!!!
僕の首筋から汗が滴る。身体全体排出された汗で衣類が濡れている気がする。もう立っていられなくて、僕は膝から崩れてその場に尻餅をついた。
「あ、あ、あぁ、あっ」
口が勝手に開いて体内に篭った熱を吐き出そうとする。視界もボヤけ、目の前にいる人が分からなくなってきた。ただ、分かるのは言葉にできないほどの快楽が僕の身体を蝕んでいると言う事。
「最後にこのくらいでしょうかね。姫の持つ罪印の補助を持った魅惑の魔眼です」
最後に聞いた声はこれだった。この声を聞いた後は視界が急に暗転して覚えていない。
「…………め。………ひめ。……姫」
誰かに呼ばれている気がする。でも僕は姫じゃない。だって男だから……
「起きないのでしたら私が貴女を頂きますよ?」
「っっ!?」
「おや、起きてしまいましたか」
「そ、そそそんなこと言われたら誰だって跳び起きますよ!!」
危なかった……本当に貞操が危なかった……
さっきの声色からして本気だったよ……バルバトス様……
「顔を赤くしてどうしたのです?」
「な、なんでもありません!」
「……ふむ。そうですか……まあ良いでしょう。では早速ニンゲンの雄の所へ行きましょうか」
そう言われて僕は外を見る。もう陽は落ちて、街は街灯で仄かに照らされているだけ。そこ時間はもう、人間の睡眠時間。カシウスさんを起こすのは良くないだろう。
「いえ、もう暗いですし明日にしましょう?」
「……何故です?」
「その……そろそろ寝ないと明日の学業が……か、カシウスさんには家から出ないようにクラヒットに任せますから!」
「……分かりました。しかし忠告を一つ。前にも言ったと思いますが、決してニンゲンの雄に恋してはなりませんからね?」
「わ、分かってますって!」
元男の僕が男を好きになるはずがない。でも……この身体には不自然なほど違和感が無い。でも、僕は本当に男だった。だから、正しく言うなら……懐かしい?
「ゆ、湯浴みしに行きます!」
「あ、姫、寝る際はどうするのです?」
忘れてた。カシウスさんを寝かせていた部屋、僕の寝室だ。流石にバルバトス様用の寝室は駄目だろうし……(そもそも朝起きたら大抵僕の部屋で一緒に寝ているんだけどね……)
「…………ソファーの上で寝ます」
「……残念です」
うん、流石にね。残念がっても僕はそのままソファーの上で寝るからね。
「さて、髪の毛も乾かし終わりましたし寝ますか」
寝間着姿はやっぱりカシウスさんには見せられないな、うん。アリサに注意されて以来意識しちゃってるなぁ……
二人分が座れるソファーに仰向けで寝転がる。そこに毛布を軽く掛けて天井を見た。
「天窓……有ったんですね……」
灯りを消した部屋は物静かで、月光の侵入を許した。元々少し広いから物寂しい。けれど、あの僕以外誰もいない別館よりかはマシだ。
「それにしても……『みつけた』ですか……」
いまだに覚えているあの声。懐かしく、愛おしい声。でも、その声は初めて聴いた声。だから謎なんだ。恐らくだけど元々僕は魔女で、人として生まれて来たから人族の男だったけど、お義母様が僕に何かしらの刺激を与えたから魔女に覚醒。その際に宿っていた悪魔(?)が原因で女性の身体へと再構築されたのだろう。で、あの謎の声は僕の身体が女性になった原因の関係のある者……
愛おしいとか思ったって事はパートナーとかかな?
「情報が足りないですね……もう、寝ましょう」
瞼を閉じる。静かな部屋は寂しいけど……此処はちゃんと僕の居場所である気がして落ち着く……
可愛い可愛い私の子供達。
愛おしい愛おしい私の夫。
昼夜問わず交わり合いましょう?
朝起きると夢の内容は覚えていなかった。ただ、何か悍ましい者たちの姿を可愛がっていた様な気がする。
「……?」
人肌の様に暖かい、少し筋肉質なものが僕の頬に当たっている気がする。寝ぼけ眼でそっと顔を見上げると、僕はその……バルバトス様に軽く抱き着かれながら寝ていた。
「ば、ばばバルバトス様!?」
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