remedy


「温泉でも、行きたいねぇ」

 いつものようにお気に入りのタウン情報誌をめくって、お前が言った。今月号の特集は近場で楽しめる温泉。車でも、電車でも、一時間圏内にある温泉旅館や施設の紹介をしていた。

 ソファの上で俺の作ったパウンドケーキをもぐもぐを食べながら、しばらくその特集に釘付けになっていた。

 土曜日のデーゲーム。俺はテレビで野球中継を見ながら、時々その様子を窺っていた。パウンド型ひとつ分を8等分にスライスしたケーキは、プレーン生地とココア生地のマーブル。ぱっくりとてっぺんが割れたそれを見て、お前が歓喜の声を上げたのは、つい20分ほど前のことである。

 基本的に、パウンドケーキは焼けたら冷まし、アルミホイルに包んで保存缶に入れ、2~3日落ち着かせてから食べる。その方がおいしくなるからだ。けれど、お前がその数日を待てるはずもなく、焼きたてアツアツを味見だと言って一切れ、やっぱりおいしいねえなんて言いながら粗熱の取れたそれを一切れ、二切れ。結局、いつの間にか落ち着く時間もなくそれは消え去る。だから、パウンドケーキは必ず2本、焼くことにしている。有名なおかき専門店の、おかきの入っていた缶は、ちょうどパウンドケーキが2つ収まる大きさだ。けれど、しまい込まれるのはいつも1本だけ。

 雑誌の上にぽろぽろとケーキのカスを落としながら、お前がそう言ったのを、俺はタイミングよく見ていた。俺はお前の手から雑誌を奪い、水平に持ったままソファを立ち、ゴミ箱の上で縦にした。雑誌の上から、こぼれたケーキを払い、再びソファに戻る。そして、開いたページをそのままにお前に返してやった。

 まだしっとりと落ち着いていないケーキは、少しパサついていてこぼれやすい。

「たまにはのんびり、温泉」

 俺を見上げて、子供みたいに大きく口を開けて言った。その顔はどこか、空腹で餌をねだってニャーニャーうるさく鳴く子猫みたいだった。と、いうのも、ここのところ、お前がやたらとごろごろと喉を鳴らして俺に擦り寄ってくるからだ。そのたびに、俺は実家で飼っていた猫を思い出す。

 猫。まさに。

 家にいるときはぴたりとくっつき、離れない。だからと言ってべたべた絡んでくるわけではなく、つかず離れず傍にいる、というのに近い。料理をしていても、普段はカウンターの向こう側から見ているだけなのに、ここのところはまるで寄り添うように俺の傍でその手元を覗き込む。

 夜は自室ではなく、俺の部屋にやってきて、同じベッドで眠る。

 いつものようにソファに並んで座っていても、俺の腕や足に身体の一部をくっつけるくらいの距離でいる。普段は意識することなく、一定の距離──遠からず、近からず。近すぎるときもたまにはあるが──を保っているのに。

 今も、俺の左腕に、お前の右腕や肩が触れている。いつものポジションよりも、俺に近付き、その分俺は少し窮屈だ。元々そんなに大きなソファではない。二人掛けの、大の男が2人並んで少し余裕があるくらいの大きさである。

「──あ、でも、大浴場だと、あんたのこと、みんなに見られるなあ」

 雑誌に目を落としたまま、お前が言った。

「みんな、悩殺されちゃうなあ」

 いや、ありえないから。

 俺は思わず突っ込みを入れそうになった。

 30過ぎの男の身体を見て、同じ男が悩殺されるなんてのは、漫画や小説の世界だけである。しかもその手の内容の。普通、男は男に欲情はしない。

 第一、悩殺は男が女にされるものだ。つまり、女にしかできない。

「いい身体してるもんねえ」

 雑誌から顔を上げて、お前がいきなり俺のトレーナーをめくった。20代まではくっきりと割れていた腹筋も、今は少しそのラインを薄くしていた。まだ腹は出ていないが、あの頃に比べれば、自主的に運動をするわけではないから、キープするので精一杯だ、まあ、腹筋くらいはたまにやっているけれど。

「筋肉バキバキっていうんじゃなくてさ、微妙に、うーっすらだけついた肉がまた、いい感じ」

 俺の腹を撫でながら、お前が楽しそうににこにこしている。

「作ってませんって、感じだよねー」

「……楽しいか?」

「うん」

 指先で、まだ腹筋の名残のある硬い身体を押す。お前に比べれば、締まっている方だとは思う。けれどそれは多分、学生時代野球部で鍛えていたおかげである。身体がスポーツをしている人間のそれになっているので、だらけた生活を続けない限りは、、そう簡単にたるんだりしないはずだと自負してはいる。

 まあ、お前だって、あれだけ食べているのに結構いい身体をしている。元々太りにくい体質らしく、細すぎるということはないが、太ることもあり得ない、と言った感じだ。ハリのある肌はつるつるで、衰えを知らない。日がな一日食って寝ていても、体形の変化は皆無。時々本気で憎い。

「やっぱり、人には見せたくないなあ……」

「いや、余計な心配だから」

「ううー……」

 ぐるる、と威嚇する猫みたいな声を出して、お前が俺の腹を凝視する。撫でている手に力がこもり、気が付くと両手で俺の腹筋に触れていた。

「おい、くすぐったい」

 お前は目を据わらせて俺にのしかかるようにしている。

「…………?」

 俺が、様子のおかしいお前の顔を覗き込もうとすると、突然、お前が俺のトレーナーをすぽんと脱がした。

「はああ?」

 上半身裸にされて、俺は混乱する。

 お前が、俺にまたがり、ぺたりとその身体にくっついた。

「気持ちいい」

 俺の胸にひたりと当てられた頬と、押し付けられる身体。まだ春先で、空気は少し、ひんやりとしている。脱がされた俺は、少し、肌寒さを感じるはずだった。しかし、そうはならなかった。

「────?」

 俺は、裸の身体にぺたりとくっついたお前の額に、そっと手を当ててみた。

 ──熱い。

 俺にくっついたまま、お前がすやすやと眠っていた。真っ赤な顔をして。

 俺は慌ててお前を抱き上げ、部屋に運んだ。もちろん、姫抱き、というわけにはいかなかったが。


 くわえた体温計を引っこ抜いたら、37,8℃だった。

 お前がベッドでうーんうーんとうなっている。

「おかしいと思ったんだよ」

 俺はベッドサイドで、お前を見下ろした。

「なんか、最近、やたらくっついてくるなと思ってた」

「うーん」

「くっついてくるくせに、いちゃいちゃって感じじゃないし」

「うーん」

「俺のベッドにもぐり込んでくるくせに、さっさと1人、ぐーすか眠っちまうし」

「うーん」

 別に、その気になった俺を放置して横で安らかな寝顔を見せるから、悶々とした夜を過ごす羽目になったことを根に持っているわけではない。

「お前が食べ物をこぼすなんて、珍しいし」

 普段は米一粒だっておろそかにしないお前が、雑誌の上にぽろぽろとケーキをこぼすなんて、あり得ない。分かっていたのに、気付いてやれなかったのはこちらである。

「うーん」

 温泉で俺の身体がどうこうという話も、考えてみればおかしい。きっと熱に浮かされて訳の分からないことを口走っている自覚がなかったのだろう。

 そう言えば、実家の猫も、病気のときはいつも俺にくっついてきた。構おうとすると逃げるくせに、気が付くとその距離を詰め、触れるか触れないかギリギリのところで丸くなっていた。だから、そんなときは黙って近くにいてやった。眠るときも、同じベッドで眠った。ぐるぐると不思議な音を鳴らして眠る猫は、普段よりも温かかった。

「大丈夫か?」

「うーん」

 さっきからずっと、その繰り返しだ。

「病院、もう終わったな。──明日、休日診療の病院行くか?」

「うーん」

「……どっちだよ」

 まあ、それは、一晩様子を見てから決めることにしよう。

 俺は体温計をケースにしまい、お前の額に冷却シートを貼った。冷蔵庫で保管されていたそれは、前に俺が熱を出したときに使った残りで、端っこが少し乾燥してくるりとめくれあがっていた。買い置きはそれだけらしく、救急箱にも入っていない。

 お前が布団の中でうーん、とうなるのを見つめながら、必要なものを頭の中で並べてみた。

「ちょっと、買い物行ってくるな。──1人で大丈夫か?」

「うーん」

「喉は痛むか? 夕飯食えるか?」

「食べる」

 そこは普通に返事するのかよ。俺は少し安心して苦笑した。食欲があるのなら、心配はないだろう。

「おかゆがいいか? 普通の飯がいいか?」

「両方」

「両方?」

「両方」

「……了解」

 お前は、熱を出してもやっぱりお前なんだな。

 俺はお前の頭を撫でて部屋を出た。

 夕飯は消化のいいものを作ろう、と思いながら、買い物に出た。まずは薬局で冷却シートと熱に効くタイプの風邪薬を買う。それからスーパーに向かい、スポーツドリンクとビタミン補給のために100%のオレンジジュースとリンゴジュース、アイスクリーム、夕飯の材料を買った。

 家に帰ってお前の部屋を除くと、赤い顔をしたままくーくーと眠っていた。俺は古いシートを剥がして新しい冷却シートを開けた。さらりとした前髪が挟まらないように片手で持ち上げると、形のいい額が露わになる。うっすらと汗の滲んだそこをタオルで拭いてから、シートを貼りつける。

 キッチンで、まずは鍋に水と粉ゼラチンを入れて火にかけて煮溶かし、砂糖とジュースを入れてゼリーを作った。オレンジとリンゴの二種類。ケースに流しいれて冷蔵庫で冷やし固める。

 フライパンに砂糖を入れて火にかけ、ぷつぷつと煮立て色づいて来たら跳ねに気を付けながら熱湯を一気に注ぐ。カラメルソースの完成。煮立てないようにゆっくりと火を入れた牛乳に砂糖を溶かし、ほぐした卵を入れる。カラメルソースを流し込んだ大きな耐熱のガラスの器にそれを流しいれ、蒸気の立った蒸し器で蒸して巨大プリンを作った。こちらも、粗熱を取って冷蔵庫に入れておく。

 冷凍庫のアイスクリームと合わせれば、お前が満足するくらいの量のデザートができた。

 生サーモンはレンジで加熱して火を通し、骨と皮を除いて、フードプロセッサーにかける。レモン汁、クリームチーズ少々、マヨネーズ、生クリーム、塩を加え、さらに混ぜる。溶かした粉ゼラチンを加え、器に入れて冷やし、サーモンムースを作る。

 玉ねぎは薄切りにしてじっくり、ゆっくり、飴色になるまで炒める。ぺたぺたになったらお湯とコンソメを加え、塩コショウで調味し、オニオンスープ。

 鶏ひき肉にすりおろした山芋を加えて練り、小判型に形作り、フライパンで焼き色をつける。両面焼けたら酒、水、砂糖、しょうゆを加えて火が通るまで煮込み、水溶き片栗粉でとろみをつける。ふわふわの和風つくね。

 取り分けておいた鶏ひき肉と半割にしたカブを柔らかくなるまで煮込み、だしの素と塩で味付けして、こちらも水溶き片栗粉でとろみをつけ、煮詰める。カブのトロトロ煮の完成。

 かぼちゃは乱切りにして砂糖、塩少々をふって、黒砂糖をひとかけら加え、弱火でゆっくりと蒸し煮にする。仕上げに火を強めて水分を飛ばしてかぼちゃの甘煮。

 塩鮭は蒸してからほぐし、フレーク状にする。しょうゆと和風だしで薄めのだし汁を作り水溶きからくり子でとろみをつけてくずあんを作る。鍋に湯を煮立て、火を消したら卵をそっと加えてそのまま15分ほど放置する。けしていじらないこと。温泉卵の完成。ネギを刻み、常備菜の海苔の佃煮──これも手作り──かつおぶし、塩、みそを用意する。

 米は洗って、1人用土鍋に入れる。米の5倍の水を加え、火にかける。煮立ったらとろ火にしてじっくりゆっくり、40分以上かけて炊く。米が柔らかくなったらふたをして5分から10分蒸らす。おかゆの出来上がり。

 時計を見たら、ちょうど夕飯時だった。俺はお前の部屋のドアをノックした。返事はない。扉を開けて、ベッドに近付く。お前はまだ眠っていた。息は乱れていないし、まだ顔は赤いが、苦し気な様子もない。

「飯だぞ」

 声をかけたら、ぼんやりと目を開いた。

「お前の大好きな飯の時間だぞ。──食えそうか?」

「ん……」

 お前がにこーっと笑顔んいなり、ゆるゆると起き上がろうとした。お前の背中を支えるようにして手助けしてやる。触れた背中は熱く、汗でじんわりと湿っていた。

「持ってくるか?」

「行く」

 お前がベッドを下りて、タオルケットを身体に巻き付けたままずるずると歩き出した。俺はハラハラしながらその後ろをついていく。テーブルの前に座り込んで、お前が肩から落ちたタオルケットを直している間に、出来上がった料理を並べた。

「いただきます」

 具合が悪くても、きちんと両手を合わせて言った。

「おかゆのトッピングは、好きなのをな」

 土鍋の周りに温泉卵、くずあん、鮭フレーク、ねぎ、かつおぶし、海苔の佃煮、塩、みそ、と並べてやったら、うきうきした顔で器におかゆをよそい、トッピングの器をぐるりと見回してどれにしようか考えている。

 カブは触れるだけで箸が通るし、つくねは山芋でふんわり、スープも玉ねぎがとろけている。とろみ系が多いのは、もちろん、身体を温めるためだ。

「これ、好き」

 サーモンムースは、ちょっと胃の調子が悪いときや、具合の悪いときに作る。

「おいしい」

「ジュースあるからな。あと、オレンジゼリーとリンゴゼリー。プリンにアイス」

「すごい」

「プリンはこんなやつ」

 俺は両手でガラスの器の大きさの円を作って見せる。

「食べたい」

「ん、飯のあとな」

「うん」

 素直にうなずいて、キラキラと光るおかゆを口に運ぶ。柔らかく炊けたそれを食べるお前を見ていたら、前に俺が熱を出したときにお前が作ってくれた荒っぽいおかゆのことを思い出した。

 アルミの鍋の底を焦げ付かせながら作ってくれた、まだ粒の残るおかゆだった。

 お前が作ってくれた、初めての手料理でもある。

 にやにやしていたら、お前が不思議そうな顔をして首を傾げた。

「何?」

「いや、別に」

 お前は腑に落ちないという顔をしていたが、問い詰めるのも面倒だったらしく、それきり訊ねてはこなかった。

 熱はあっても食欲は落ちないらしい。お前はおかゆをぺろりと平らげ、用意したトッピングもきれいに食べた。普通のごはんも食べたいと言い出し、茶碗によそってやると、おかずもろとも食べつくした。

「ごちそうさま」

 両手を合わせてそう言うと、ソファに身体を寄りかからせた。

「寝るか?」

「──デザート食べてから」

 そのままうとうとしながら答える。俺は風邪薬と水を用意してやった。薬を飲んでもそこから動こうとしないので、しばらくそっとしておいた。その隙に食器を片付ける。明日の朝用に米を研ぎ、炊飯器のタイマーを入れた。

 冷蔵庫から大きなガラスの器を取り出してテーブルに置いてやると、うつらうつらと揺れていたお前がぴこんと覚醒した。スプーンを渡すと、直径20センチ強のその器いっぱいのプリンに突っ込んだ。

「おいしいー」

 ふるふると揺れるプリンは、スも入らず、上手に蒸しあがっている。

「幸せー」

「こんなことでか」

 俺は苦笑した。お前がプリンを頬張りながら、こんなこと、じゃない、と言う。

「夢はバケツプリン!」

「バケツ、ねえ」

 まあ、夢を見るのは勝手である。しかし、俺はバケツなんぞでそれを作ってやるつもりは、この先もけしてない。──いつかはバケツ並みの大きな容器で作ってやろうとは思っているけれど。

「ねえ」

 スプーンをくわえて、お前が俺を見る。

「こっち、座って」

 俺はテーブルを挟んでお前の正面にいた。別に意味はない。お前が自分の横を指さす。俺は立ち上がり、いつものように隣に座った。お前がぺたりとくっつく。

「熱出したの、久しぶりだ」

「疲れてたんじゃないか?」

「そうかな。──そうかも」

「まあ、明日も休みだし、ゆっくり休め」

 お前はうなずいて、プリンを食べる。いつもよりはそのスピードが遅い。けれど結局は容器の半分ほどを食べた。

「シャワー浴びるか?」

「んー……汗かいたけど……」

「着替えだけはしろよ」

「うん」

 お前が立ち上がり、またふらふらと歩き出した。一旦洗面所に立ち寄り、水音がした。俺はリビングからその様子を見守る。数分後、洗面所を出てきたお前が俺を振り向いた。ひきずったタオルケットを引っ張りながら、俺の名を呼ぶ。

 どうしたのかと俺が歩いて行くと、お前が俺の服の袖をつかんだ。

「──一緒に、寝たい」

 実家の猫は、具合が悪いとき、いつも俺の布団の中。ぐるぐると不思議な音を鳴らして。

 普段よりも温かいその体温を感じながら、俺は眠る。柔らかい毛を時々、優しく撫でながら。

 俺を見上げるお前が、寂しそうな目をして俺にすがる。

「着替えてな」

 俺はお前の頭を撫で、リビングに戻って電気を消した。寝る支度をしてお前の部屋に入ると、新しいパジャマに着替えたお前がベッドの上で格闘していた。身体に巻き付けていたタオルケットを戻そうとして、ベッドに残されていた布団を蹴りだしている。

「何してんだ」

 どうやら横着してベッドに入ったままそれをかけようとしていたらしい。俺に見つかって、お前がえへへと笑った。

「寝ろ」

 俺はタオルケットと布団を引きはがす。お前がベッドに横になる。順番に寝具を整えてから、俺もベッドにもぐり込んだ。俺の部屋のベッドはセミダブル。2人で寝ても多少の余裕はある。けれどお前のベッドはシングル。さすがに男二人には狭い。しかも183センチの俺には、手足を伸ばすのも窮屈だ。

 俺が身体を横にすると、お前が俺に抱きつくように身を寄せた。

 お前の身体は、普段よりも熱かった。

「風邪、うつんないかな」

「さあ、どうだろうな」

「うつしたら、ごめん」

「そうなったら、また、あのおかゆ作ってくれ」

 俺の言葉に、お前が笑った。

 病気の猫はぐるぐると。

 心細いのか、寂しいのか、いつも俺の傍に擦り寄る。

 俺はお前の頭を柔らかく撫でる。ゆっくりと眠りに落ちていくお前の髪にキスをして、その身体を抱き締める。

 俺は、お前の寝息を聞きながら、その狭いベッドでぐっすりと眠ったのだった。


 了



 パウンドケーキを焼くのが好きです。

 簡単だというのもあるんですが、焼きあがって、冷めたものをアルミホイルに包んで缶にしまい込み、落ち着かせておくというあの工程が好きです。

 てっぺんがぱっくりと割れた姿を見ると、ほくほくしてしまいます。

 でも、粗熱を取ろうと思って網の上に乗せて置いておくと、いつの間にか端からスライスされて食べられています。

 ……てなわけで、いつも寝かせてしっとり落ち着いたパウンドケーキが食べられません。

 だから必ず2本焼きましょう。

 1本を人身御供にして、もう1本はしっかり保管。

 落ち着いて食べ頃になったパウンドケーキは、やっぱり、いつのまにかあっというまになくなっています。

 ……頼むから一言断ってから食ってくれよ、と毎度思う私であります。


 remedyは「治療」とか「改善」ですけどね。

 カタカナ表記の「レメディ」になると、ホメオパシーとかの方になりますね。

 バッチフラワーはちょっと気になりますが、小説とは一切何の関係もありません。悪しからず。

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