第12話蒼い空と黒い雲(3)

さて、千夏ちゃんを家まで送り届け(俺優しすぎない?)、帰宅すると母さんからの置き手紙があった。『おじいちゃんが盲腸で手術するらしいのでちょっと北海道まで行ってきます。家事よろしく』

oh......母方の祖父は元気すぎて(この人死なねえんじゃねけか)と思ってたが、盲腸はそう甘くなかったか…あの歳で盲腸とは中々辛いな。家事よろしくとの事だが、翠が夕飯作ってくれてたりは…

「あお兄おかえりー、早くご飯作って〜」

しませんよね、わかってた。


「ほい、出来たぞー」

「はーい、あ!肉じゃがだー!」

冷蔵庫の中にあったものでこれしか作れなかったのだが、翠の好物だったから助かった。

「お母さんの肉じゃがも美味しいんだけどさ、あお兄の味付けの方が好きなんだよね」

との事だ。中学生の時の調理実習でペアになった女の子に教えて貰った味付けだ。その時から料理に興味を持ち出したから、たまに晩御飯を作ったりはしていた。

「あお兄はいいお手伝いさんになるよ」

「…左様ですか、お嬢様」

俺が結婚することはないと…生涯独身は嫌だ!


晩御飯の片付けも終わって部屋に戻ったら、沙夜姉の部屋の電気がついているのが見えた。いや、それは当たり前のことなんだが、今日そそくさと帰ってしまった理由も気になる。

「連絡してみるか…」

わざわざ電話するのも変なので、メッセージにすることにした

【今日元気がなかったけど大丈夫か?悩み事とかなら聞くぞ?】

…これでいいかな、送信っと

「お、既読つくの早いな」

送った3秒後に既読マークがでた。

…は良かったのだが、それから10分返事がない。風呂に入ってたら来るかと思ってゆっくり浸かって出てきたがやはり返事がない。

「ぐぬぬ…いつもの手を使うか…」

沙夜姉俺の部屋でがいたずら等をした時に使う逃げ道、その名もベランダからベランダへ飛び移る!

「とうっ!」

距離は1mちょっとというところなので危なくて親から禁止されているが、幸い今日はいない。無事着地に成功し、沙夜姉の部屋の窓をノックした。

「え?あ、ちょっと待ってて!すぐ開けるから!」

何やらバタバタとすごい音が聞こえる。数十秒後、カーテンが開いて沙夜姉が出てきた。

「えっと、ど、どうしたの?」

「どうしたのじゃねえよ、返事が欲しいのに既読スルーするもんだから心配して来たんだっつーの」

「あっ、ごめんね、画面つけっぱなしで本読んでて気づかなかったなー、ごめんごめん」

これは嘘だな…、隠し事がある時の沙夜姉は何故か「ごめん」を連呼する。まずトークを開かないと既読はつかないだろ。

「で、何かあったのか?」

「え?なんのこと?何も無いよ?既読スルーも本読んでただけだしそれに――」

「沙夜姉、俺が何年沙夜姉と過ごしてると思う?」

「…とりあえず中入って…」

部屋に入ると所々床に置きっぱなしの本とかプリントがある。さっきどんだけ片付いてなかったんだよ…

「飛び移ってきたことおばさんに見つかってない?」

「今日はいないよ、じいちゃんが盲腸だとさ」

「そっか、大変だね」

ここまで来たものの、どう切り出そうか。こんなに大人しい沙夜姉は久しぶりだからな…

「そうだ、今日部長と話してたけど何話してたの?」

と言うと、沙夜姉の背中がビクッと震えた。なるほど、その事が絡んでたのか。

「あれだよ、今度大会があるでしょ?団体戦のメンバー男女それぞれどうするか決めようって話」

「それだけ?」

「う、うん、それだけそれだけ」

沙夜姉の嘘つく時その2、同じ言葉を二度くりかえす。

「そうか、で、それ以外は何を話したの?」

「…もう、あお君にはお見通しか…」

やっと諦めたか。沙夜姉限定で心理学者できるぞ俺。

「今日、出雲君に告白されたの」

告白…そうか、告白…ん?告白?

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る