第11話蒼い空と黒い雲( 2 )
その日の部活は沙夜姉が男子も指揮って無事に終わった。その日の帰り、いつもは一緒に帰る沙夜姉だが今日はそそくさと1人で帰ってしまった。追いかけようとして校門を出たところで...
「お疲れ様です、お兄さん。とりゃ!」
「おわわわわっ!危な!」
千夏ちゃんが後ろから乗っかってきた。
「私の家までお願いしまーす」
「俺はタクシーじゃない!というか、ずっと待ってたの?もう真っ暗だよ?」
「私は委員会です。そろそろお兄さんも帰る頃だと思って待ち伏せしてました♡」
「しなくていいからっ」
沙夜姉が心配だが、後でメールでもするか。
「とりあえず降りてくれないかな?」
「いやデーす。そういえばお兄さん、今日はあの方と一緒に帰らないんですか?」
「追いかけようとして、君が乗っかってきたんだよ」
「そんな、私を優先してくれたなんて...結婚しましょ?」
「話聞いてたか!?あと飛躍しすぎ!」
「じゃあ恋人から?」
「そうじゃない」
「...」
急に千夏ちゃんが黙ってしまった。そして暫くすると、真面目な顔をして話し出した。
「お兄さん、ひとつ話しておきたいことがあります。忠告に近いですかね」
「忠告?」
「はい、近いうちにお兄さんはボコされる可能性があります」
「え...?」
千夏ちゃんの話によると、今日図書委員である彼女が資料室から図書室へ本を運んでいる時に通った教室で、コソコソと話していた男が何人かいたらしい。そこで本を落としたフリをして聞き耳を立ててみると、俺を秘密裏にボコす計画だったらしい。ボコすというよりは怪我をさせることが目的らしく、事故として片付けようとしているとのこと。そこまで聞いたところで教室から人が出てきて逃げてきたらしい。
「いやなんで?」
「それは私にも分かりません。お兄さんが何かしたんじゃないんですか?」
「いやー、心当たりが...」
「あ、ならあれじゃないですか?秋月先輩と仲良くしすぎててファンクラブがついに暴挙に出たっ」
「そんなことで俺怪我させられるの?!」
「怖いですよ〜嫉妬ってものは人を鬼に変えますからね」
だからといってそれがバレたら退学になりかねない行動を起こすまではない。もしそれが理由としても、もっと大きな理由が他にあるはずだ。
「千夏ちゃん、ちなみに誰が話してたかわかる?」
「それはわかりませんでした。聞き耳をたててただけですし。あ、でも教室から出てきた人はわかりましたよ。3年生の藤宮さんでしたね」
藤宮...確かサッカー部の人だったな。沙夜姉と同じクラスだ。1度沙夜姉の話に出てきたな...確かその人が授業中眠くてうつらうつらしてて、先生から教科書の角でつつかれた時に、慌てて言った言葉が「好きだ!」だったらしい。もしこれが沙夜姉が好きって意味だったら、嫉妬って面が伺えるが。
「わかった、とりあえず情報ありがとう」
「あんまり動じないんですね。もっと慌てるかと思ったのに」
「殴りかかられたら返り討ちにするくらいの自身はあるからね。伊達に空手をしてる訳じゃないさ」
「やっぱ頼もしいですねっお兄さんっ」
「ぎゃぁー!首を絞めるな首を!」
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