第5話 ch2

「出ます」早朝、スタジオを出た。徹夜で作業行う顔見知りが数人、ロビーのソファで体に休む許可を与えていた。

 移動には新幹線を選んだ。空を飛ぶよりも時間が読める。急かされた搭乗は人目を引く。

「後日改めて、改善があれば連絡を」予定を繰り上げて曲を仕上げたため、担当者は朝方に送った音源を受け取るや、ひとっとびで出発の二分前にスタジオに姿を見せていた。着の身着のまま、腕脚ともに肌をさらした洋服はボタンとネクタイを締めたスタイルよりもその人が感じられた。

 席は二席分を一人で使う。洋服を買う見栄、時代に合わせた新しい装身具、情報は購入をしない。食べ物にも無頓着、優劣、好き嫌い、良しあしもなく、栄養と体を動かす燃料と捉える。身になればそれで。乗車券の一枚は安い買い物である。

 目的地。駅前の広場に出た。素顔とギターのシルエットが遠目より、すれ違い行き過ぎる正面からは、指と端末が向けられた。出迎える車へ、荷物は運転手に預けた。

「ギターは抱えています」顔から車内へ乗り込む。裏切られた不満気な顔は、運転手の早合点がもたらしたもの。預ける権利があれば、反対の抱える、近くに置いておく権利もまただ。

 手筈の通り、タクシーが動き出す。短い閃光がフロントガラスからパンパンとぶつけられた。

 大あくび、同乗者が脳に酸素を送る。軽自動車が2台、黄色信号で交差点を越えた。ひどく青い空だ。

「反対のドアを開けても?」

「私が開けますので」体を捻じり、「そのままで」外へ出て出迎えるまでが送迎サービスなのか。

「領収書を持ち帰れるとは」、音色の合図、アイラ・クズミは順番に降りた。


「船内を回る必要がありますかね?」カワニの心境は穏やかな振幅の波が、山を作る。

「説明が要りますか?」タテカワとアキはアイラの言動を理解し、各自抱えた仕事に取り掛かった。

「歌を歌う資格を得る」くどい、エントランスのロビーに備え付けた椅子、タテカワは視界を外す。悪態が口をつく。

 私は続けた。

「媒介です。弦を弾じくギターとて、プリアンプにアンプ、スピーカーを通じて音を出す」カワニの理解が得られても、続けた。「船内の機関室を覗きたいとは。ときに私はどこで仕事を果たすか、日ごろから正体を世間へ晒していますか?」振られたカワニの首。

「案内を」ギターは会場奥の控室に。

「どこにいようと。船内に代わりがありますか?」アイラは探索に取りかかれた。


 彼女は三等、二等客室を、デッキへ出て船主を望みフロントロビーに引き返した。

 階段を上がる。

 十数時間の船旅に空間を大金を支払う、彼女は一等にスイート、ロイヤルスイートの特別室と興味は初めから持ててはおらず、船尾へ引き返した。


「控え室に」立て続けに要望に応じた。服は左手の、曲数は十二曲にアンコールを含む。見せかけを信じた、応え要望に適う。

「私は周到です」

「馬鹿をいえ」

 働きかけを強くはじいた。

「彼らの期待と同等に扱われては。CDならば喜んで大幅な値下げを。等しく扱うなら、この場に来られない大多数です」売り場にでは。楽しみに胸躍らせる、特別な直接聴く機会で十分。

「訪れる方の目的は」一言につきる。


 チェックの開始に呼ばれて、一曲を奏でた。再度上階のエンジニアから増幅を施され指示の飛ぶ、スピーカーは首が伸びて二基とも据置く箱と役目を果たす。

 音の鳴り、響き、声の届く人のなき空の床へ、だれのために、空港が顔のさした一場面に私は、

「その手が答え」求めた伸ばした、端末を掲かぐ、たんまり食を運ぶはだれがためか。

「わかりました」三十分後にまた、機材を入れ替える、指定はとてもありがたい。

 予備のギターが届いた。送料は莫迦にならないのですがね、カワニは不満を漏らす口を、向きを変えて両手の掌(ひら)がみえる。危険を分けた、飛行機の乗り上空で迫る危機は演奏者もろともが大いに、。

 手のさわり息を吹きかけ。心構えを強いた。

「どちらへ。乗船は四時間後ですよ。そっくり、まだ四時間も先である。


 午後を回り日の暮れた空を綺麗など、住まいの落ちる方角すらあくせくと。しかし、家相には長じる。手は振り返すものか、振らずの権利も得られるのだ、熱がすっかり風は移り変わる先々をはらむ。衣装に着替えた。遅すぎて指摘を受けるぐらいなら、もしものためにもう一着がラックに下がる。心配が彼の仕事と彼女は割り切る。

 乗船、人が口々に連れと、顔見知りが船内で落ち合う、端末の所持は禁じて固く安心を願いにすら許さず、目と耳があろうに、客室へまず荷の置いて、張りつけた直筆に目を止めなさい。

「出ます」アイラは腰を上げた。


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