三通目 一枚目

私の日常というものは面白みもなく同じことの繰り返しであった。

きっと私以外の大半がそうであろう、変化があるのは世間話の話題と授業の内容くらいだろうか。

そんな代わり映えのない毎日に突然風穴を開ける様な出来事が起こった。

今、勉強机の上に置いているものが原因であったが夢か現かも分からない状況だった私にとってそれはどうでもいい事だった。

丁寧かつ迅速に手紙の封を切る。

そこには二つのものが入っていた。


一つ目は便箋。中には


「お手紙ありがとう。情熱的な思いは俺に新たなインスピレーションと、感動を覚えさせてくれました。これはそのお礼と感謝の気持ちです。


Please keep holding my hands.」


と、短いながらも綺麗な字で書かれていた。そして最期にRENと書かれたサインを見て、あぁやっぱりこれは現実なんだ…と身体は思ってた以上に冷静に現状を受け止めていた。

しかし、それには原因があった。

文の最後に書かれていたワンフレーズだ。

まさか私の書いたあのワンフレーズがRENの役に立ったといったことを理解しきれていなかった事もあるが、それ以上にRENの手紙に返事になるようなフレーズが綴られていることに対して私はRENと意思疎通が出来ているような気がした。その刹那、RENとの距離が少しばかり縮まったように感じた。


「《私の手を離さないで》……か」

言葉の意味はすぐに理解出来た。自慢出来るほどではないが英語は得意であった。


そして、手紙を読み返すうちにふと封筒が地面に落ちた。

慌てて拾おうとした時、封筒の中にまだ何か入っていることに気がつき取り出した。

それは遥か高みであったRENのライブチケットだった。


こんな短時間で驚くことが多すぎて私は理解が追いつかなかった。


何も考えられなくなった私はいつの間にか眠りについていた。そんなことに気付いたのは次の日の朝であった。

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