第3話 長話はやめてくれ!
「よくぞ参られた、異界の勇者よ!」
気がつくと、目の前には美人。金髪、白肌、長身の。
「ここはオースガルダ王国。私は宮廷魔術師のオルネと申すもの」
鎧を着た周りのおっちゃん達が、口々に、
「勇者だ!」
「勇者の召還に成功した!」
と騒いでいる。
うん、ファンタジー世界に転移してきたね。さすが、ファンタジープリンタCFP8300と、ヘッドフォン型異世界ダイブ装置「モグーレ」。順調に機能している。
「この国は、復活した魔王『サロトフルオ』によって、滅亡の危機に瀕しておる」
と、美人のオルネさんから、事情が説明された。
2000年ほど前に封印された魔王サロトフルオが、復活したんだそうな。この世界の勇者は、何人も旅立ったが、みんな消息不明。
なので、異世界から勇者を呼び出そうとした、らしい。
「引き受けてくれるな? 勇者よ!」
オルネさんは、目を大きく開いて、俺にそう懇願してきた。
「いや、その前に、」
すこし後ずさりつつ、俺は返事する。
「引き受けてくれんのか?」
オルネさんの表情が曇り、目がウルウルになっている。ごめんよう。
「いや、電車来ちゃうから」
「でん……?」
巫女だか魔術師だかの肩書を背負ったオルネさんの話を強引にストップさせ、俺は現世に戻ってきた。
正解だった。
ぷるるるると、ベルが鳴る。
「最終電車、発車しまーす」
閉まりかけた両開きドアをガッ! とつかんで、終電に駆け込んだ。
……案の定。
「駆け込み乗車はおやめください!」
車内アナウンスで怒られた。
ごめんよう。
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