第2話


 遭遇戦を制した後に、敵の勢力圏内で岩影にADを隠して木々などで擬装して動力を落として操縦席に座って簡易食糧とコーヒーを摂っているswallow。

 地上に降下して直ぐに斥候の三体のADを撃破してから、それから幾度かの戦闘をしてswallowの搭乗するADも多少の損傷を負っていた。


『こちらエコー、降下して来たイレギュラーは未だ発見出来ていない・・・』


 swallowは受信機に耳を傾けながらコーヒーを飲む、この受信機は敵を撃破した際にONチャンネルの状態の物を敵の機体から拝借してきたものである、受信バンドの変更されるまでの間は有効、その合間で戦闘続きだったので休息と情報収集を両立させていた、敵の情報だとswallowを索敵している部隊は数隊程出ているらしい、この様子からすると新設している基地の近くまで来ているようだ。


 様子見しているとswallowが設置していた人感知センサーが反応する、ポータブルモニターで映像を観ると民間人と思われる人物が1で、その後ろから兵士が二人追い掛けてきていた、swallowは発見されると不味い為に携行火器の拳銃の弾倉を確認してスライドを引きコンバットナイフを腰に差してADから飛び出す。


「はぁはぁはぁ」

「へへへ、まだ、逃げるかい嬢ちゃん」

「きゃ」


 民間人の女性は足が絡まり地面に転んでしまう。


「ははは、鬼ごっこは終わりかな」

「じゃ、げへへお楽しみの時間かな」

「い、いや、来ないで」

「誰も助けてはくれないよ、さあ楽しもうか、なぁ俺が先でいいよな」


 兵士が相方の方を振り返ると、相方の兵士は首の頚動脈から血を流しながらヒュー、ヒューと声に成らない音を鳴らして倒れる。


「い、いやー」

「だ、誰だ!?」


 女性は悲鳴を上げて叫び、兵士は狼狽しながら腰にあるホルスターに手を伸ばそうとする、しかし、コンバットナイフが手に刺さり中断される、草むらから銃を構えたswallowが出てくる。


「いでえ、いてえいてえよー」

「余計な動きをするな撃つぞ」


 兵士に近付いて無造作にコンバットナイフを引き抜く、兵士は再び叫び声を上げる。


「質問に答えろ、答え無ければ、いやならばしっかりと答えろ、答えたらこれをやる」


 swallowはメディカルキットを兵士の前に出して仕舞う、兵士は傷口を押さえながら首を縦に振る、民間人の女性は状況が呑み込めていないか茫然としていた。


「新設している前線基地は何処にある?」

「あ、あっちの方角に行った一キロ先にある、行っても直ぐには解らない様に自然を利用した、ちか、地下に設営してある、こ、応えたから、き、キットを」


 swallowはメディカルキットを兵士に差し出そうとしたが、兵士は腕を伸ばしながら事切れる。


「あ、済まない、動脈が斬れてたな、じぁこれは要らないな」


 メディカルキットをパックに仕舞う、そして民間人の女性を見ながら銃口を向ける。


「え?、な、何で?」

「質問に答えろ、現地民な訳ではないよな、何故ここにいる?」

「は、はい、メガラニカにレムリア兵に連れてこられて基地の建設に従事させられていたですが、私が暴行させられそうになって父さんが助けてくれてそのまま逃亡して、その時父さんがレムリア兵に」


 しばらく悩みswallowは女性を自分のADに連れていきコーヒーを差し出して女性が落ち着くのを待つ、しかし、困ったことに成った、アトランティス軍規則に照らし会わすと非武装民間人の保護は極力義務付けられている、それを怠ると軍法会議と法廷に呼ばれる、はっきり言ってお荷物だが捨て置く訳にもいかなくなった。


「優しいんですね」

「うあ?」


 コーヒーを飲みながら女性は呟く。


「成り行き上仕方無しさ、しかもだ、いまだに任務継続の為に安全な所に送るわけにもいかないからな、一応聞くが一人で逃げるか?」

「嫌ですよ、兵士さんといた方が安全なので」


 swallowの冗談に女性は儚げながら笑う。


「そっか、なら逃げて来たところ悪いが前線基地に向かうぞ」

「はい、少しなら案内出来ます、それに兵士さんを手伝えば父さんの仇のレムリアに一矢報えます」

「なら、行くかレムリア前線基地に」


 swallowはスロットを操作してADを起動して前線基地を目指して行動を再開する。


***


「ここです」

「なるほど、確かにこれは巧妙に隠されいるな、それじゃ留守番よろしく」


 swallowはADを物陰に移動させると待機モードに移項してADのハッチを開きそこいらを散歩するが如く足取りで基地に歩を進めて行き、それからしばらくした後、行きとは違いかなりの速度で走って戻って来てswallowはADに急いで乗り込んで、直ぐ様にADを緊急発進させた。


「ど、どうしたんですか」

「逃げるのさ」


 swallowがADを発進させると基地から多数敵ADと車両が追いかけて発砲をする。


「う、撃ってきました」

「そりゃ、敵さんだしな、それよりおしゃべりはここまでだ、舌を噛みたくなければ、黙ってシートに掴まっていろ」


 swallowがそう言いながら加速装置のスロットルを操作する。

 ジグザグに動き弾丸を回避しながら遮蔽物を利用して敵の射線から外れる。


「そろそろか」


 swallowが機体を操作して、脚部ローラーを起動させてバック走行に移項しながらマシンガンをばらまき敵を牽制する。


「何処に撃っているんですか、当たって無いですよ」

「問題無い、当てることが目的ではないからな」


 器用に障害物を避けながら後進するswallow、敵のADは更に装備しているミサイルを発射するがそれも冷静にデコイとマシンガンの使用で対応する。


 回避しながらも後進するswallowだが突然にモニターの一部にemergencyの文字が浮かぶび内容は落下の可能ありと表示された。

 後方を映すモニターには崖が迫ってきているがswallowはそのまま後進を続ける。


「落ちる、落ちる早くどうにかして」


 swallowはその言葉を無視して更に後進をして、遂には崖から落下する。


「キャー」


 swallowの乗るADが落下してそれを確認する為に崖に近付いて行く敵のAD達、崖に接近しようとした正にその時、崖から飛び出して来る巨大飛行態が姿を現した。


 飛行態正体はアトランティス軍正式採用多目的運用飛行機体、形式AS-T.Nest、通称Nest、ADを多数搭載可能、武装は55口径を二問搭載、各種弾頭のミサイル及び空爆用弾頭を積載運用可能であり、運搬から空爆迄を一手に担える、積載物が空の時は分類で輸送機のカテゴリーで有りながらマッハ1に到達出来る。


 姿を現したNestにはswallowのADがNestにフックで引っかかっている、地上にいる敵のAD達はNestに照準を合わせるようとするが、swallowから敵位置を送信されていたNestの武装が現れたと同時に火を噴いていた。


 敵ADが爆発すると同時に遠くでも爆発が起こる、swallowのADのモニターが起爆した位置をアップすると、前線基地から煙が上がっていた。


「え、中にいた民間人はどうしたんですか!?」


 swallowを揺すりながら聞く少女に答える。


「何のために時間を掛けたと思っているだ」

「え?」

「安心しろ、時間差で脱出する手筈にしてある、今頃は他の回収班が救援に行っている」


 宙吊りのswallowのADを、Nestのウインチで艦内回収中に通信が入る。


「帰ってきたわね、無茶な使い方で壊してないでしょうね?」

「特普通に操縦しただけだよ」

「・・・まあいいわ、それよりも隊長がお呼びよ、そこにいる可愛い子と一緒に隊長の所に向かいなさい」

「了解、回収作業終了の後に向かいますよ」

「ハイハイ、よろしく」


 Nestの内部に収容されタラップを使用してADから降りたswallowは少女を誘導して歩く。


「こっちだ早く来い」


 まるで何からか逃げる様な足取りで少女を連れて格納庫から出ると、格納庫から叫び声が響き渡る。


「あー、足回りのローラー部がー、swallow何処に行ったー」


 Nest軌道は艦内放送にて現在帰還の途にあると放送された、swallowは通路歩き途中で会った隊員に隊長の所在を聞き着いた先はブリッジである。


「隊長お呼びで?」

「おう、任務お疲れさん、悪いが早速次の任務が入った」


 隊長が一枚の指令書をswallowに渡す。


「・・・これは!?」

「上層部の見解で今回の任務が成功したらしばらくの間は均衡状態が続くと予想している、それでその指令書が下った」

「それで隊長達は?」

「我が隊にはしばらく休暇任務だ」

「・・・納得できないですが」

「それが軍隊であり、我が国家である、それが嫌なら、亡命するか出世するしかないな」

「・・・任務は了解しました、それで彼女を連れて来るようにした理由は?」

「ああ、それな、お嬢さんアトランティスに移民するかい?」


 隊長の急な発言に戸惑いながらも力強く顔を上げて言葉に出す。


「はい、私は家族を祖国に奪われました、それはもう祖国に尽くす理由がなくなった事です」

「よろしい、ならば今回の任務は彼女も同行して貰う」

「「え」」


 二人は同時に疑問の声を出す。


「まあ、話は最後まで聞け、お嬢さん身寄りが無いならどの道、軍に席を置く事になる、それならそこにいるswallowに連れていくのも問題無いだろう、色々手順は飛ばしたがそれが早いか遅いの違いだ」


「解りました、それで構いませんそれでその任務って何ですか?」


 swallowは手にしていた指令書を少女に手渡す、受け取った少女は指令書を声に出して読み出す。


「下の者はアトランティス首都のティマイオスにある育成機関クリティアス学園に入学して勉学に従事する事、え、入学ですか?」


「そうだ、swallowともう一人入学するのは特に問題無いしな、それにな入学すれば、勉学をしながら軍からお金が貰える、お嬢さんには美味しい話だがどうする?」


「是非、私からもお願いします、入学しましよう」


「だそうだ、swallow後は任せた、お前が先任だよろしく頼むぞ」


「はー、不承不承ながら了解しました」


 swallowは敬礼して、どうせ断れないなら任地に着く間だけでも、休むために話を終わらせて下がる。

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