第18話 科学部、天気を読む!
お昼ご飯も済んで、午後からの彼らも精力的に働いた。
二号は
科学しか頭にない二号と姐御と教授の三人組と違い、金太は内装にこだわっている。ベッドは一番奥、手前には同じ太さのロボクを
教授はヤスリがけが終わると、姐御のところでヒボドゥスの魚脂を採り始めた。
「この辺の霜降り肉は美味しそうね」
「僕の方は脂身だけもらえばいいので」
「古代のサメも、内臓の作りはほぼ同じみたい。今からおよそ2億5千万年前から2億9千万年前だってのに、もうほぼ出来上がってたのねー。なんか感動的!」
下着姿に全身血まみれで言われても、ヤバい人にしか見えない。いや、実際ヤバい人なんだが。
「姐御先輩、手伝うことありますかー!」
金太である。恐らく満足のいく内装が終わったのであろう。
「あたしの方はまだない」
「金太、こっちを手伝え。
「シーエーなんとかってなんだ?」
「硫酸カルシウムだ」
などとごちゃごちゃ言いながら二人は金盥へと向かう。しばらく二人でバタバタと何かやっていたかと思うと、今度は二号の指示で金太が焚きつけ用のシダ類を洞穴に運び始めた。
「二号先輩、まだシダは干しておいた方が」
「いんや、これは夕方辺りから一雨来るねー。今のうちに入れといた方がいいわー」
「二号先輩が言うなら確実ですね。了解です。姐御先輩、解剖を楽しんでいる時間はありません、僕に代わってください。解剖は今度ゆっくりさせてあげますから」
姐御からサバイバルナイフを受け取ってからの教授の、流れるようなナイフ捌きと言ったら! 絶対にコイツと喧嘩したくないと思わせるようなその動きは
そこからの彼は早かった。動きながらどれだけ頭が回るんだとばかりに全員に指示を出し始めたのである。
「姐御先輩、二号先輩の編みかけの籠と材料を全部洞穴の中へ運んでください」
「はーい」
「金太、僕が捌いたヒボドゥス肉のブロックを急いで海水で洗って来い。全部だ」
「ういっす」
「二号先輩、火にかけている塩の入った金盥を一旦下ろして、鉄板を乗せてください。今のうちに夕飯分を焼いてしまいましょう」
「りょーかーい」
「その間に金盥を海水で冷やしてきて貰えますか? 中に水が入らないようにして外側だけを冷やすんです」
「あー、塩漬けにするんだねー」
「流石二号先輩、話が早い、お願いします」
喋りながらも、どんどんヒボドゥス肉のブロックが出来上がっていく。金太が洗ってきたものは、教授が次々にステーキ用にスライスしていく。
何をやらせても要領のいい二号は、さっさと塩を冷やしてくると、今度は教授のスライスしたヒボドゥス肉を鉄板に並べていく。お皿にすべく、グロッソプテリスの30cmほどの平たい葉っぱを準備しておいて、今度は肉が焼けるまでの間に、スライス肉を塩に漬け込んでいく。なんと手際の良いことか。お坊ちゃま育ちとは言え、お料理を趣味としてきた彼は、こういう段取りが実にうまいのである。小っちゃいけど。
「全部運んだわよ、次は何する?」
「鉄板のお肉、ひっくり返しといてー」
「了解!」
「焼けたヤツはそこのグロッソプテリスの葉っぱにねー」
「OK! 焼けたらマイホームに運んどくね」
だんだん雲行きが怪しくなってきた。二号の天気予報は今まで外れた試しがない。恐らく21世紀も古生代も、雲の動きは大して変わらないのであろう。
「姐御ー、自分と教授の制服と、あと白衣、中に入れてー」
「よし、全部のスライス終わりました」
「教授、早ええ! 俺が運ぶから二号先輩漬け込みやっててください!」
そこにポツンと一粒当たった。
「雨だー。総員退避ー!」
二号が叫ぶと、金太は持っていた肉をそのまま全部金盥の中に放り込み、金盥ごとマイホームに運び込む。教授はヒボドゥスステーキを鉄板ごと持ち込んだ。洞穴の中は『片付けられない主婦』のいる家のような状態になっている。
「どーするこれー」
「足の踏み場もありませんね」
二号と教授が突っ立ったまま肩を竦めていると、思いがけず金太がニヤリと笑った。
「俺に任せてください。とにかく、姐御先輩と教授はその血だらけの全身を、雨でいいから流して綺麗にしてきてください。その間に俺が片付けときますから」
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