第45話 男装女子、隙が出来る
私は柄を握りなおし、二人目の男を見た。中折れ帽の男だ。
目が合うと同時に。
男は剣を引き抜き、突進してきた。
さっきの男と似たタイプなのだろうか。男は大振りに斬りつけて来た。私はバックステップで間合いを取り、振り下ろされる男の剣を、自分の剣で上から叩き落す。金属同士がかち合う無様な音の後、男の手首が完全に下を向いた。指が柄から離れるのが見える。私は剣を素早く引き戻しながら、男の顔めがけて蹴りを叩きこんだ。足首の辺りに鈍い痛みが伝わると同時に、木がしなるような音がして男の首は路地を作る店の壁にぶち当たる。顎骨が完全に折れたな、と確信し、その視界の先で男が白目を剥きながら地面に倒れこむのが見える。しばらく失神で動けないだろう。
三人目。
そう思った刹那だ。
どん、と前から右肩に何かがぶつかってきた。
咄嗟のことで対処できなかった。
二人目の男が、完全に失神しているかどうか気になっていた、というのもあった。いきなり起き上がってかかってこられたら厄介だ。そう思っていたのも確かだ。
だから。
三人目の男がすぐ目の前にいることに気付かなかった。
「……っ!」
口の端から、堪えきれない呻きが漏れる。重い、痛みだった。右肩を強く押されたような妙なだるさを伴った痛みだった。
一瞬、何が起こったか分からず、睫が触れそうなほど近くになる男の顔を凝視した。
視線が絡み、そして、無造作に左肩を押された。
男から体が離れる刹那、とうとう口から悲鳴が漏れた。
その時になって初めて。
自分の右肩に短剣が刺さり、そして引き抜かれたのだ、と知った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます