第3話 みんみーは決して見落とさない(実践側)
自身側 『フェネックアイズ』
このアトラクションは、広い荒野にぽつんと浮かぶ、丸いカプセル二つによって成り立っている。
このカプセルの片方には自分が好きな相手を入れ、もう片方には自身が入ることになっている。
ここで行われる好きな相手側の施療は簡単だ。
細胞を等しく縮小させる機械を使い、ミリやマイクロ単位まで身体を縮小させるだけである
手順1.眼球取り出しと視神経の無線化
肝心なのは自身側の方である
まず、ここに入ったら動かないように頭も身体も固定されることから始まる
十分に固定されたら機械が片目の方にやってきて、まず瞼を開かせ固定した後で、眼球と骨との隙間から薄くて横からの力に弱くて簡単にカーブする金属の板を左右から入り込ませる
そうして奥に入った後で、目の神経を間に挟み金属の板の先と先とで切り取る(横からの力には弱いが、縦からの力には強くなる特性があるから切断は可能となる)
そうして眼球を取り出し、乾かせない為の水分と血に強くなる特殊な液体にまず漬からせておく
その間に神経の処理であるが、最初に神経の束をばらした後で、肉体と機械の中間にある素材で作られた神経と機械とを繋ぐ信号の変換装置をそれぞれにつける
変換装置の先についたコードは無線装置へと繋いだ後で、骨の奥に押し込んでおく
手順2.眼球があった位置のタンク化。そのタンクに貯める血の管を脳の行く血管から通す
次にやるべきことは眼球があった位置の加工である
ここで行うべき施療の目的は空気や水を望む時には通すが、普段は水を通しにくい器へと中を加工することである
タンクを作る前に管をつけないと、封鎖される為、先に血管の方を先にやることとする
脳へと血を流す無数の血管の中から少し血を取っても問題なさそうな多くの血を流す血管か、脳への影響が弱い血管の一つを取り出し、そこから自由に血を取り出せるバイパスを取り付け、管を伸ばしておく
バイパスには弁が取り付けて置いてあり、それは機械制御により開いたり閉じたりして望むように血を流すことができるようになっている
中を特殊な液体によりコーディングして器化した後に、一定以上液体や空気が減ったら中に入れるよう命令するセンサーを中に取り付ける
そしてさっき伸ばした管を上の方につけたところで中の施療は完了となる
手順3、眼球の加工
さて、ここまでの施療を終える頃には眼球がちょうど良くなっているだろうから、今度はこちらの施療を行う
眼球の神経の外の部分にさっきの神経のようにコネクターをつけた後で無線機をつける(こちらのものは血に浸ることになる為に先ほどのより高いものを使っている。これが底に落ちてちょうど眼球の位置を固定する碇のようになるのである)
次にまず、黒目の部分をくり抜くことから始める
すると中の部分が見えるようになるので、ピンセットで神経を取り出し、またコネクターをつけて今度は先に丈夫な監視カメラを全体が見えるように、黒目の近くに取り付ける(僅かな振動で発言できて、無線もある高性能なもの。視神経の無線と繋がっていて、映像を脳内に届ける)
手順4、好きな相手の眼球内への投入と、眼球を中に戻してからの瞼縫い合わせ
そこまでできたのならば、今度は先ほど小さくした好きな相手がいるだろうから、それを眼球の中に入れて、黒目だった部分に空気の入れ替えをしやすいようにした外れない蓋で閉める
そうしてできた眼球を穴の中に戻して、瞼を糸で隙間なくきつく縛り付ける
そしてセンサーが反応し、管から血が流れ眼球が浮かぶこととなり、施療は完成である。
施療結果
その頃には好きな相手も起きていることだろう
好きな相手はびっくりする
自分が肉壁の中にいることに
何が起きているか考え、肉壁が壊せないか試し、カメラに気づき呼びかけをするが、何も反応がないことに嫌になる
すると今度は生理現象が起きる
喉が渇いたり、お腹が空いたりする
何かないと探し回るがそこは見晴らしの良い場所
すぐにどこにも何もないとわかり、そのうち薄気味悪い肉壁の肉とそこから出る赤い血を飲まなければならなくなるだろう
空腹と逡巡を多く重ねた後、それを飲み食べた好きな相手は今度はトイレに行かないといけない。
しかしどこにもやる場所なんてない為に仕方なく端の方でするしかなく、そこから遠い場所で寝ることになる
こうしてその好きな相手は、血と肉を貪る食生活と糞尿の臭いに満ちた孤独な、長い生活を送るわけだが、好きな相手を入れた張本人側の視点だと、これは異なってくる。
好きな相手が右往左往するあまりに可愛い姿を最前席で眺めることができるのだ
好きな相手が他の誰かと接点を持ち自身に与えられるべき時間と関係を奪われかねない恐れや、自分の知らない顔を他人に見せているということへの狂おしい嫉妬の悩みもなく、相手の迷ったり泣いたり落ち込んだり恥ずかしがったりする姿を存分に堪能することができ、存分に悶えまくれるのである
こんな素晴らしいことがあるだろうか
これを思いついた同志達に、みんみーの加護があらんことを祈りたい程である。
なお、その悶える時々に血の涙を流すのであるが、それは中の血や空気を入れ替える為であるから、そこに何か別の感情を見出すことには本来意味がない
ただ血の入れ替えに際して、脳に行くはずだった血を奪うことになるのだから脳に行く酸素が減り、靄がかかったようになる。これを何度も行って来ると、そのことが快楽に変わり速度が速くなり、血の涙と恍惚に喜ぶ瞬間が同時に起こることとなる
なお、このアトラクションの終わりは中にいる好きなものが、眼球の肉と眼球から外に出た先にある瞼の肉を食べて出てきた時による。そうして相手を元の大きさに戻し、別のアトラクションへと行くのである
好きなものを自分の中に閉じ込めていられること、自分の好きなものが自分の中で動いていると感じれること、自分の好きな相手の血肉が自分の血肉でできることを喜ぶ人が多い為、みんみーパーク屈指の人気アトラクションである。欠点があるなら、最大二個しか好きな相手を入れられないことくらいであろうか。
(ちなみに拘束されるのが目だけである為、他のアトラクションと同時にやることも可能。アトラクションの間の退屈潰しにオススメしているのだが、眼球の中に好きな相手がいる感覚を、他の邪魔なく味わいたい人がほとんどの為、あまり併用する人はおらず、この場所から動こうとはしない為、このカプセルがある荒野には笑顔で目蓋から血を流しながら目を回しのたうち回る光景が広がっている)
見抜く目とは大切なものを見落とさない目であり、それは眼球に入れた好きな対象の感覚を脳へとインストールすることにより、得られるものである
よって、このアトラクションにより眼球で廻される脳は、みんみーへと人を導くであろう
嗚呼、みんみー
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