暁金牙の報告書その6

九月十六日

 無事にアルが目覚めました。ですが、今度は「アルウィス」の方が目覚めません。「アリシエ」が言うにはアリシエも戦えるらしいので、欠点を知るためにもアリシエを任務に採用することにします。


 また、アルについて新たなことがわかりました。アルには「アリシエ」「アルウィス」の他に「三人目」の人格がいるのは確実なようです。長い眠りにつく前に出ていたのはその「三人目」だったのだとか。ここからはアルと共に屋敷に来たソニックからの言葉になります。


 自分を守るために、自分を犠牲にしてでも戦うことだけ。「三人目」の人格はそれしか出来ないようです。アルウィスはどうやら、この「三人目」の暴走を抑えていたらしいのです。残念ながら「三人目」が現れたきっかけまではわかりません。




九月十九日

 昨日アルをクラウドへ向かわせ、銀牙ぎんがを屋敷に連れてこさせました。嵐とアルの意識回復を待ったため、計画が後ろ倒しになっております。申し訳ありません。アルは目覚めはしましたが、今は「アリシエ」しか出ていません。幸いにもアリシエも戦えるそうなので、ご安心ください。




九月二十日

 銀牙がまた、皇太子様の屋敷に呼ばれました。昨日帰ってきたばかりだというのに、休む間もないようです。傷が癒えたら拷問する。それを繰り返していて、銀牙が心配になります。




九月二十三日

 海亞かいあの任務にアリシエを同行させました。本当にアリシエが戦えるかを知るためであり、海亞の任務を助けるためです。陛下が海亞に何を依頼されたのかは知りませんが、アリシエがいれば必ずや上手くいくと信じています。




九月二十四日

 アリシエが無事に帰ってきました。海亞は無事に任務を遂行していると思います。銀牙を救えなかったことだけ、アリシエは悔やんでいましたが。


 今朝のことです。皇太子様の屋敷前で門番を含めた護衛が数名、死んでいるのが確認されたとの事です。しかしその死体が奇妙です。頭部と四肢は壁の上に突き刺され、胴体は門の鉄格子に腸で固定されていたのだとか。敷地内には取り出されたと思われる臓器も発見されたそうです。


 これは間違いなく、アリシエがしたことでしょう。殺すだけでは気が済まず奇行に走る。想像しただけで寒気がします。誰もその光景を見ていないようで、アリシエの欠点はわかりませんでした。私はこの垣間みえる狂気が欠点だと、考えています。


 「神の眼」はたしかに有力です。ですがアリシエは一歩扱いを間違えれば、狂人になります。彼の心は非常にもろい。これも、シャニマの戦争の影響なのでしょうか? アルの故郷、シャニマでの暮らしがここまで狂わせてしまったのでしょうか?

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