暁金牙の報告書その2

六月十一日

 無事にダン様を我が屋敷に連れてきたことをご報告いたします。ダン様はすっかりアルに懐いており、楽しそうです。しかし、残念なことがございます。宮殿から出てすぐ、敵襲を受けました。アルが負傷しながらもなんとか敵を裁きましたが……皇太子派は予想以上に活発に動いています。


 この騒動があったからでしょうか。ダン様は本日、宮殿から出ると「強くなりたい」と申されました。アルがあと一秒行動が遅れていたら、ダン様は死んでいた。それを自覚されてのことだと思います。どうされますか?


 もし陛下も同じことを望まれるのであれば、ダン様に武芸の稽古けいこをつけたいと考えております。また、武具も揃えようと思います。今後何があるかわかりません。陛下の早急な返事、お待ちしております。




六月十五日

 我が屋敷にリアンが来ました。陛下の指示通り、リアンにダン様の武芸指導を依頼しました。おそらくアルも教えられるでしょうが、アルの独学の武芸ではなくきちんとした武芸を身につけてほしいと思います。リアンはこの手の武術指南に長けておりますし、私も安心です。


 ダン様は熱心に鍛錬に励まれていたとのことです。今のところ我が屋敷に敵の姿はありません。ですが非常事態に備え、ダン様にはアルをつけております。ですのでどうぞ、ご安心ください。


 さて、リアンが妙なことをアルから聞きました。アルの父親は「シャーマン・リベリオン」、よく「シャーマン・アール」と呼ばれていたそうです。過去に陛下の護衛をされていたのだとか。陛下のご友人であるシャーマンにお間違いないでしょうか?


 アルの口ぶりから察するに、残念ながらこのシャーマンなる人物はもう生きていないでしょう。おそらくですが、シャニマで起きた戦争に巻き込まれる形で亡くなられたのかと思います。アルは父様のことも知っているようですが、話しません。どうやらアリシエには当時の記憶がないようです。アルウィスは知っているようですが、まだ口を割ろうとしません。まずは信頼関係を築くところから始めようと思います。




六月二十日

 本日、アウテリート家からの報告書は届きましたでしょうか? アウテリート家の任務にアルと、クライアス家の神威かむいを同行させました。当主を捕らえたのはアルだったそうです。二人の黒人武芸者の実力については、リアンの報告をご覧下さい。


 本題に入りましょう。先代皇帝様に仕えていた戦闘貴族のうち、我があかつき家と葵陽きよう家、クライアス家のみが陛下に仕えていると思います。残りの二つの氏族はどうやら皇太子様に仕えているようです。アルの首輪の印から察するに、皇太子様の元で人身売買に手を出しているものと思われます。

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