暁金牙の報告書その1
五月三十一日
部下より連絡がありました。その連絡から「神の眼」が六月八日午前十時にハベルトに到着することを確認。部下に「神の眼」を逃がすことを任せました。こちらは当日「神の眼」を引き取る準備を始めます。陛下がお会いする日も近いでしょう。
六月八日
午前十時半頃、馬車にてラクイア大聖堂に向かいました。ラクイア大聖堂の前では見たことのない黒人が
ラクイア大聖堂の中にいるアリシエという者が「神の眼」ではないかと思い、警察数名を従えて中に踏み込みました。中では金髪に銀色の目をした黒人が奴隷商人らしき者と戦っている最中でした。即座に声によって怯ませ、奴隷商人を捕らえさせました。
結果から申し上げますと大聖堂にいた黒人が「神の眼」でした。「アリシエ・アール」と名乗っておりました。おそらくこの者が陛下の探していらっしゃった「神の眼」であると思います。年齢的に間違いはないかと。
ですが、陛下のこともダン様のことも何一つ申しておりません。それどころか記憶が
「神の眼」を持つアリシエは、話し方に癖がありました。島国シャニマの南方に多い
少し残念なお知らせです。アリシエは僕の父上のことを覚えていないようでした。名前に反応こそしますが話してはくれません。それと同じように、自らの家族についても話してくれません。このことから、陛下の元護衛二人は死んでいる可能性がかなり高いと言えます。
六月九日
ソニックとアリシエの意向を再度確認し、二人を正式に我が暁家の戦闘員といたしました。
ハベルトの知識がほとんどなく、元いた場所での経験からか食べ物をこっそり溜め込む癖がございます。本日、
どうやらアリシエは我々とは違う過酷な環境を生き抜いてきたようです。武芸や武具の扱いといった戦闘の知識は豊富です。ですがそれ以外の知識は全くと言っていいほどございません。それどころか彼は「知らない人について行ってはならない」というハベルトでは当たり前のことすら知らないのです。
アリシエと共にきたソニックという黒人はそういった知識がしっかりとしています。シャニマ特有の訛りではなく、我々や陛下が使うようなハベルトの上流階級のような話し方をします。同じ場所から来た二人だというのにどうしてこうも違うのでしょうか。この二人には何かがあると言いきれますが、まだ詳細までは語れません。
もう一つ、ご報告がございます。アリシエは自らのことを「二重人格」「多重人格」などと申しております。なんでも彼の中には「アルウィス」なる人格がいるそうです。本人達曰く、アリシエが刀術を、アルウィスが体術を、それぞれ得意としているそうです。
また、アルウィスなる人格から話を聞いたところ、彼の中にはもう一つの人格があることが判明しました。「狂った人格」だそうです。これよりアリシエ、アルウィス、名前付けの分からない人格を総称して「アル」と呼ぶようにいたします。
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