客間に誂えられた豪華な椅子は西洋の物なのだろうか。畳みの敷かれた六畳間の隣には本で見た事があるような『書斎』が広がっている。西洋机に、ふかふかとした布地を尻の位置へと宛がった椅子は何とも座り心地が良さそうだ。

 招き入れられて、ふかふかとした長椅子へと腰掛けて待てと命じられたたまは首を捻る。西洋箪笥に手を駆けて、ティーカップへと静岡県産の日本茶を注いだ正治は我が物顔で椅子にふかぶかと腰掛け、たまへと一つ差し出して居る。

「あ、ど、どうも……」

 着席したままで大げさに首を擡げたたまはその姿勢の侭、硬直する。正治は部屋の主へと声を掛ける素振りも見せない。ましてや、勝手に棚をあさり、高価な陶器で茶を入れてよこしたではないか。

(えええ……? 八月朔日さんってここのお抱えの方ではないのかしら……? てっきり軍人さんだもの――お抱えの用心棒かと思ったのだけれど、え、まさか、も、もしかして、彼が成金の息子さんだったりして、そうしたら私ったら、とんでもない無礼を働いたかもしれないわ!)

 机の上の白磁を眺めながら袴を強く握りしめたたまに正治は頬を掻く。彼女の動きは『挙動不審』のぴったりと当てはまる行為そのものだ。うろうろと蠢く視線は西洋造りの屋敷をしっかりと捉え――不安に潤み始めている。

「八月朔日……さま」

「くく……っ」

 涙が睫毛に引っ掛かってしまった、と。震えるたまがゆっくりと顔を上げる。誰も存在しなかった筈の書斎から幼い笑い声が聞こえたからだ。

「は」と小さく漏らしたたまに居てもたっても居られなかったのだろうか。椅子の背凭れ越しに吹きだす音とばんばんと椅子を蹴る音がする。

「狐塚」

「だ、だって……オレの事すっかり忘れて、恐縮しちゃっててさぁ……ふっ、ふふ――面白いなあ」

 やれやれと肩を竦めた正治に「御無礼を」と慌てて立ち上がったたまが書斎机に向き直り頭を下げる。慌てた雰囲気に更に笑みを零したのか声の主は大きな椅子をぐるりと回転させて、「面白い!」と両の手を叩いて見せた。

 西洋品の椅子は回るのかとたまが驚きに顔を上げる刹那、息を飲んだのは何も『見慣れぬ西洋品ばかりの空間』だからではない――椅子に腰かけていた少年は宵の月を思わせる鮮やかな髪をしていたからだ。

「西洋人……?」

「とんでもない。お嬢さん、『僕』は生まれも育ちも日本だよ」

「え?」

 西洋人と恋に落ちた場合は血を分かつことがあると聞いた事がある――そういう『日系の方なのかしらん』とたまが小さく瞬けば、少年は可笑しそうにからからと笑って「珍しいかい」と丸い瞳を細めて見せた。

 愛嬌のある顔立ちに緩く結んだ尻尾の様な髪が彼の華やかさを更に強めているのだろう。細められた眸もまた、鮮やかな月色だ。まるで、文学の中で語られる異国人の風貌にたまは頬を思わず赤らめた。

「――惚れない方がいいよ?」

 冗句めかして、口元を緩める少年にたまの頬は更に赤らんでゆく。まるで薬缶のようだと頬を抑え俯いたたまの様子を見かねてか「狐塚」と叱咤の声が一つとんだ。

「なんだい? レディと遊ぶのだって嗜みの一つだと思うなぁ。ああ、それか――やきもち?」

 なんてことを言う子供なのだろうか。

 そう感じるのと同時に、正治ではなく彼がこの屋敷の主であり、たまの探し求めていた『道楽探偵』なのだと直感した。

「初めまして、たまちゃんだったかな? 『僕』は狐塚 緋桐。緋桐と呼んでくれると嬉しいな。

 あんまり狐塚と呼ばれるのは――そうだな、好まなくて」

 冗句めかして告げる少年に「え」とたまは小さく零す。あれほど親し気に呼び合っていたというのに、思えば正治は彼の事を「狐塚」と名字で呼び続けている。

「――……」

 あまり仲が良くないのか。いや、それは屋敷での過ごし方ひとつで否定できる。高価な呈茶セットを我が物顔で使用しているのだ。しかも、無言で茶まで淹れている。

 それならば、思い当たったのは緋桐が女性には浅薄であるという事柄だけだ。上流階級では妾の一人や二人存在するという。そんな両親を見て育ったのだとすれば、愛らしい少年のうちから女性に対して『妙に甘えた』なのは十分に理解できた。

「たまちゃん」

 からからと笑い始める緋桐にはたまの考えることなどお見通しなのだろう。徐々に笑いは深まっていき――腹を抱えて嗤い始めた。

 ――何も言っていないのに。

 少女の胸中に浮かんだのはそれだけだった。見透かしたような態度も中々に癇に障るがそれ以上に、こうも笑われるとそれ程面白いことがあったのかと疑いたくもなる。何かおかしな仕草でもやっただろうか。

 少し拗ねた雰囲気のたまは踵で毛足の長い絨毯をてしりと蹴ってティーカップへと視線を落とした。

「狐塚」と対照的に落ち着いていた正治が語調を強める。

「あまりからかってやるな。だから狐と言われるのだ」

「失礼だなあ。オレは狐はキツネでももっと崇高なお狐様だよ」

 それは、彼が嘘吐きだとでもいうのだろうか。

 化かされた気分になりながらたまは「狐みたいだわ」とぼやいた。金の髪に宝石の如き瞳色――それは寓話の中の狐を思わせた。悪い冗談でも笑って受け流せる関係性なのだろうか、それにしても正治の言葉は厳しい色を感じさせる。仲が悪いというわけではないのだろうが、良い訳でもないのかとたまは二人の関係性が理解できないと困ったよう首を傾げた。

「レディがお困りだよ」

 椅子に深く腰掛け足をぶらりとさせた緋桐が正治に視線を向け冗談のように「どうにかしなよ」とけしかけている。

「……」

「冷たいなあ……。それで、たまちゃん。『僕』に何の御用かな? 幽霊でも出た?」

 ――無視されている。

 しかも、こちらの目的を『理解して』会話に織り交ぜてきた。

「え、なんで分かるんですか? まさか、聞いてた?」

 扉は確かに閉まっていたのにと呟くたまに緋桐は曖昧に濁して笑い「話してたじゃないか」と付け加えた。

 聞いていたのならば話は早い。眉間にし皺寄せあからさまな程に嫌悪感を示した正治とは対照的に瞳を煌めかせたたまは緋桐が『道楽で幽霊退治』をしてくれるのではと期待に胸躍らせる。費用の事は脳内から抜け落ちて、幽霊退治と言う面白おかしい事件への参入を進める様に「じゃあ」と唇を歓喜に震わせる。

「本当に祓っちゃてもいいのかな?」

 子供の様な無垢な表情で緋桐は首を傾ぐ。

 目を丸くしたのはたまも正治も同じことだった。

「狐塚、こいつは『幽霊退治』を依頼しに、」

「正治は黙って。オレはね、たまちゃんと話してるんだよ?

 君はまじめだからオレの言うことが理解できないのかもしれないけれどさ――こういう時、オレは冗談なんか言わないじゃないか」

 饒舌に正治を説き伏せる緋桐は、先ほどまでの甘えたの子供のような表情から一転し、苛立ちを見せる。鮮やかな金の色は細められ正治を捉えている。

「それで、たまちゃん? 『本当に祓っていいの』? だって、その幽霊ってさ――いやぁ、これは、まあ、いいかな。からかってるわけじゃあないよ。正治がどう言おうともね。オレはオレの考えで動くから」

 意味ありげに呟く彼は「それで幽霊ってモノを君たちは信じているかい?」と頬杖をついたままに投げかけた。

「わ、私は信じて――」

「俺は信じていない」

 身を乗り出したたまの隣でため息交じりに言った正治は詰まらないと小さく息を吐く。その対照的な反応に、緋桐は愉快だとくすくすと笑い整ったかんばせを『いじわる』に歪めた。

「正治、オレの存在も否定するみたいだね? 有名な怪談噺や河童などの妖怪の類でもいい。あるいは中国に存在する麒麟や神の類だってかまわない。目に見えないものを信仰することと、目に見えない存在を認識することに全く違いはないよ」

 机の上でゆらりと揺れたティーカップの中身。その鮮やかな琥珀の色は甘ったるい香りを放っている。

 せっかくの紅茶が覚めてしまったことにも構わずに、楽し気に目を細める緋桐は顔を背け、会話を拒絶するように背を向けた正治を眺めている。

「あの、緋桐さん」

 その空気は重苦しい。僅かに声を震わせ、首を傾いだたまは緋桐と正治の間に割って入る様に立ち、椅子に深く腰掛けた少年の顔をまじまじと眺める。

「『オレの存在』って……?」

 その言葉はまるで――まるで、自分が妖怪や幽霊の類だというようではないか。

「目敏い女の子は嫌いじゃないよ」

「じゃあ、やっぱり、緋桐さんはよ、妖怪? 河童?」

 話の中に出てきたのは河童だけだった。

 何処か意味ありげに深い笑みを湛えていた緋桐の肘がずるりとひじ掛けから落ちる。眉間に皺寄せた正治の表情は拍子抜けしたように緩み、深いため息に似た何物かを吐き出した。

「莫迦か」

 え、と瞬くたまの声と同時に、椅子から滑り落ちる様に膝から崩れ落ち、クッションに頬を預けたまま愉快愉快と転げ笑う緋桐がばしばしと床を蹴る。

 子供の様な仕草と大笑いに圧倒されながらもたまは訳が分からないと困った様に眉根を寄せた。

「え、え?」

「た、たまちゃんさァ、『僕の名前』を呼んでみて?」

「え、と、狐塚 緋桐さん?」

 いまだに笑いを含めた緋桐の表情が僅かに緩む。彼の瞳から零れた金の光は笑顔の反動で滲んだ涙で輝いて見える。

 名前を呼べと強請られた理由も分からぬままに彼の瞳をきれいだと見つめたたまを現実に引き戻したのは、この中で最も落ち着いてた正治の声だった。

「狐塚、お前は見知らぬ女に素性を言うのか」

 責め立てるような声に、時勢はこうも落ち着いて安寧なる平和が横たわっているというのに、どうして怯えるのかとたまはを丸くする。やはり三十も近い青年将校が言う言葉なのだから、西洋人形のように整った外見の緋桐の素性は世間に知らしめてはならないことなのだろう。

「狐塚さん、大人の言うことは聞いた方がいいですよ」

「お、大人……?」

「そうです! 15も過ぎぬ小娘の私や狐塚さんじゃ世界の危険や子供を狙った悪党の話なんて御伽噺みたいなものですもん!」

 ね、と念を押す様に緋桐へと告げるたまに彼の表情はみるみるうちに赤らみ――またも、笑みが弾けた。

 次はクッションすらもばしばしと殴りつける時間だった。ひい、ひい、と声を漏らし、過呼吸を起こしたかのように大袈裟な息を続ける緋桐はたまの疑問や声も聞こえてはいない。

「わ、私、何かおかしなことを……?」

 正治さん、と呼ぶ相手も落胆したように肩を落としている。何かまずいことを言ったのかと慌てたたまは二人の間で視線をうろつかせた。

「い、いやぁ……正治……お、お前、よ、よかったなぁ……」

 ばしばしと机を叩く緋桐。何が一体こんなにも面白いのか。愉快愉快と笑い転げる少年の笑いのツボが可笑しいのか、それとも自分が奇天烈な事を言っているのかたまには皆目見当もつかないが――正治の落胆ぶりからみるに後者であるようにしか思えない。

「すまないが、驚かないで聞いてくれるか」

「え、ええ……」

「俺は23歳だ」

 彼の表情を盗み見る様に視線をあちらこちらに揺れ動かして。こんなに真面目そうな青年が嘘を吐く訳ない、と頭の中では独白が続いている。笑い過ぎの呼吸困難でもはや動くこともできなくなった緋桐を見る位に、事実であることは確かなようで……。

「え?」

「そりゃあ、驚くでしょ。ひひっ……くっ……」

 転げ回って腹痛を堪え切れないと言わんばかりの緋桐。

 申し訳ないという様に頭を垂れた正治も報われない。寧ろ、年齢を大幅に間違えたたま自身も居心地の悪さに襲われる。

「……すまない、昔からこの様な出で立ちなんだ」

「いえ、いいのよ、いいのだけど……」

 ――ああ、こんな空気になるなら彼に余計なことを言わなければ良かった。


 たまは、出会ったばかりの道楽探偵に忠告を行ったことをこれ程までに悔いたことはない。

 適当に、曖昧に、『学生時代のように』笑顔で凪いでいればそれでよかった筈なのに。

「たまちゃん、ごめんね。面白くって……」

 くい、と袖を引く緋桐は帰らないでねと念押すようにこちらに近寄り見上げてくる。幼い子供のような顔立ちに、金の瞳がちらりと鮮やかで。思わず息を飲んだたまは曖昧に笑って彼へと大丈夫だと告げた。

「ついでだが、狐塚は―――」

「僕は、たまちゃんと同い年のかわいい男の子だからぁ」

 甘えた様に言う彼に、苛立ちを抑えきれないと正治が立ち上がる。傍らに据え置いた日本刀を握りしめる彼を諫め乍らたまはちらりと『同い年であるはずの少年』を見つめた。

「しょうがないなあ。知りたがりさん」

 改めて椅子へと座りなおした緋桐はやけに大人びた顔をしてたまと正治を見つめる。

「僕は今年で28になったよ」

 よろしくね、と首を傾げ、持ち前の愛らしさを前面に出す笑顔。息を飲み、正治の腕を幾度も叩きながら彼と緋桐を見つめるたまは絶叫しかかった言葉を飲み込んで、「え」だとか「う」だとかを幾度も繰り返す事となった。

「んふふ」

 詐欺師がいるとしたらきっと彼のような存在だ。

 最近は巷でも詐欺や窃盗が横柄しているという。取り締まる軍警も西洋街ではあまり役に立っていない――と言う話も耳にする。こうして道楽で探偵をしているという彼は有能な詐欺師なのでは……?

 脳裏に浮かんだ『ありえない』物語を組み立てるたまの表情に緋桐はくすくすと楽しげに笑った。

「まあ、実年齢がバレた以上、僕とか言ってる場合じゃないよね。

 改めてオレは狐塚 緋桐。たまちゃんはキツネに化かされたって気分だよね? ま、それも正解っちゃ正解だから……可愛い男の子じゃなくてごめんね?」

 僕と言う口調に、子供のように袖を引く仕草。そのすべてを計算ずくでやっていたというのだから有能な詐欺師だ。

まさしく『狐に化かされた』という言葉が似合う。

 冗談は休み休みに、とぼやくたまに緋桐は「冗談じゃないさ」と正治を振り仰いだ。

「狐塚は今は嘘をついていないな」

「ええ……?」

 狐に化かされたことが――正解?

「オレは普通の人間じゃあない。

 妖狐のクオーター。妖怪の血も随分と薄れてはいるんだけどね、髪と瞳……それから外見にだって現れているだろ?」

 どうだい、と微笑む彼は西洋の人形の様で。

 ここまで美しい金はそうそうお目にはかかれないと彼は言った。鮮やかな金、お月様の様な色――それに魅せられるようにたまはじつと見返した。

「きれいだけれど」

 奇天烈愉快な道楽探偵。一寸した設定を隠し味にした方が世界は楽しいとでも言うように、彼はころころと笑う。

「信じられないなら、一緒に過ごして信用してよ。

 君がオレ達に持ってきた『依頼』だって、他の人間に言ったところで意味がない――それ所か、君はオレ達以外に依頼をすることが出来ない筈なんだ」

「それは、どういう……?」

 饒舌に依頼をすることを進める緋桐にたまは首を傾ぐ。彼の言葉は余りに突拍子もなくて、あまりに理解不能で、あまりにも――納得してしまったからだ。

「試してみるかい?」

 どうせ、だれにも相手にされない気がしてならない。

 けれど、試してればいいと言われるような気がして、たまはゆっくりと緋桐の屋敷を後にした。

 帝都の街は、様々な要素が混在している。西洋の雰囲気を多分に含んでいるのは、時代柄と言う事もあるのだろうが、たまは余り慣れないと背を伸ばす。

 元から、女学校と家を往復するだけだった学生生活だ。こうして、街中を行くのはどうにも生きた心地がしない。

(……依頼をすれば、いいのよね?)

 西洋街の中には紳士淑女が歩き回っている。先程の緋桐が洋装であったように、周囲にいるのは皆、西洋の衣服を身に纏った西洋人ばかりだ。和装でこうして歩き回るには余りに不似合な気がして、頬に朱が登る。

(あの言葉に乗らなければよかったわ……)

 ブーツが石畳に音たてる。舞い上がる砂埃を払いながら進めば、緋桐の邸宅よりもよっぽど『探偵』らしい事務所看板を発見した。ノックを何度か、ゆっくりと繰り返してたまは小さく息を吐く。

「あの、すみません」

 ゆっくりと扉を開くのを待てば、紳士然とした男は周囲を見回してから首を傾いだ。

「あれ? 今、確かにノックが……」

 男性の視界に自分が入らないわけではない、なのに見えていないかのように彼は振る舞っていた。

「……え?」

 たまが「あの」と小さく声を発するのも待たずに扉はぱたりと閉められる。これが相手にされないという事か――所詮は西洋街に住まう事も出来ない庶民だと言われた気がしてたまは唇をきゅ、と噛みしめた。

「ひどい話だよね、全く」

「……緋桐さん?」

 どうして、と呟けば背後に立っていた緋桐は丸い金の瞳を細める。三日月が、その中で揺れている。

「『相手にされなかった』でしょ」

 ゆっくりと、狐は嗤う。

 まるで、見えていないかのような――そんな。

 手招かれ、ようやく陽が沈み始め街灯の明かりが足元を照らし始めた事に気づいた。

「オレはそれなりに高いよ。でも、君がオレ達と一緒にこの事件を解決するというならタダにしてあげてもいい」

 差し伸ばされた掌の白さに目が眩む。

 関わらない方がいいと正治が言っていた――きっと、化かされているんだわ、私。

 そう思えどゆっくりと彼へと近づく自分にたまは気付いた。かつ、と小石を蹴り飛ばせど現実世界である証左を得られるだけで。どうしてか、自分を認識してくれるのは彼だけのように思えてしまった。

「でも、緋桐さんは祈祷師でも陰陽師でもないでしょう?

 ……わたしのことをだましているわけでは、」

「そんなことはないよ。元気で明るくて、だれよりも一生懸命な『たまちゃん』」

 柔らかに微笑んだ彼の指先は夏の終わりだというのに、冷たかった。

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