第14話
あっという間に次の日、俺は1人で王城に訪れていた。そして目の前に国王。つまりここは謁見の間だ。俺は、自分の答えを、伝えに来た。
「えっと、メアリールにはもう言ったんだけど」
「娘の婿にはなれないと?」
「あ、はい」
「なら、仕方ないな。いや、惜しい人間を逃したものだ」
「すみません」
「謝らんでいい、大事なのは本人の意思だ。それとは別に、騒動を引き起こした犯人の手がかりを見つけたとか」
「あ、はい。まだ犯人は分かりませんが」
「そうか、期待しているぞ」
「どうも」
謁見の間を出ると、メアリールがいた。
「どうでした?」
「怒られず、期待された」
「良かったじゃないですか」
「まぁな、あ、そうだ」
「なんですか?」
「このあと、一緒に出掛けれられないか?」
「振って間もない女をよく誘えますね」
「別にいいだろ」
「分かりました。出掛けましょうか。」
俺たちは城を出て、歩き出す。しばらくして、街に着く。街の中をぶらつくが、誰もこちらを見ない。皆、国の王女の顔を知らないのか。
「ヒロ、犯人が分からないというのは、うそですね?」
「メアリールは、俺のうそを見抜く天才か?」
「なぜか分かるんです」
「今日は、俺の考えを話すつもりだ」
「謎解きですか?」
「そんな大層なものじゃないさ」
目的地は決まっていた。そして目的地に着いた。
「ここは、アプリコット屋敷?」
「あぁ、犯行現場その2だ」
「その2?」
「その1はモリア森」
「なるほど、あなたの推理を教えてくれますか?」
「あぁ。ここにある木の1本に、転送の魔法陣があった。犯人はその魔法陣を使って、ブヒモスをここに転送したんだ」
「転送の魔法陣は転送元と転送先、2つ必要。だから犯行現場その1とその2ですか」
「あぁ、つまり、犯人は、ここの木に魔法陣が描ける人間に限られる。そして、犯人を示す証拠がこれだ」
「わたくしの弓?」
「この弓の魔法陣は、お前が描いたんだよな?」
「はい」
「この魔方陣と木に描かれていた魔法陣、その筆跡がそっくりだった」
「そうですか」
「もちろん、こんな曖昧な証拠じゃ意味を持たない。だから、お前の口から聞きたい」
ここで一度深呼吸。大事なことだから焦らずに。
「今回の騒ぎの犯人はお前か?メアリール」
「はい」
「理由、教えてくれるか?」
「この屋敷に居たくなかったんです。この屋敷に不満はありません。ただ、わたくしは城で、国造りに加わりたかった。そのために、城に戻る必要があった」
「国王はお前の身の安全のため、この屋敷に送った。でもブヒモスに襲われれば、ここは安全な場所じゃなくなる」
「だからブヒモスを転送したんです。まさか、街にまで被害が及ぶなんて」
「お前は今どうしたい?」
「お父様に謝りたい。ベアオークさんに謝りたい。街の人たち皆に、謝りたい。です」
メアリールの目には、涙が浮かんでいた。
「じゃあ、お前がしたいことをしろ」
「はい」
メアリールは城に戻り、俺は砦に戻った。
「ヒメ、帰るぞ」
「門は?」
「さっき見たが、門があった」
「悔いはない?」
「あぁ、1人の人生を導いてやったからな」
「何それ、キザ~」
「いいから行くぞ!」
俺たちは門の前に立ち、ノックする。門が開き、公園の風景が見える。
「帰るか。妹よ」
「うん。お兄ちゃん」
俺たちが通った後、門はゆっくりと消えていく。
後日談は、またいつかな。
ブラコンの妹とシスコンを認めたくない兄が異世界の扉を発見した結果。 秋野シモン @akinoshimon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます