第13話
その日は、いったん砦に帰ることとなった。メアリールは城に残る。砦に着いた後、もしかして門があるかもと、あの場所に行ってみたが、門はなかった。砦に戻ろうとすると、ある1本の木が気になった。そして、砦から、ヒメとなんとか隊長を連れて来る。
「ヒロ殿、この木の何が気になるんだ?」
「見てくれ、他の木はブヒモスによって、幹から折られているのに、この木は枝しか折れていない」
「なるほど」
「お兄ちゃん、この木の表面にバリアみたいのが張ってるよ」
「そうか、おそらく幹を傷つかせないためのバリアだな」
「なら、私が壊してやろう」
なんとか隊長が、大剣を取り出し、幹に切りつけるが、剣は弾かれた。
「なんて強力なバリアだ!」
「あ、これが使えるぞ!」
俺はバッグから、発明品を取り出す。
「お兄ちゃん、それずっと持ってたの?」
「いや、城行くときは置いてった」
俺の発明品、それは男の夢であり、最強ランクの武器。
「これぞ、電磁砲!別読み、レールガン‼」
「くらえ、バリア野郎‼」
電磁砲は、高電力エネルギーを発射する。そしてそのエネルギーは、視認出来ないバリアを確実に破壊した。
「よし!」
「お兄ちゃん、喜ぶのもいいけど、煙出てるよ」
「え?」
俺の電磁砲が煙を上げ、発火した。
「熱!」
地に落ちた電磁砲は完全に壊れた。
「改良の余地あり、か」
「む、この幹、初期魔法陣が描いてあるぞ」
「初期魔法陣?」
「あぁ、魔力を持たない人間、例えば、私なんかでも、描きかたさえ知っていれば描ける魔法陣だ」
「これは何用の魔法陣なんだ?」
「どうやら、転送魔法の初期魔法陣だな」
「転送魔法陣?そういうことか」
「ん?」
「あのバリアは、この魔法陣を守っていたんだろう。魔法陣の上から傷がついたら、魔法陣が機能しないからな。転送魔法陣ってのは、送られる魔法陣の他に、送る魔法陣がいるんじゃないか?」
「確かに、なら送る魔方陣はモリア森だな」
「これで、ブヒモスが大量発生したことの説明がついたな。容疑者も、私有地である、ここに来れる人間に限られる。
「じゃ、後はよろしく隊長」
「え、後はって、え?」
「俺は疲れたんで、帰って寝る。行くぞ、ヒメ」
「え、あ、うん」
俺たちはそれぞれの部屋に帰り、俺はベッドへダイブ。バッグを片付けようと中を見る。
「あれ、なんか入ってる」
それは、最初にこの世界に来たとき、メアリールに借りたままの弓だった。よく見ると、何か魔法陣が描いてある。
「これも、初期魔法陣か?」
その時、扉がノックされた。
「ヒロ、いいですか?」
「またメアリールか。ん?お前、城にいるはずだろ!」
「抜け出してきてしまいました」
「あ、そう。ま、いいか、入れよ」
「はい」
抜け出したままの格好か、きれいなドレス姿だった。きれいなのはドレスだぞ?
「あ、それわたくしの弓ですね。木を彫るところから、おまじないの魔法陣を描くところまで、自分でやったんです」
この魔法陣はおまじないか。ん、この魔法陣、まさか。
「あの、今日はすみませんでした。父は、女のわたくしでは国を支えられないと思ってるんです。それで、婿とりを急いでいて」
「王族って大変だな」
「はい、でも、わたくしは相手がヒロならいいと思っています」
「え?」
「ヒロが、妹以外の女性に好意を持てないのは分かっています」
なぜだろう、俺が妹以外を愛せないシスコンって言われている気がする。
「それでも、わたくしは、ヒ、ヒロのことが」
俺はメアリールを抱きしめた。好意からくるものではない。同情心でもない。ただ、こうしたかった。
「メアリール、悪い。お前の気持ちには答えられないし、俺はもうすぐいなくなる」
「はい、分かりました。なので、その」
「ん?」
「恥ずかしいので、そろそろ離していただいても」
「おぉ、悪い」
「えっとその、ありがとうございました」
メアリールが退室した後、再びベッドにダイブ。今日は本当に疲れた。
ま、明日の方が疲れるだろうな。
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