第12話

 次の日の早朝。ヒメはどこかに行っていたのか、たった今、砦に入って来た。

「お兄ちゃん、門がなかったよ」

「本当か?歪みのせいで、出現時間が変化したのか?マイコンピュータで計算し直さないと」

「その前に、王城に行かないとね」

移動は馬車だった。窓がなかったため、詳しくは分からないが、体感的に時速40㎞ぐらいか。以外に速い。王城に着くと、すぐに、謁見の間に通された。奥に座っているのは、もしかしなくても王様だろう。そして、その横には、俺たちを見送ったはずのメアリールがいた。なぜか豪華なドレスを着ている。

「なんでメアリールが?」

その疑問に、今まで俺たちの案内をした、従者が答えた。

「メアリール様には、あなた方が出発したあと、別の馬車にて、王城に来ていただきました。

「なんでメアリールが、別の馬車で?」

「それは」

「わたくしが答えます」

メアリールは、そう言って俺たちの方を見る。

「ヒロ、ヒメ、今まで隠していてすみません。改めて自己紹介をさせてください」

メアリールは、胸の前に手を置き。

「わたくしはこの王国の第一王女、メアリール・ロイヤルハートと申します」

そんな驚きの自己紹介をした。そして国王が口を開く。

「この度は、我が娘が大変世話になった」

理解が追い付きません。

「メアリールが王女?」

「あぁ、娘の身を案じた私が、アプリコット家の長女として、ベアオーク氏の屋敷に住まわせることで、身を隠させたのだ」

「わたくしも、いつ言おうか迷ったのですが」

理解が間に合いません。

「へぇ~、メアリールって王女様だったんだ」

「おいヒメ、驚かないのか?お前の肝っ玉が大きいのは知っているが、さすがにことがことだろ」

「いや、驚いてるよ。でも納得。あの熊+豚×人みたいなおじさんと、メアリールが親戚って、どうしても思えなかったんだよね」

ベアオークさん、うちの妹が失礼ですみません。

「聞けば今回の騒動だけではなく、以前にも娘を救ってくれたそうだな」

「いや、そのことはもういいです」

「そういう訳には行かない。そこで、褒美も含めた頼みがあるのだが」

あぁ、参謀に指名されるんだな。

「ヒロ殿、我が娘メアリールの婿になってくれないか」

速度不足で思考停止しました。

「ヒロ、昨夜訊いたこと、覚えてますか?」

声は聞こえるが、脳が理解を拒んでいる。

「その、結婚を前提に交際、というか、いろいろ飛びますが、早い話」

もうこのまま夢オチで終わってほしい。

「わたくしと、結婚してください‼」

再びの思考停止。俺の脳弱いな~。

「兄に代わってお断りさせていただきます!」

「わたくしは、ヒロに訊いています!」

反発され、縮こまる妹。

「ヒロ殿、どうかな?」

「少し、時間をください。考えます」

こういう時の考えますは、断りと同意味だが、俺の『考える』がそれとは違うことは、俺自身を含め、この場にいる人間のほとんどが知っている。

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