第11話
その後、俺は砦内の休憩所で休憩していた。ま、休憩所だし。そこへ、えっと、なんとか隊長がやって来た。
「いや~、ヒロ殿のおかげで助かりました。できれば、これからも我らの参謀として、王城に来てほしいが」
「いや、それはちょっと」
「分かってます。君ほどの人間はいろいろと忙しいでしょう」
いや、暇です。ただ早く元の世界に帰りたいだけです。また門が開くのは明日の朝だから、それまで待ってますが。
「この件で王城から、ヒロ殿とヒメ殿に、招待が来ていました。国王自ら、参謀にご指名なさるのかもしれないですな」
「それって、いつ?」
「明日の朝一です」
「え、明日の朝一?」
「うむ、この王都からさほど遠くないからな」
「え、ここ王都なのか?」
「知らなかったのか?街の入口に立て札があっただろう?」
立て札は見ていない。入口から入っていないのだから。
「その招待って、絶対行かないとダメか?」
「王城からの招待なのだから、行かないと駄目だろうな。拒んだら、強制的に連れてこいと言われている」
「行きます」
「寝坊するなよ」
俺は、砦内に用意された自分の部屋に戻った。ヒメと同じ部屋じゃないのが気になったが、シスコンと思われたくないので黙っている。とりあえず、ずっと持っていた重いバッグを置く。
「結局使い道ないかな、これ」
バッグの中の、急遽完成させて持ってきた発明品を見ながら、そう思った。その時、部屋の扉がノックされた。
「ヒロ、入っていいですか?」
「メアリールか。いいぞ」
部屋に入って来たメアリールは、この前と違う服、おそらく寝着を着ていた。パジャマまで洒落たものだな。
「わたくし、ヒロに確認したいことがあって来ました」
「なんだ?」
「ブヒモスの動きに癖があるというのは、うそですね?」
「やっぱり、メアリールにはばれたか」
「あなたは、どうやってブヒモスの動きを予想したのですか?」
「ブヒモスが一直線に突進し、激突して方向転換することが分かれば、それだけでよかったんだ。後は、建物や地面の状態、材質とか、天候状況から、ブヒモスが本能的にどう曲がるか予想したんだけと、それだけだと、作戦として確実性に欠けるから、説得のためにうそをついた」
「それでは、瓦礫に登ることも含め、砦に着いてから作戦を考えたように聞こえます」
「まぁ、実際その通りだ」
「しかし、あなたは砦に行く前から作戦があると」
「あるにはあったぞ。『その場に行ってから考える作戦』。実際にいい案思いついたろ?」
それを聞くと、メアリールは吹き出し、笑い出した。
「あなたは、本当にすごい人ですね」
「そうか?」
「そうです」
メアリールは、笑いで出た涙を拭き取り、再び微笑んだ。
「もう1つ、訊いてもいいですか?」
「あぁ」
「これはあくまでも仮定の話なのですが」
「なんだよ?」
「本当に仮定の話なので、あまり深く考えないでください」
「早く言えって」
メアリールはうつむき、やがて覚悟を決めたように顔を上げ。
「わたくしが、ヒロに交際を申し込んだら、OKしてもらえますか?」
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