第10話

 俺たちはメアリールの案内で、隠し通路を通って砦に来た。砦って何?城と違うのという質問を、以前妹にされたことがある。その時、俺は疲れていたために。

『チェスのルークだよ』

という意味の分からない答えかたをしてしまった。しかし、それはある意味一番の正解答だった。なぜなら、俺たちが今入ろうとしている砦は、チェスのルークそっくりの形だったのだから。

「ようこそ、トリデイ砦へ。って、そんな場合じゃありませんよね。どうぞ、この上が、作戦参謀室です。」

螺旋階段を昇ると、大きな部屋があり、そこで、何人かの男がテーブルを囲んで話していた」

その内、一番ゴツい鎧の男が、俺たちに、気付いた。

「おや、メアリール嬢、その方たちは?街の民は、下の部屋で待っていてもらうよう言って置いたはずですが?」

「バックル、この方たちは、私を助けていただいたヒロと、その妹のヒメです」

「おぉ、ベアオーク殿から話は聞いております。そうですか、あなた方が、これは失礼を。私は、王国警備隊隊長、バックルという。どうぞよろしく」

「はぁ、どうも」

「よろしく、バックルさん」

「こちらこそ、お嬢さん。それで、なぜこの方たちをここへ?」

「ヒロは、ブヒモスたちを止める作戦があるそうです」

「何、それは本当か?」

「まぁ、一応。ブヒモスを止めるには、眉間を攻撃して、気絶させればいい」

「それは我々も知っている。ブヒモスは皮膚が分厚く、眉間以外の攻撃は弾かれてしまう。だが、やつらは巨大で、眉間を狙うことができない」

「そう、でも方法はある。建物が壊されて、瓦礫の山が出来ているだろう?つまり」

「そうか!あの瓦礫に登れば、眉間を高所から狙えるぞ!だが、ブヒモスは突進、激突、方向転換を不規則に繰り返している。あの動きをとらえなければ、いくら高所に立ったところで」

「それについても策がある。ブヒモスの動きは、不規則に見えて、実はある法則があるんだ。」

「何だと⁉」

「ヒロ、それは本当ですか‼」

「あぁ、猪は、この場合、ブヒモスは、真っ直ぐにしか突進できない。激突すれば方向転換するが、このときどちらに曲がるか、1匹1匹決まっている。きっと癖なんだろうな」

「まさか、そんな法則が」

「隊長、この街の地図はありますか?」

「あ、ある。今持ってこよう」

バックル隊長が持ってきた地図を、テーブルに広げる。

「ヒメ、ブヒモスたちがそれぞれどこにいたか、覚えているか?」

「もちろん!」

ヒメが、ブヒモスのいた場所に、印をつける、そこに、俺がブヒモスの進行予想経路の線を引く。

「よし、こことここ、あとここに、武器を持った隊員を配備してくれ」

「わ、分かった。しかし、猛スピードで突進するブヒモスを狙えるだろうか?」

「何言ってんだ?これらのポイントは、ブヒモスがこれから通ると予想されるものだ。つまり、ブヒモスがどの方向から来るかも分かっている。向かって来るブヒモスを狙うのは、近付いて来る的を狙うようなものだ。外すわけないだろ」

「なるほど、感服した」

「さぁ、作戦実行だ」

その後、俺の作戦は見事成功し、ブヒモスを全て気絶させ、もといた森に返すことができた。

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