第5話

 俺と妹は、メアリールの叔父(名はベアオークというらしい)に付いて、長い廊下を歩いていた。

「広い屋敷だから、余った部屋が多いんです。あなたたちに使ってもらって良かったですよ」

「そこまで長居するつもりはありませんがね」

「え、そうなの?」

「おいヒメ、元々俺たちは」

そこで喋るのを止めた。うっかり、俺たちがどこから来たか、ベアオークの前で言ってしまうところだった。

「さ、着いたよ」

ベアオークは1つの扉の前で止まった。

「一応掃除はしてあるから、ゆっくりしていてくれ」

「あの、メアリールの部屋はどこですか?」

「ん?あの子の部屋はここの2つ前だが?」

「ありがとう」

ベアオークが去った後、俺はメアリールの部屋へ向かおうとする。

「お兄ちゃん、どこ行くの?」

「ちょっとメアリールの部屋にな」

「浮気?」

「違うって」

俺は部屋を出て、メアリールの部屋へ。さすがに迷うことはない。礼儀上ノック。

「メアリール、来たぞ」

「どうぞ」

中に入ると、メアリールが椅子に座って待っていた。最初に会った時と違い、ワンピース姿のメアリールは、なんだろう、すごく良い。

「どうぞ、座ってください」

メアリールの向かいの席に座る。

「あなたを呼んだのは」

告白でもされるのかな?身に覚えないけど。

「ヒロ、まだ隠していることがありますね」

そっちか。

「お願いします。わたくしに、あなたのことを教えてください」

「分かった」

「ありがとうございます」

「俺の年は19、身長は170㎝、体重は」

「ごまかさないでください」

「ごく最近、妹と一緒にお風呂に入りました」

「それも驚きですが、違います。あなたと妹さんは迷い混んだと言いましたが、本当はどうやって、ここに来たのですか?」

「…」

「言えないなら結構です」

「悪い」

「勘違いしないでください。わたくしはあなたたちを信じています。ただ、少し気になっただけです」

「いつか、話すよ」

いつになるか分からないが。

「はい、その時が来たら、よろしくお願いします」

「あぁ」

「あの、これはわたくしの勝手な想像なのですが、あなたはもしかして」

まさか、異世界から来たことがばれたのか?

「魔法使い様なのではないのですか?」

自分の部屋に戻り、ベッドに座る。

「お兄ちゃんどうしたの?メアリールにたぶらかされた?」

「なぁ、ヒメ」

「何?」

「俺は、魔法使いらしい」

「色々大丈夫?」

「おい、それはどういう意味だ?」

「大丈夫、私はどんなお兄ちゃんでも大好きだよ」

「止めてくれ、悲しくなる」

「いや、さっきメアリールとな」

数分前

「魔法使い様なのではないのですか?」

「えっと、なんでそう思ったかな」

「だってあの時、見えないはずのブヒモスの眉間を撃ち抜いたではないですか」

「あぁ、それは」

矢の軌道を計算した。と言おうとしたが。

「超視認の魔法ですよね!」

いや、違いますよ。と言おうとしたが。

「矢を放つ前、呪文を呟いてましたよね!」

いや、それは暗算の式をブツブツ言っていただけです。と言おうとしたが。

「わたくし、魔法使いに憧れているんですよ!」

「そ、そうなのか」

ワクワクした表情のメアリールを見ていると、もう、魔法使いってことでいいやと思えてくる。

「じゃあ、今度別の魔法を見せてやるよ」

「本当ですか⁉」

「あ、あぁ」

「ありがとうございます‼」

現在

「お兄ちゃんは馬鹿なの?」

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