第2話

これまでの事を整理しよう

僕、暁 皇焉あかつき こうえんは、ひょんなことから、異世界フェアリーテイル・ランドに転生してしまった。

右左もわからないで混乱している僕を見つけた赤ずきんは、一緒におばあちゃんの家に行くことを提案してきた。この土地も理解していないまま、無闇に進むのは良くないと思い、赤ずきんに着いて行くことになった。


「ねぇねぇ、この先の街で休まない?」

無邪気な笑顔で僕に話しかけてくる。頭の整理もついてきたところだったので、彼女の笑顔は、癒しに繋がった。

「そうだね。暗くなってきたし、休もうか」

軽く頷き、赤ずきんの頭を撫でる。「え?」みたいな困った表情も可愛い。これが童話に出てくる赤ずきんなのか?

「ごめんね?撫でられるの嫌いだった?」

小さく首をかしげながら聞いてみると、赤ずきんは首を横に振り、顔をほんのり赤に染めた

「ううん。撫でられるのは好きだよ。でも、男の子に撫でられるのは恥ずかしくて……」

赤ずきんの表情は全て可愛かった。現在の表情は、下を向いて、恥ずかしさを隠してる。

「そ、そう言えば、君の名前聞いてなかった!」

「本当に今頃だね……」

約、2時間一緒に歩いてきたのだが、今だに名前も名乗っていなかった。

「僕の名前は"アカツキ"」

「アカツキ君か……。珍しい名前だね?」

「そうかな?」

そんな事を話していると、街の入口に着いた。立派な門に現実世界の文字とは違う文字で何かが書かれていた

その先には、赤レンガの家がズラッと並んでいた

「ほら、アカツキ!行こう!」

手をひられ、僕と赤ずきんは村へと入っていった。


「ようきなさったな……。でも、宿がないとよ。じゃけん、うちに泊まっていかんね」

宿を借りるため村長の家を訪ねた。

村長は、年老いていていて、腰が曲がっているが、声は若者にも負けないほどの大きさだった。

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます!」

赤ずきんは、元気よく手を挙げ、返事をする。隣で僕も、「お願いします」と言いながら頭を下げた。


「じゃあ、ここば使わんね。お風呂は一番奥にあるけんが、好きに使ってよかばい」

「はい。わざわざすみません。」

「よかよか。こんな可愛かカップルなら大歓迎たい。」

赤ずきんは、一足先に食事に向かっていたため聞かれていなかったが、僕の顔は真っ赤になっていた。

「そ、そんな関係じゃないですよ!」

「若もんはやっぱり可愛か〜」

必死に弁解する僕を笑顔で見る村長の顔は悪魔に見えた。


結局、部屋に連れていかれた後は、夕食のため、リビングに向かった。

リビングは、広く、真ん中には軽く10mある長テーブルが置いてある。

赤ずきんは、左側のど真ん中に座っていた。

「ほら、アカツキもおいで!」

言われた通り、赤ずきんの隣に座る。

テーブルには、僕と赤ずきん、村長と白衣を纏った茶髪の青年が座っていた。

「旅のお方。長旅ご苦労さまでした。今日はごゆっくりしてください」

青年は爽やかな笑みを浮かべているが、その一言には、悪意が込められているような感じがした。

しかし、その時の僕は、ただ言葉を選び間違えただけだと思っていた。これから先のことを知っていれば、この時、不思議に思うのが一番の方法だった。

それから、召使いがご飯を持ってきて、ご飯を食べた後、用意された部屋に行き、休むことにした。


用意された部屋の全てのものが四方向すべて真っ赤に統一されている。

用意された寝巻きに着替え、ダブルベッドに赤ずきんと一緒に寝転がっていた。

「じゃあ、もう寝ようか…。私、一日中歩いてて疲れた」

「そうだね。寝ようか」

枕元にあるロウソクの火を、軽く吹き消す。

それから数分後、隣から赤ずきんの寝息が聞こえた。

それはそれは、可愛い寝息だった。

「どうしよう…」

これからの事を思うと頭が痛くなる。

「まぁ、明日になって決めようか…」

まぶたが重くなり、閉じた。その瞬間、隣にある窓が割れた。

僕は、急いで赤ずきんに覆い被さるような態勢になった。

「赤ずきん!起きて!」

「んー?もう朝?」

「違う!事情はあとで話す!」

僕はそれだけ言うと、赤ずきんを横抱きして、ドアを蹴り開ける。

靴下のため、ものすごく足が痛い。絶対に、足の爪割れた……。

そんな事を考えながら、赤色の絨毯の上を全力疾走する。

「くそっ!何なんだよ!」

なぜ自分が逃げているのかはよく分からないが、窓が割れた時に一瞬見えたものに恐怖を感じた。 一瞬のことでよく分からなかったが、何か人形の黒い影があったような気がした。

「ねぇ、アカツキ?何があったの?」

「分からないけど、窓がいきなり割れたんだ!それから黒い人影が見えて…」

「アカツキ!降ろして!」

「え!?」

「いいから!」

僕は、言われた通り急いで赤ずきんを降ろすと、赤ずきんの表情は真剣そのものになった。

「"シャドー"」

赤ずきんがそう呟いた途端、僕が走ってきたルートから、黒い人形の何かが追いかけてきていた。

近くなるにつれ、見える全身。

身長は約60cm。顔のあたりには、真っ赤な大きな瞳がひとつ付いている。

「アカツキ!ちょっと、離れてて!」

「え!?」

「いいから!」

赤ずきんの強い口調にビックリしながらも、赤ずきんから距離をとる。

僕が離れたことを確認すると、スカートの中から、赤く光る何かを取り出した。

『赤精霊の魔法!"ストーム!"』

赤ずきんが叫ぶのと同時に、黒い人影(シャドー?)に向かって、風の刃が飛んでいく。

「ギュシュウウウウ!!!」

不愉快な叫び声を発しながら、シャドーの体は真っ二つになり、灰となって消えていった。

「アカツキ!逃げるよ!」

「え、あぁ!」

差し出された赤ずきんの手を握り、立ち上がると、僕と赤ずきんは出口に向かい走った。

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