第6話襲撃
飛翔艇は、目的地へ向かって飛び続ける。
ナビの指示する輪の中を潜り抜けながら、スピードを落とすことなく、只管飛び続けていた。あれから特に強い力で引っ張られることはなく、先ほどのことがうそのように、何事もない。逆にそれが恐ろしくもあるのではあるが。
「見えてきました!!」
市街地といった感じの建物の間を抜け、中心地は大きく開けており、その広大なスペースに宮殿が立っていた。かつては、煌びやかで美しいかったのだろう。だが、ここも朽ちかけ、植物に覆われていた。
異世界(幻想世界≪メーレスボーデン≫、狭間≪ツヴィシェン≫)の生態系のそのほとんどは、巨大な物が多い。植物も、動物も。ただ、知的生命体に関しては、現実世界≪ヒムリシュ≫と然程変わらない大きさであり、非常に酷似している種族もいた。
目的地を示す赤いマーカーが、宮殿の手前で点滅している。
フィールド上に直接展開されているので、どの地点で飛翔艇を降りたとしても、辿り着ける仕組みになっていた。
「飛翔艇を停める低空地域とタラップはこの付近にあるんでしょうか??」
マップを拡大して、周辺の様子を探る。
大きな空港の場合、ターミナルスペースという場所に一度空間転移されてから空港に入るのだが、空港以外の場所で乗り降りする場合は、低空地域で飛翔艇を停め、タラップを直接飛翔艇に取り付けて地上に降りることになっていた。
「確か目的地付近に……かずちゃ……」
一樹の握っている操縦桿を、アレクシスは後方から前へ思いっきり倒した。
飛翔艇は急激に地面に向かって降下して、地面ぎりぎりの距離で体制を立て直した。勿論一樹が行っているのではなく、飛翔艇の地上に停めることができない構造を活かしたものである。
「ど……」
いきなり飛翔艇ぐんと、後方へ再度引っ張られてる。
「かずちゃん、低空地域に!!はやく!!」
先ほどと打って変わって、かなり強い力で、引っ張られる。
一瞬スピードを緩めたのが間違いだったようで、上手く速度を上げることができないでいた。
「こう引っ張られては、低空地域に行くことすら……」
ぱっ
ぱっ
ぱっ
古い、映写機で映し出された映画の、画面がまるで切り替わる。そんな古めかし音が微かに聞こえてきた。
「アレックス、この音はなんでしょう??」
飛翔艇中に響き渡るエンジンの回転する音は、いつ限界を迎えてもおかしくないぐらいだったこともあり、爆音に近かった。
そんな環境の中で、小さな音を拾えるわけもなかった…筈だった。
ぱっ
ぱっ
ぱっ
一樹の傍らを抜け、丁度後方で音が止まった。
「音って、なんのこと??」
「ほら、丁度そっちに…」
ドン…
ドン…
強い力で2回突き上げる衝撃があり、強い力で、地面へと落とされた。まるで、巨大なヘビ、それともタコの足のようなものに絡めとられている様に何度も何度も、地面に叩きつけられた。
飛翔艇全体がミシミシと音をたてはじめている。
強い力で、上下左右振り回されているせいもあり、身体を固定するベルトにしがみつき、舌を噛まないようにすることが精いっぱいだった。
光が目の前に灯る。
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