第5話想定外の攻撃

「そろそろ目的地に向かいますね」


 飛翔艇破壊者の姿が見えなくなったのを確認し、一樹はエンジンを徐につけた。3、40分しか経過していない筈なのに辺りは暗くなりはじめ、視界がさらに悪くなってしまった。時間はまだ昼間の筈なのに、気持ち肌寒くも感じてきた。

 飛翔艇内に微かに明かりが灯り、ゆっくりと動き出す。

 建物の影から出た、ほんの一瞬。

 飛翔艇ががくん…と後方へ引っ張られる。

 先ほどと同様に、警告ブザーが突然鳴りだし、危険を知らせる。

 レザーに敵影は確認できない。


「あれく…しす、これ…は」


「あいつ“ら”!!飛翔艇破壊者フィーゲンブレジャーは番いで行動してるんだったっ」


「つがい!!-----先ほどのは、雄でしょうか??雌でしょうか??」


「-----かずちゃん、はよ、逃げんと…しぬるよ」


 一樹は真剣な眼差しでアレクシスに質問をした。

 どっちでもいいだろう、そんなこと…といいたげな、冷ややかな表情を一瞬浮かばせながら、アレクシスは冷静にツッコミをいれた。時々、御子柴みこしば 一樹かずきという男は、真面目が故か、どこか抜けているところがあった。アレクシスのは相手をおちょくる為に故意的にやっていることなのだが、一樹の場合自覚すらない。いわゆる“天然”と呼ばれる人種だった。まぁ、自覚がない分余計厄介なこともあるのではあるが。


「ああ、そうでしたね」


 強い力で後方に引っ張られるものの、敵の存在すら何故か目視できない。


「どうしたらいいのですか??」


「今、捕獲しているのはやつの触手の筈なんだよねぇ。だから、やつに喰われる前に何とか触手から逃げ出す……方法を探す……」


「ーーーアレクシ・ブライトナー…まさか…」


「かずちゃあああああん!!僕だって、万能じゃないんだよっ!!知識人で通っているかもしれないけどね、知らないことだってあるんだぞっ!!そもそも、やつらに捕まった場合、100%確実に喰われているから、助かる方法なんてわかる筈ないよね??」


「100%……生存者は、本当に??」


「----残念ながら…」


「アレクシ・ブライトナー、舌噛まないように気をつけてくださいね!!」


 一樹はそう叫ぶと同時に、操縦桿を大きく引き倒した。

 飛翔艇の周囲に渦状の幕が幾つも出来、機体ががたがたと揺れた。と、同時に、爆発的なエネルギーが後方へと放出され、勢いよく前方へ押し出される。光の線が窓の外側に幾筋も出来上がっていく。

 もともとヘラオスフォルダラー社から購入された時についていない、現実世界ヒムリシュ独自で後付けした機能であるがゆえ、飛翔艇の負荷も大きい。試験実験で耐えうると判断され実装はされているものの、実践運行は今回が初めてであるのもあり、使用するのにあたりかなり不安要素もあった。だか、いまは使うのを躊躇している場合ではない。


「……かずちゃんさ、分かっていて使ってるの??」


アレクシスが、これまた珍しいことに、どこかそわそわささた様子で尋ねてきた。


「なにをでしょうか??」


「たぶんね、この機体の状態でさ、この圧力がかかったまま飛び続けちゃうとね……喰われるまえにさ、分解すると思うんだ。この、機体

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