第2話 Hologramm Magie

「かずちゃ〜ん!ぐずぐずしてるとぉ、やられちゃうよぉ」


ずれた眼鏡をなおしながら、無精髭の男。アレクシス・ブライトナーは、強固な塀で囲まれた鉄筋コンクリートの建物群【刑務所フォルター】と、それを護る様に出現した飛翔艇を見つめながら叫び声をあげた。残り3機。


「だから、その名で呼ぶな……」


一樹は怒鳴りながら、機体を一気に加速し、上昇させる。

その後方からミサイルが追尾し、前方を敵の飛翔艇が行く手を阻む。最新鋭のミサイルは高性能であり、巧みに動く飛翔艇に難なくついてきた。勿論、前方。地上からの攻撃も続き、両方を躱す必要があった。


「ミサイルと敵機はなんとかしますから、目的地までの誘導頼みましたよ」


「りょっ!!なにか策あるの??」


密かに舌打ちをし、一樹は半球形のカプセルの中に片手を突っ込んだ。敵の飛翔艇とミサイルが飛ぶ光景が映し出される。ホログラムのミサイル2つを映像を見る事なく掴む。同時に飛翔艇は動力が切れた様に落下をはじめた。

ふたりの身体は下に引っ張られ、凄まじい圧力が指先までし掛かった。一時的に停止して固まったミサイルを真横に過ぎた瞬間、機関砲で打ち抜く。前方で起こった爆発のなかを掻い潜る様に再度上昇をはじめ、そのまま敵の飛翔艇へ向かっていく。


「Hologramm Magieーーホログラムで映像化したものを掴むだけで、その対象物を一時的に停止させる事ができる。が、ものすごいエネルギーを使用する為、飛翔艇の全機能も停止してしまう、諸刃の剣。……もう、実用化されていんだね〜」


「今回、これの実践テストも兼てーーーって、聞いていないのですか?」


「だねぇ〜Hologramm Magieは現実世界の方が開発したものだからねぇ、あんましお話もこないんだよ」


頭を掻きながら、アレクシスは、乾いた笑い声を零した。

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