第125話 高位魔獣ばぶー。

 暴走している蟹が物凄い勢いで俺に突進してくる。

 ルビーちゃんが、俺を抱えて横に跳躍する。


 ずぅーん!


 後方の船が砕け散る。


 ≪ヒール≫


 ルビーちゃんが魔法で受けた傷を回復させる。


 「パパ。ライナ死んじゃった…。」

 『ライナ!くるでちゅ!』


 切り飛ばされ右腕に持たれていた鞭が、蛇のように蛇行し俺の手におさまる。

 『チュウ。』

 『安心するでちゅ、ライナの本体はこっちでちゅ。』

 鞭のグリップにあるネズミの装飾がニヤリと笑う。


 かぁーー

 『べ!別に心配なんかしてなかったし!』


 蟹が瓦礫を弾き飛ばし、こちらに向かってくる。


 ≪ウィンド≫飛翔!!


 蟹は泡を飛ばし、空にも攻撃してくる。


 マジックバックからワイバーンを3体だす。

 『お前たち、ワーシップクラブの攻撃をかわしつつ注意をひけるでちゅ!』


 「「「グワァ!!」」」


 『お坊ちゃま。ど!どうするんですか?!』

 『蟹って…、おいしそうでちゅよね。』


 「「「「?!」」」」

 ワイバーンたちまで、ぎょっとしてるでちゅ!

 前世の知識では、蟹は美味しいと決まってるでちゅ!…ちょっと大きくて見た目が悪いだけでちゅ!


 蟹をワイバーンに任せて、船と船の隙間にある海に飛び込む。

 ルビーちゃんはワイバーンにまたがって蟹に魔法を飛ばしている。


 ≪ヒートウォーター≫

 ≪ドレイン≫


 海からMPを回復しつつ、蟹が甲板にいる船の内側に熱湯を注ぎつつける。


 「シャァーー!」

 「ばぶ?!」

 「スキあにぃ!」


 海の中から突然襲ってきた、キラー・ワカシを人型になったビビンが蹴り飛ばす。

 『ありがとうビビン。助かったでちゅ。』

 「気を付けるだぁ。スキあにぃのレベルは1なんだから、ひとりで海に飛び込むなんて自殺行為だぁ。」


 そうでちゅよね…。死ぬ前だったら、レベル12なのに死んでからはレベル1から上がらないでちゅ!


 疲れたワイバーンや被弾したワイバーンをギフトやヒールで回復させ続けて半日。

 ワイバーンたちがよだれを垂らして飛んでいる。


 とてつもなくいい匂いでちゅ。


 船の墓場の結界がなかったら、別の魔物を呼び込みかねないでちゅ!


 半日蒸された蟹は、動きを止め真っ赤になっている。


 さすがにレベル122でちゅ!暴走状態じゃなかったら、蒸しあがるまでに気づかれてたでちゅ!

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