第105話 大人を頼るばぶー。

 円状に花畑がある花園に着くと、多くの家族連れで笑顔があふれ暖かい時間が流れている。


 『ハーナ。ナーナ。二人が護った笑顔でちゅ。』


 ズドーンと大きな音がして、城の方から煙が立ち昇る、戻ってきた巨大ミイラが暴れ破壊している。

 花園に来ていた人々の笑顔は消え、避難を始める。


 「…。」

 (何してくれてるでちゅ?)


 「坊や!お母さんとはぐれたのかい?」

 振り向くと、牛獣人の青年が心配して声をかけてくれている。

 優しい目でちゅ。もしかしたら、ハーナやナーナの子孫かもしれないでちゅ。

 「今、探してあげるからね。」


 俺は首を横に振り、飛翔で飛び立ち、巨大ミイラに向かう。


 「うわ!坊や?!」


 ビュ!ビュ――ン!!


 『スキヤキ様。あれに向かうのは無謀です。中級魔族だと思われます。』

 『…。』


 巨大ミイラの頭に降り、ぺちぺちと叩く。

 『お前が、踏み潰している道。街路の木。すべて笑顔の為にみんなが作ったものでちゅ!踏みにじっていいものじゃないでちゅ!』

 ぺちぺち

 『聞いてるでちゅか?城や家だって、笑顔の為でちゅ!』


 巨大ミイラが右手を持ち上げ、自分の頭を張り倒す。

 ベチーン!


 巨大ミイラは、ぐらっと傾く。


 「ばぶ。」

 余裕で回避して空から、こいよ!のポーズをする。


 海に向かって、飛翔する。


 巨大ミイラは、真っ黒な蝙蝠の羽を生やして追ってくる。


 街からだいぶ離れた海の上。巨大ミイラと対峙たいじする。


 『お、ま、え、、許さな、い、、、握りつぶす。』

 『きれいごとは言い訳でちゅ・・・ただの憂さ晴らしでちゅ!』


 ジェリルの指輪に思いを込める。守りたい!守りたい!

 ≪意思疎通いしそつう≫『クラ――ケ―――――ン!!!』


 ゴゴゴゴゴゴゴ…


 巨大ミイラは、不穏な気配を感じ、当たりを見回す。


 ザバァバーーン!

 海から数百の触手が、巨大ミイラに向かってのびていく。


 「ヴガガガァァァァッァアッァァ!」

 上空に逃げようとするが、速度が出る前に、足に、手に、羽に、次々と触手が絡み付く。

 暴れても、暴れても、次々に襲いかかる触手に絡みつかれ、ザブーンと海に引きずり込まれる。最後に見えていた手も、海の底に消えていく。


 ザザー。ザザー。


 『ごめん。利用したでちゅ。』

 『いいよ。人の子。今は海に帰った子供の指輪。子供を愛してくれてありがとう。』


 ズザザッザブーン!

 すべての触手が海の底に帰っていき、波の音だけが残っている。


 ザザー。ザザー。


 『食事くらい行けばよかったでちゅ。』

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