第103話 プラムばぶー。A

 『スキヤキ様。この方角は果樹園の屋敷でしょうか?』

 『でちゅ。この目で確かめたいでちゅ。』


 ダンジョンから≪ウィンド≫で飛翔し、プラムの屋敷の庭に降りる。


 玄関で、入る勇気がわかず、右往左往していると、玄関が開きプラムが出てくる。


 「あら。赤ん坊みゃん。メイドの子供かしら。」


 プラムの若いころにそっくりで、プラムの100倍、可憐な女の子だ。


 「ばぶー。でちゅ。」

 (びっくりしたでちゅ。)


 「まぁ、よろしいですみゃん。少し赤ん坊にちなんだお話をしてあげますみゃん。このプラム子爵家の成り立ちには、偉大な赤ん坊の伝説がありますみゃん。ご先祖様は邪神に呪われた赤ん坊を助け、やがて大人になった赤ん坊は勇者となり共にリキーダの都を復興させますみゃん。勇者の名はスキヤキ。そして、そのスキヤキの名を持つことが許されているのは、我がプラム子爵家と南のバナナ子爵家ですみゃん。フフ。で、私がプラム子爵家当主。プラム・スキヤキですみゃん。」


 「でちゅ…。」

 (みんなが名前を受け継いでくれてるでちゅ…。)


 「ちなみに、ご先祖様の偉大な石碑は、向こうの丘の上にありますみゃん。」


 石碑?墓?


 ≪魔力操作≫≪身体強化≫高速ハイハイ!!

 シュババババ!


 「ちょ、ちょっとどこ行きますみゃん!!って、異常に速いみゃん!」


 岡の上には、大きな石碑があり、プラムらしい言葉が記されている。


---------------

 プラム8姉妹。ここで寝るにゃん。


 偉大なスキヤキの名を受け継ぎ、

 子孫のみんな笑って仲良くにゃん。

---------------


 「…」


 「ばぶ。」

 (ああ…。もう、いないんでちゅね。)

 赤ん坊の体では、とめどなく流れる悲しみを止めることができない。


 ぐすん。


 「う、うわーーーん!」

 (寂しいでちゅ!悲しいでちゅ!)


 「うわーーーん!わぁーーーん!」

 (こんなに悲しいのに!みんなは別れ際、笑顔を見せてくれたでちゅ!)


 「ヴわーーーん!ワぁぁーーーん!」

 (笑顔なんて無理でちゅ!最後になんて無理なこと言っちゃったでちゅ!)


 黒真珠のネックレスレンから、飛び出したライナが、そっと抱きしめてくれる。

 「あるじ様。ライナがいつまでもおそばにおります。」


 「ヴヴヴわーーーん!!!!!ワぁワぁワぁーーーん!!!」

 (ボンテージを着た人に慰められたくないでちゅ!)


 「あ、あるじさま?」おろおろ


 「ワぁぁーーーん!!!」

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