第89話 札とオレ。

 「今日は、ナイフに呪いが付加されています。そうですね。」

 ナイフをもち、呪詛感知に意識集中する。

 「手が痺れる呪いです。」

 「わかった。手が痺れるから、食べやすいものをと伝えておこう。」

 「クリプト王~。今日はポークソテーです~。」

 「ありがとう。しかし、そのマジックバックはどうなってるんのだ?中に人が入れて調理場まであるなんて…。」

 「分かりません。でも、大事な人からの大切な贈り物です。」


 「そうか。好奇心でつまらぬことを言った。忘れてくれ。」

 おーりぃとまーぃの愛はマジックバックの枠は超えるのでちゅ!


 「配膳のナイフを用意した奴は…、ちょっとナイフの匂いを嗅がせろ。あいつだな。」


 少しづつ、少しづつ、裏に潜む奴らを炙り出していく。


 50日が経過し、最後の札が切られる。

 「改善したように見せる呪いです。」

 「ふむ。明日行う土神殿の完成披露が舞台ってわけだな。近衛のみな。いままで隠していて済まなかった。不満であろうが、わしに力を貸してくれ。」

 「我が君が呪いを受けていたとは知らず…。近衛隊長ともあろうわしが、勇者たちをうとんじておりました。」

 「よい。我にも非がある。」


 クリプト王がぞう獣人の近衛のみなを見回す。


 「我が君。敵は!」

 「大臣パドキア。」


 近衛のみなは、静かに闘志を燃やす。


 次の日。

 土神殿の完成披露が土神殿の広間で淡々と進んでいく。

 最後に祭壇で、クリプト王が土神の杖をふり儀式は終了となる。ただ、杖は偽物にすり替わっており、心臓の止まる呪いがかかっている。

 「パドキア。世話になってる感謝の証に。最後の儀式を代わりに行ってくれ。」

 「何を申されます。王でないとダメに決まってるではないですか。」

 「本当のところは、体調がまだな。」

 「そんな、はずは・・・」

 「はずはない。改善したように見せる呪いをかけたからか?」

 「うぐっ!いつから?!」

 「周りを見ろ。」


 「やれやれ。取り押さえ終わったぞ。」

 さすがガリあん、素早いでちゅ!近衛のみんなも取り押さえてるでちゅ!


 「勇者たちがいなかったら、形勢は逆だったがな。」

 「はぁ?晩餐会で酒飲んでぶっ倒れ、毎晩、メイドにラーメンやら焼肉を注文する勇者がか?!」

 うぐっ。そこだけ、クローズアップしないでほしいでちゅ!

 「くっくっ。」

 あ!ガリあん、笑ってるでちゅ!自分だって、毎日、酒を頼んでだでちゅ!


 「おとなしく負けを認めろ。今までの功績で悪いようにはせん。」

 「ふざけるな!この国は俺のモノ!邪神に捧げる大事な国に土神殿など建てられてたまるか!」

 「パドキアよ。それがお前の本心か。」

 「は!勝ち誇ってるのも今のうちだ!切り札は、最後に切るもんだ!」


 広間に敷かれている絨毯のあちらこちらが焦げはじめ、不気味な魔方陣が完成する。

 黒いきりが吹き上がり、赤い光をはなつ魔方陣から、黒いゼリーの塊の魔族が現れ、死臭をまき散らす。

 「ゲへへ。ゲへへ。制約の召喚に応じりゅ。ゲへへ。」

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