第63話 帝王の力と俺。

 「恋って遠いいな。」

 「ごしゅじんは~恋以外が、へばりつく感じ~?」

 「わかるみゃー。スキヤキ様のアクセサリーと同じみゃー。」


 そんな取り留めない話をしながら、帝国の船で2日たち、海賊のアジトにやってきた。

 アジトは海にぽつーんと浮かぶ島で、渦潮に囲まれた天然の要塞であった。


 「さぁ!攻め込むわよ~!」

 「ちょ、ちょっと、お待ちを、海で散々追われてたのに、アジトには攻め込むんですか?」

 「ウフフ。きのこ人はね。土の上だと10倍強いのよ~。」


 ≪胞子浮雲ほうしうきぐも

 甲板にいる人が、雲の胞子に持ち上げられる。

 アンズには船で待機していてもらう。


 「それじゃ。野郎どもぉーー!いてこましたるぞ!」

 うわ!人が変わったでちゅ。


 アジトからくる魔法や矢を、風魔法やバリヤーで防ぎながら島に上陸する。


 ≪茸自動人形きのこゴーレム

 にょきにょきと茸がわきあがり、巨大な象になり、次々に海賊を蹴散らしていく。


 「俺たちも、ホワイト様を護衛しつつ加勢しよう!」

 「にょきにょきビビーン(念話が)。あるんだから、離れても平気よ~?」

 (うん。絶対に離れない。)


 「え~い。」「や~です~。」

 ハーナとナーナのかわいい声とは、対照的に海賊たちを盛大に吹き飛ばしながら、アジトの一番奥にたどり着く。


 「こんちくしょ~。おらの城になっただことするだ~!」

 魚人の親玉が吼える。

 「こーなっただ。おめーらも、道連れだ~!」


 あまい香りが漂う。

 「この匂い・・・アビスの実?」


 「邪神さま、おら以外の全てを捧げるから、たすけてくんろ~!」

 うわっ。最低でちゅ。


 地面に描かれた魔方陣が輝きだし、黒い靄が吹き上がり、海賊たちを次々に飲み込んでいく。

 魔方陣が赤い光に代わり、魔方陣から、大剣を軽々ともった黒い人型の魔族が現れ、死臭をまき散らす。

 魔族。この世界では、国や街を滅ぼすほどの力をもつ者。

 あまりの事にみんな動けない。


 ゆっくりと、当たりを見回している。

 「全然、足りんな。」


 ズバッ!

 「ぎぃやぁ~!!」

 親玉の足が斬り飛ばされる。

 「お前が生きている間・・・・・・、制約の召喚に応じてやろう。ヒヒヒ」


 「た、退却しろ!ホワイト様を!」

 近衛の尻をたたき、現実に引き戻す。


 「ん?お前は?お前は!!!!邪神様の最重要ターゲット!運がいい!運がいいぞ!」

 「こっちの運はどうかな。魔族って始めてみるけど?桁違の圧力だね。名前とかあるの?」

 (親玉の命がリミットでいいんだよね?嘘つかないよね?時間を稼げればいいけど・・・)

 「ヒヒヒ。われは下級魔族の殺戮魔人さつりくまじん。よろしく、そして…さよなら!」

 凄まじい速さで俺に飛びかかる!!!

 時間を稼げなかったでちゅ!

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