第44話 道化と俺。

 プラムが言う文献では、キャンプを移動するくらいの時間はあるでちゅ。

 落ち着いて行動するでちゅ。


 温泉庭園のスタッフにチップを大量に渡し、全ての人を、遺跡の見渡せるこの高台に集めてもらう。

 温泉庭園のマネージャーから、エンターテイメントショーの許可をもらい、拡声魔方陣を借りて高台に設置する。

 その際に、道化の子供衣装があったので、お借りする。


 「「レディース&ジェントルマン!!!」」

 「「これから、あなたの人生で死ぬまで自慢のできるエンターテイメントショーを行うことを~~お約束いたします!」」

 「「この機会を逃すと、次は~~ありません!」」

 「「ぜひ、この高台に、いらして~~く~~ださい!」」


 約300人。かなり無理に集まってもらったので、ブチ切れ寸前の人もいる。


 爆発があることが分っているので、私が手をあげたら伏せるというゲームを2、3回行う。

 多くの人がノリノリで付き合ってくれてるでちゅ。


 鼠獣人のおねーさんが、魔法の杖を構えて抗議をしてくる。

 「なにたくらんでるの?あんた悪?あんた悪?魔法ぶっぱなすよ?」

 「「ご安心を。」」

 (何この人、こわっ)

 にこやかに笑顔を返す。


 蟹人の土手っ腹のおっちゃんが抗議してくる。

 「まだか?この都のすべてを知るリキーダ伯爵のズワトル様に面白いものを見せると言って、嘘だったら、子供だろうと承知せんぞ!」

 「「はい。ご安心ください。」」

 この間も、俺の危険感知はアラートを出し続けている。


 危険でちゅ。危険でちゅ。


 俺の他にも、危険感知を持っているだろう人が、周りをキョロキョロして確認している。


 危険感知が、こんなにビンビンで何も起きないとは考えられないが、最悪何もなかったら、前世の知識の“土下座”をするでちゅ。

 「「再度確認です。みなさん、お揃いですね~~?」」

 「いいから、早くしろ!」

 蟹!黙れ!蟹!


 「「まずは、ここから見えます廃墟の上空をご覧くださ~~い。」」


 夕日が落ち暗い空を見上げ、ぽつりぽつりと何人かが、空に揺らぎ模様がでているのを認識する。

 そして、揺らぎは唐突に消えた。


 危険でちゅ!!!!!!


 え、もう、でちゅか?!

 手をあげ叫ぶ。

 「「伏せろ!!!!!!」」


 多くの人が伏せる。


 見上げていた空に引っ張り上げられた感覚の後、爆風が襲ってくる。

 「「「きゃぁーーーー!」」」

 「「「おぉっ!!」」」

 人々が悲鳴を上げる。


 瞬間。広大な遺跡は、ぽっかりと消え。一つの大きなクレーターになり、爆発の中心には禍々しい黒い球体が浮き、見るだけで恐怖を与えてくる。

 大きなクレーターに比べると、爆発が小さいのは、黒い球体に食われたのだろう。


 「「レディース&ジェントルマン!!!」」

 パニックにさせてはならないでちゅ。視線を集めるでちゅ。


 「「みなさんは幸運で~~す!このダンジョンパラドックスが前回起こったのは、数百年前になりま~~す!」」

 ゆっくりと、溜めてあたりを見回す。


 身分の高そうな人たちは、護衛からの耳打ちで、ゆっくりとその場から去り始める。


 「「ダンジョンパラドックスは、ダンジョンの生成現象で~~す。」」

 「「船着き場には、皆さんを全て乗せれるだけのカヌーを用意してありま~~す。」」


 「「みなさんの幸運は、まだ、ありま~~す!」」

 「「今から、1日、考える時間がありま~~す。」」

 「「リキーダは、一日後。」」


 ゆっくりと、溜めてあたりを見回す。


 「「ダンジョンに飲まれます。」」


 ざわ・・・ざわ・・・


 「「みなさんは幸運で~~す!ここから、避難するカヌーもあり、考える時間も、リキーダでみなさんが一番ありま~~す!」」

 人々がパニックにならないように、話しかけてくる人ひとりひとり落ち着いて対応し、温泉庭園のマネージャーやスタッフに避難を引き継ぐ。


 俺は冒険者ギルドへ向けて、高速水上ハイハイ(子供走り)で移動する。

 ≪身体強化≫≪魔力操作≫タタタタ!

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