第30話 土神の7年祭だよー。

 祭の3日前、2日前、1日前。


 そして、祭当日。


 一度も連絡がなく、内心めちゃくちゃ不安だ。

 グランの都は、活気に溢れている。どこもかしこも、笑い声が聞こえて、俺もまた祭を楽しんでいるフリをする。


 中央広場では屋台が並び、多くの人でごった返している。

 メーン通りではカラフルなゴーレム群のパレードが行われ、多くの人でごった返している。

 外れた路地でも、朝から飲んで騒いでの大盛り上がりだ。


 俺とマリーとオリビアとフラーは、祭のメイン会場である土神殿前にいる。


 「くっくくく。」

 「フラーさん。どうしたの?」

 「くっくくく。」

 「気味悪がって、周りの人が離れていってるわよ。」

 「くっくくく。土神殿の扉が開くと同時に俺たちの祭だ!」


 土神殿の扉が開きはじめると同時に何か魔道具を投げようとするが、いつの間にか隣にいたオオカミの獣人に拘束される。


 「な、なんだ?!お前!離せ!」

 「オレの名?ガリアムってんだ、グランの都の探索者ギルドマスターやってる。よろしくな。」

 「はぁ??」

 「そうそう、お前が接触したG邪神者どもは、拠点ごと潰したから。よろしくな。」

 「ちょ、ちょっっまて!数か所の拠点から100人以上・・・」

 「Gだしな。そのぐらいは頑張るさ。だから、この瞬間までお前を這わせてた。仕事とはいえ、家族とかいるからさ・・・祭にわいてんじゃねー!なめてんじゃねーぞ?!」


 「くそっ!こうなったら、小僧の魔方陣を!」


 しーーん。


 「魔方陣を!」


 しーーん。


 僕の前からゆらりゆらりと、2人の女性の姿が現れる。

 「ビックリしたか?カメレオン獣人の能力に説明はいらないよな?」

 「自前で消えることもできたのよ~。でも、魔方陣を解除するのに集中が必要だったのよ~。」

 「コーっぺ。作業しやすかったろ?」

 「クレアたんが貸しだって言うから喜んでたら、召喚テロの情報よ~。やんなっちゃう。魔導士ギルドマスターとしたら大きな借りよ~。」


 ぼくの頭にクレアの手が置かれる。

 「この数日、不安だったろ?よく頑張ったな!」

 「クレアたん、コーっぺ、ガリあんを信じるって決めたから!」


 クレアは気恥ずかしくなり、そっぽを向く。

 「スキヤキ。明日にでも冒険者ギルドにこいよ。今日は祭だ、楽しみな!」

 「はい!」


 疼く?


 疼く疼く疼く疼く疼く疼く疼く疼く疼く。

 (邪神の呪いが、強引にリンクを開こうと・・・)


 急激に増す、邪神の存在にカメレオン獣人のクレアと、みみずく翼人のコーデリアが俺から跳び退く。


 闇闇闇闇闇闇闇闇闇。

 (耐えろ!耐えろ!耐えろ!耐えろ!ここまでしてもらって!ぼくが失敗できるか!)


 精神の闇のなか、禍々しい何かが、俺を引きずり回し、叩き付け、握り潰す。

 (耐えろ!耐えろ!耐えろ!耐えろ!)


 土神殿が光りだす。

 土神殿の扉を抜けて、こぶし大の金の玉が僕の背を射ぬき胸から巨大な黒い右手が噴き出す。

 黒い手は、激しく悶絶し、徐々に石化していく。


 「・・・た、耐えたよ。」

 俺は、ニコリと笑って意識を・・・


 「スキヤキちゃん!」

 『しっかりするのじゃ!』


 ・・・手放した。

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