第26話 とてとてとてだよー。

 ベナムズの街を出発して半日、背丈の短い草が風にそよいでいる。

 「人影も周りにないし、荷車をしまっちゃうね。」

 旅におかしくない程度の荷物をリュックに移して、アイテムボックスに荷車ごと収納する。

 「道脇の木陰で、昼飯にしよう。」

 「うん。」


 食事中。

 「きいて!きいて!ぼくレベル12になってたんだよー。」

 「1歳で12は、すごいね。」

 『ほー。レベルの壁じゃな。』

 「レベルのかべー?」

 「レベルの壁っていうのはね。」


 レベル13になる条件は、恋をしたことがあること。

 レベル20になる条件は、大人の行為をしたことがあること。

 前世の知識があるので、大人の行為を聞いて困らせたりはしない、嫌われるだけだし。


 「まーぃ、好きだよー。だめ?」

 「ありがとー。」ぎゅー

 「でも、おねーちゃんみたいに身近すぎるとダメなのよ。幼馴染と結婚した友達がレベル13になるのに20歳にまでかかったの。」

 「そっかー。20まで、このまんまなんだね。」

 「最近、おませさんなんだから!」ぎゅぎゅー

 『恋するまで、気の源流を習得してみてはどうじゃ?』

 「きのげんりゅー?」

 「いわゆる、脳筋スキルよ。うぉーーー。ぱーんち。ってするのよ。」

 「わかった。なんとなく頑張るよー。あっ。もちろん、おーりぃ、好きー。」ぎゅー

 『その、あのじゃな。あのでなくてじゃな。』

 「オリビア様、慌てすぎ。」フフフ


 目の前の道を一人の旅人が通るとき、俺のことを見て。

 「ぷっ、やすー。・・・銅貨って」


 目の前の狸獣人に俺たちは構える。呪いがわかるのは、本人と呪いをかけた邪神の存在を内にもつ者だけ。


 「おーい!まてまて!」

 頭をかきながら、

 「抜けてる。抜けてる。」

 「「・・・」」

 「家族をなくしてな、それから」

 『邪神なんぞ、信仰するからそんなことになるのじゃ!』

 「うぉ?!なんだ、今の声!」


 「あっ、それは、この子の念話だよー。」

 「びっくりさせんなよ。ま、俺は急ぐからよ。そんじゃなー!」


 その夜。

 「おしっこ行ってくる。」

 「はーい。テントにいるから、何かあったら呼ぶのよ。」


 とてとてとて。

 俺は1歳になったころから、幼児歩きができる。


 甘い匂い・・・なんか、ぼぉーとしてくる。

 赤い実を握っているので食べる。

 もぐもぐ。

 「金貨1枚すんだぞ。銅貨1枚って・・・邪神様も面倒臭いこと言ってきやがる。」


 ぼぉー。 


 何してたんだっけ?あ!おしっこ。おしっこ。

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