第7話 野生でちゅ!

 目を覚ますと茂みの中で寝ていた。寝る前は確か・・・森の中を夜の間中走る赤いオオカミにしがみ続けた。

 今、そばには誰もいない。

 遠くで鳥や獣の鳴き声がしている。

 さ、寂しい。


 「ばぶー(捨てられちゃったでちゅか・・・拾われてもいないでちゅが・・・)」


 ガサッ、ガサガサ・・・


 (・・・あうあう)

 心拍数が跳ね上がった、茂みに入ってきたのは角の生えたウサギを咥えた赤いオオカミだった。

 さぁ、食べろ!と言わんばかりにウサギを差し出してきた。


 「だー(むりでちゅ)」


 壁ハイハイを使ってオオカミの腹にしがみつくと、オオカミはハッっと気が付いたのか、寝そべり腹を差し出してきた。

 乳房をすうと出はよくないが、体の隅々まで力が流れるのがわかった。


 オオカミに名前をつけてあげることにした。

 赤いので、赤飯、アカママと呼ぶことにした。

 ただ、「だー」しか喋れないのだけど、いつか喋れるのかな?


 その日からの俺は、アカママにべったりだった。

 アカママは、生きるのに必要なことを少しづつ教えてくれた。

 草をハムハムしていたので、試しにハムハムしてみたらHPが少し回復したり、

 川辺は危険なこと、獣の足跡やふんによる追跡。


 「だー(猪のフンだ。まだ新しいよ)」


 しばらく、においの痕をたどると、巨大な猪がいた。


 アカママは茂みから素早く喉仏に噛み付くが、肉が厚く噛み切れず暴れる猪を組み伏せずにいた。

 俺は、猪の横から高速ハイハイで一気に近づく。


 ≪ドレイン≫


 大きな動物を吸収するほどの力はないが、アカママが組み伏せ、喉仏を噛みちぎるくらいの隙を作るのには十分だった。


 その夜は満月で、アカママと一緒に遠吠えをした。


 「わぉぉおおおおおおーーーーん!」

 「ば、ぶーーーーーー!」


 ん?なんか違くね?でも、寂しさは忘れてしまった。

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