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「お見合いの彼じゃなくても、って思っちゃうんですよね、つい。ふふ」

 ふわりと微笑んだマリさんの顔は、いつもと同じだった。なぜかその顔を見て少しホッとしている自分がいた。

「この歳になって笑われるかもしれませんけど。初恋の人が忘れられなくて。彼以上に好きな人が出来るまでは、結婚はしたくないんです」

 照れを隠す様に笑った。可笑しくない、全然。

「笑いませんよ。とても素敵です」

「ふふ。両親には絶対言えないけど、マスターならそう言ってくれると思った。ありがとうございます」

「とんでもない」

 本当に素敵だな、と思ったから。それを貫き通すにはきっと辛いことや苦しいことがあったはずだ。それでも一心に前を向く姿は、心から素敵だと思った。

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