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「お見合いですか」

「そう、それでね、困っているんです」

「困っている? すでにマリさんにはお相手がいらっしゃるとか?」

「んー、それはないんですけど」

「ないんですか」

 それなら、なぜ?

「実は既に先方とは一度会っていまして」

「ほうほう」

「とてもいいお家の人で、気さくで、素敵な方だったんです」

「へぇ」

「けど」

「けど?」

「どうにか断る上手い理由がないかなって」

「え、断る!? 良い人なのに!?」

 驚いてそう言うと、マリさんは困ったように笑って頭を掻いた。

「実はこのお見合い、うちの親がお相手にお願いしたんですよね」

「マリさんのご両親が、ですか」

 今どき見合いなんて珍しいとは思ったが、もしかしてマリさんは良いとこのご令嬢、だったりするのかも?

「もういい年なんだから、落ち着きなさいって言うんです」

「いい年、と言ってもマリさんまだまだお若いじゃないですか」

 多分、まだ二十代前半のはず。っていうか、それくらいにしか見えないし。

「いやいやいやいやいや」

 勢いよく首を左右に振るとマリさんは「私、マスターより年上ですから」と言葉を零した。

 え? 今なんて言った?

「またまた、そんなこと」

「いやいや、本当ですって。私こんなでも三十超えてますから」

「えーっ・・・」

 つい、大きな声が出てしまって急いで手で口を塞いだ。まさかそんな、嘘だ。どう見たって二十代前半!!!

「もうアラサーとも呼べない年齢ですし」

「う・・・お、わかいですね」

「もともと童顔ですから」

 ふぅ、と大きく息を吐いてからマリさんはグラスを傾けた。そう言われると、たまに凄く大人びた発言をするなぁとは思っていたがまさか本当に“大人”だったとは・・・。女性って怖い。

「そろそろ結婚しないといけないとは思っているんです。子供を産むにしたってリミットは必ずありますからね。でも今の仕事は楽しいしなぁって。それに・・・」

「それに?」

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