みらいプラン

カゲトモ

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 スッと目の前にグラスを滑らせると、流れるような手つきでそれを受け取ったのは、常連のマリさんだ。

 ふわふわの長い髪にはベレー帽。マスタード色のカーディガンには花の刺繍が入り、秋色を感じさせる。カジュアルで世間で言う山ガールなファッションのマリさんは少しだけ店内で浮いていた。

明らかに一人だけ纏っている雰囲気が違う。俺の店は堅苦しい店ではなく、もちろん普段着で気軽に一杯飲んで行ってもらえるような、どちらかと言うとオープンな店だとは思うし、そうしたいとも思っている。実際色んなお客に来てもらえているし、女性一人って言うのも珍しくはない。

ではなぜマリさんが店内で浮いているのか。それは、見た目がとても可愛らしすぎるからだ!(独断と偏見)あと凄く若い。

「マスター、ちょっと聞いてくれます?」

「もちろん、何でもお聞きしますとも」

 マリさんは珍しく浮かない顔をして言った。いつもは一人静かに、まるで図書館で本でも読んでいるみたいに酒を飲んで、たまに俺と世間話したりしてくれている。アパレルのショップ店員だけあって話のテンポも良いし話しも面白い、見習いたいと思うくらいに。

 それなのに今日は笑い声ではなく、ため息を零している。

「どうしました? 何かありましたか?」

 年若い女性でも変わらず悩みは多くあるのだろう、一体どうした?

「実はですね」

「はい」

「私にお見合いの話が来ていまして」

「え」

 お見合い? こんな若いのに? それでどうして悩むことが?

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