第33話 信長じゃない野望じゃない

m(_ _)m



 エ、今日もおはこび、ありがとうございます。



 こないだ、「信長の忍び」って漫画を読みまして。

 正直最初は、「また信長かよ」って思ったねぇ。



 だってヨ? 信長、あっちこっちで描かれすぎじゃねぇか? 女体化したり、現世で総理大臣になったり、信長二人で協奏したり。好かれすぎでしょうに、信長。

 そのうち、「101人信長大興奮!」みたいな話を、イ○バ物置がCMにしそうな程にサ?



「100人乗っても大丈夫。も1人もひとり乗ったら天下布武」



 ってな具合にナ? ……ってまた、イ○バ物置の話をしちまった。アタシどんだけ物置が好きなんだかねぇ。



「信長の忍び」、面白えんだよ。マルヤマの城下町で、白泉城の話をすんのも、どうかと思うけどサ。

 信長の人生を、四コマ漫画で、何度も何度もオチつけながら、楽しく紡いで行くんだよ。いや、なかなか出来ない芸当ですわな本当に。



 マ、だからアタシもこうして、風呂に入って酒を飲み、フーって落ち着いてから、オチつけながら、毎度のはなしをしてんだけどな? 雪車夜のおいちゃん達の噺をサ?



 要は、勉強させて頂いたんですナ。ありがとうございます。



m(_ _)m



 ってぇわけで。



 雪車夜のおいちゃんは、試験とかれこれ14年戦い、過去と戦い、現実と戦い、それでようやくサ? 自由に動ける手足を持って、前を向いた。



 出来の良い親戚どもの呪縛なんぞ、重力よろしく振り切って、宇宙に出るってぇと、眼の前には広大な未知の世界だ。



 汎銀河じゃ、おいちゃんはまだまだひよっ子。出張先で酔いつぶれ、ゲーゲー吐きながら、宇宙人に介抱してもらって、まぁ、快方へ向かったんだな。



 愚痴も吐いて、解放してもらった。



 その宇宙人。『ユーユー星』の、ユーユー星人らしい。

 見た目は地球人と大して変わらないんだが、とにかく一日中寝っ転がって、文章書いたり、絵を描いたり、曲作ったりね。文化を生み出そうとしてる。生活そのものは、勝手に上手くお膳立てしてもらえるらしくてさ?



 顔に余裕が出てんだな。



 いいねぇ。羨ましいねぇ。悠々自適な、理想の暮らしじゃねぇか。



 おいちゃんは、その宇宙人から、いろいろ教えて貰った。

 さっぱりワケのわからん、謎の概念やらを、テレパシー的な何かで注入されたりな?



 ユーユー星じゃ、『KAIVAPカイバップ』ってとこで、記憶を司る海馬をスリム化するのが流行ってるらしい。



 脳が発達しすぎててヨ? 「オヌシ、デジカメのCMOSセンサでござるか!」「幼女を記憶したくないでござる!」ってわけのわからんツッコミが入るぐらい、とにかく無尽蔵に情報を吸収しすぎて、記憶を捨てるのに困ってんだとさ。



 いわゆる、幼女記憶の単純所持ってやつだねぇ。



 だから、記憶のダイエットが大流行り。

「結果的にOMIT省略する」ってキャッチフレーズの、KAIVAPカイバップな。



 そんなユーユー星人がさ。驚いたんだよ。



地球テラ! ユー、文化遺産から来たのかい! ソリャ雪車夜凄い!』



 なんでも、地球は文化遺産扱いなんだそうな。

 ユーユー星人は、暮らしが悠々自適すぎて、喜怒哀楽の、特にサ? 怒と哀とが表現出来ないんだそうで。



 ってなると、まぁ、作った物語も、味が薄くなるわなぁ。



 情報もサ? 自分に有益かどうかが、情報がまとってるオーラで分かる。地球人からすると、羨ましい感覚器を持ってんだな。だから書評要らず。小説でも漫画でも音楽でも、ハズレを引かねぇってんだ。いいねぇ。



 そんな彼ら……って、言って良いのかな? そいつらからすると、地球は文化遺産なんだと。昔ながらのローテク使って、彩り豊かな創作物を生み出すんだから。苦味とか、刺激の強えやつとかもな。だから『文化』って意味でのアートは賞賛される。



 一方、『技術』って意味でのアートの方は、地球なんぞ、子供か赤ん坊ってとこ。

 汎銀河の、一般的な星からしたら、なーんら脅威も感じねぇ。



 ってなわでな? 地球はサ?

 汎銀河から、文化遺産として保護されてんだとサ。



 ま、そんな状態で、やぶ先生んとこの秋葉事務所は挑んでる。

 過去の地球に潜ってサ? 「この凄えのは、宇宙の技術じゃなくて、地球で実現出来んだぞ!」ってのに躍起になって、覇を唱えて戦ってんだな。



 マ、戦国時代の、領土争いみたいなもんで。



 明らかに自分より強え、『宇宙の技術』っていう領土を、切れ者の藪先生は、地球の領土として、広げようとしてんだな。それこそ信長みたいにサ?



 相手は汎銀河だ

 かつて『マムシ』と恐れられた戦国武将、斎藤道三をサ? クローン技術で20万人ぐらいまで増やして、イ○バ物置……げふんげふん、稲葉山城に結集させたよりも、はるかに強い。って、この例えで分かってもらえるかねェ。20万人乗っても大丈夫じゃねぇんだよ。



 要は、ありが山に喧嘩を売るようなもんだ。



 いや、あの切れ者のやぶ先生ならやるかもしれねぇ。「嫁の依子を、俺から奪ったあいつなら」って、な。



 ただね?


 

 雪車夜のおいちゃんは、知っちまったんだ。



 地球の技術を守るための、地球シミュレータ自体が、アウターアートなんだとよ。


 

 皮肉なもんだねぇ。

 戦いを挑んだ相手に、守られてんだよ。



 介抱解放してくれたユーユー星人の居るユーユー星に限らず、雪車夜のおいちゃんは、銀河のあちこちを旅して回った。ヒッチハイカーみたいなもんだな? 銀河のサ? とにかく見聞を広めてぇって、いろんなトコに首突っ込んでみると、地球とは違う価値観が、沢山入って来るわけだ。



 結婚制度どころか、性別自体が無い星だとか。

 性別が、ドイツ語の格変化みたいに多種多様な星だとか。

 三半規管が発達して、四半規管になって時空方向を感知できる宇宙人だとか。

 机上の空論クーロン力が、重力よりも強い星だとか。



 アレ? クーロン力って、荷電粒子同士に働く力で、引力だったり斥力だったりするんだよなァ?



 当然、その星々で、求められるモノも違う。



 あ。そうか。

 ってことはだよ?



「技術で銀河に先んじる必要、そもそも無ぇな」

 と、おいちゃんは、こうなった。



 あのサ? 地球には、「タイムマシン経営」って言葉があるらしいですな? 


 

 自分とこより進んだ国のビジネスモデルを、自国に持ってきて展開すりゃ、タイムマシンで未来に行ったかのように、成功できるって寸法だ。



 ならさ? 



「逆タイムマシン経営」

 だって、出来んじゃねぇか? 



 要は、相手が求めるモノを、持ってきゃいいんだから。

 何がどこで役立つかなんて、出会ってみないとわからない。



 飽きない商いだ。



 それをやるのに必要なのは……ア、そう。柔らかいアイデア。

 未来みくさんのパイみたいな……おおっと、またも誰か来たようだ。



 クリエイターの皆さんが、持ってるような。



 いいんだよ、欲をどんどん爆発させても。それで新しいモノを作る。欲しいから作んだよ。地球は、そんなみなさんの力で出来てんだ。



 『ヒトの造りしモノ』ってやつだな。



 だから法律だって、アイデア自体は独占させない。特許法でも著作でも。



 アイデアがアイデアを生むんだからサ?

 何かを生み出すクリエイターは、単なる『寄生獣』じゃねぇんだよナ。



 酵素ってさ?

 化学反応を起こさせるモンのことだろ?



 なら、宗谷雪車夜そうや・そりゃ。俺がガンダムだ。



 って違うかハハハ。酵素酵素。雪車夜そりゃ酵素。



 クリエイターに世界を見せて、化学反応で、今までに無いモノを生み出すことができたら、限りなく広がる銀河の、そこが先端。エッジだね。



  キャー地球テラさんのエッジ! バシャバシャ!



「どこまで行っても、新しいことが待ってんだ。こんな楽しい事は無い」

 そんな、子供みたいな目ぇした雪車夜のおいちゃんは、宇宙に出ていく。



 おいちゃんの「野望」……っていうかサ?



 小説家も、画家も、漫画家も、作曲家も、技術者も、共通して持ってるモンと、はぁ、同じだね?



 好奇心。



 人は、好奇心で生きてんだ。



 ……あれま。信長じゃなくて秀吉みたいになっちまったねェ。



 つかんだヒッチした配下ハイカーは、石田三成みつなり



m(_ _)m

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