第25話 シュミレータ
m(_ _)m
エ、今日もおはこび、ありがとうございます。
「世間は狭い」って言葉がありますが、狭いはずの世間は、ビッグバン以来、膨張し続けているそうで。光の届かない領域まで?
そう考えると、ここでいう「世間」ってぇのは結局、身の周りの、自分に見えるモンの事じゃねえのか? とか思っちまいます。
いや、実際には世界は広い。でも、行動範囲は所詮、人間の動ける範囲だ。
人の動きも、欲やらルールやらで、一定パターンに収束する。
そうするってーと……やっぱり狭いのかもしれませんな。
だってサ?
瀬田OA鑑定事務所を襲った、「ウチとはまったく逆の鑑定書」はサ?
なんとなんと! 秋葉原の
うんうん、世間は狭いねえ。
今日も今日とて瀬田所長はお風呂行き。
もうコノ人、お風呂に住んでんじゃねえかって言いたくなるような頻度だなァ。
ただサ? 所長がもしもこの場に居たら、まちがいなく額にこう、血管浮き出させてサ?
「藪んとこの鑑定をぶっ潰せ! どんだけリソースかけてもいいから、ヨジゲンの特許を拒絶に導いて、藪の信用を失墜させちまえ!」
って、わめき立てるに決まってる。いやさ、鑑定に、そんなに恣意をぶっこんだらマズイだろ……ってぐらいにサ?
所長のパートナーでもある
ま、そんなワケで、「所長が風呂から帰ってくる前に、もう動いちまおう」って事になった。
瀬田所長はおそらく、半日は戻ってこないだろう。
おいちゃんの言によると、瀬田所長が風呂に行くときゃ、大抵は雑誌を何冊か買い込んで、お湯につけてグシャグシャにしながら読んでるらしい。
湯当たりする直前まで茹であがってから、冷水風呂で、つけ麺みたいにキュッと締め、脱衣所に上がり、ヒヤッとしたつめたぁーい牛乳を飲んでボーッと風にあたる。そしてまた湯につかりに行く。
それを数回繰り返し。いつもの、瀬田所長のパターンはそうらしい。
所長がどこぞの風呂で茹で所長になってる間に、藪さんとこからきた鑑定書を、みんなで確認するとサ?
『地球シミュレータの使用により、当該物資と同等の効果を有する物質を製造することができた。したがって、アウターアートを混入せずとも、当該物質の入手は不可能では無い』
って書いてある。
「地球シュミレータ!?」
未来さんが素っ頓狂な声を上げたね。
「シミュレータですね」
存在センセが真面目に訂正する。
「さすが、藪さんとこは、金回りがいいね。豪気だねぇ」
雪車夜のおいちゃんは、感心することしきりだ。
「なんです? それ」
至は純粋に知らない。
「至くん。進歩性については勉強した? 初級ゼミで」
と、おいちゃんだ。
「はい。ちょっと前に」
「うん。なら、存在センセと一緒にダイブしたら? 地球シミュレータ。進歩性判断の切り札にさ?」
「ダイ……ブ? はい?」
「雪車夜せんs……さん。シミュレータの利用は金がかかるから控えるようにって、いつも所長が……」
「カタいこと言うなよぉー存在センセ。敵が藪さんとこなら、瀬田所長はいくらでも金出すって。あいつ、昔からそうだからさ」
「ううむ……」
「おいちゃん! 存在先生! あたしもあたしも!」
「はいはい。もちろん、行くなら宗谷さんも連れて行きますよ? ちょっとしたバーチャル社会見学みたいな感じになりますかね」
ってな具合でサ?
存在センセの引率で、未来と至は、地球シミュレータにダイブすることになった。
マ、二人にとっちゃ、狭い世間が、少し広がるかもしれんわな。
ぱぱっと支度を整えて、みんなで事務所を出ようとしたんだが。
「あれ? おいちゃんは行かないの?」
そしたら雪車夜のおいちゃん、棚から徳利取り出して、本格的に飲み始めるみたいでヨ?
「ん? ああ。俺はやめとく。酒も入ってるし。それに……」
「……
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