幕間 グレイ事件(上)

m(_ _)m



 エ、どうも。おはこびありがとうございます。



 酒飲みすぎて、頭が痛ぇんです。 

 どうも、調子に乗って飲んじまうからいけない。



 ってなわけで、今日は軽い噺にしましょうかねぇ。すいませんねぇ。



 ウー、さて。終電過ぎるまで飲んで、草木も眠るうし三つ時だ。今でいう、夜中の2時ぐらい。



「若気くんも、タクシーで帰りなよ。つきあわせたのは俺だし、金は出すからさ」

 と、雪車夜おいちゃんが言い出した。



「ありがとうございます。でも、始発まで2、3時間ですし、ちょっと、夜中の散策もいいかなぁとも思ってまして」



「そう? それでもいいけど……路上で寝たりしないでね? 未来みくの先生に凍死されちゃ、困るしさ」

「えっ? 僕の方が、未来先輩から教わってる側ですが……」



「知識についてはそうかもね? でもさ。教える側に回った方が、相手から学ぶことって、実は多いんだよ」

「そうなんですか?」



「そうなの。将来、うちの事務所を継ぐかもしれないあの子にゃ、いい経験積ませてもらってるんだよ。まぁ、今後ともよろしく」

 そう言って差し出された、雪車夜先生の手は乾いててな。



 まぁ、これから試験に挑み始めようっていう至にゃ、実際には遠い手なんだが、この時はゼロ距離になるわけだ。物理的にサ。



「すぐに超えてやるさ」

 雪車夜先生の乗ったタクシーを見送って、若気の至りを発散するように、中野の駅前アーケードを歩いた。



 そしたら、だ。



「あれ?」 

 いつもは暗くなってるはずのショッピングモール、『中野ミルキーウェイ』に、煌々こうこうと明かりがついてたんだな。



 おかしいなぁと、その入口を見やるってーと、ドンッ! 至の背中に衝撃が走った。


 このアーケードの道を背骨に見立てると、肋骨に相当するわき道から、何かが走ってきて、ぶつかったみたいだな。


「おうふっ! ひゃあっ!」

 夜中に突然、この衝撃は、そりゃあ肝が冷える。奇声をあげて至はよろけた。

 

 どででででで!

 そのまま走り去る影。

 目で追う。

 灰色の体に、つんつる頭。

 ちびっこいやつだ。

 一瞬だけ振り返った小型のそいつ。

 目はぱっちりしてた。


 ……ってか、空洞? 深淵?

 そんな感じのな。


(グレイ型の宇宙人……?)

 そのグレイさん(?)は、また踵を返した。

 中野ミルキーウェイの中に、走って消えた。


(まんだらけの前に、展示してる人形……? ではないよなぁ) 

 よろよろと歩を進めるってーと。


 どどどど

 どかどか

 どどどど


 とな?

 後ろから。

 大勢の足音が。

 急速に近づいてくる。

 こんな夜中にだぞ?

 いよいよ、尋常じゃない。


 思わず振り返る。

 狭いアーケードを埋め尽くすみたいに。

 黒服グラサンの集団だ。

 こっちに向かってかけて来る!


「おわわっ!」

 思わず飛び退いた至。

 バランス崩した。

 尻もちをついた。

 いてて。


 グラサン背広の集団は猛ダッシュ。

 グレイ(?)の後を追うように。

 中野ミルキーウェイに。

 吸い込まれてった。




「な、何があったんだ……宇宙人を捕まえに来た、とか……?」




 おっ!

 若いのに、至は知ってたねぇ。



 はるか昔に、そんな話が確かにあった。捕まったグレイ型宇宙人が、エリア51でウンタラカンタラで、UFO研究家がホンホンホニャララで、教授がプラズマで全てを説明しようとしてナントカカントカまでが、ワンセットだった、アレな?



 一応立ち上がって、至がぼーっとしてるとな? また出てきたんだよ。


 グレイ型宇宙人(?)が。

 中野ミルキーウェイから。

 出てきた。

 小走りで。

 しきりに後ろを振り返りながらな?

 

 そしてやっぱり。

 その後ろにゃ。

 黒服の集団。



「なんなんだこいつら!」

 至は、思わず言ったね。



 騒々しい集団は、アーケードの途中で曲がって行った。特許庁が入った、「中野サンプラザ中野」とは反対方向。食べ物屋の多い、路地の奥へとな。


 おいおい。一体、何か起こっているんだろうなぁ……。



 ……ってとこで、すんません。ちょっとお手洗い行ってくる。酒飲み過ぎなんだよな。



 すぐ戻ってくるから、手の生命線でも眺めててよ。ユーチューブとかでもいいよ。



m(_ _)m

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