第01話 アイデアは金になる

m(_ _)m



 エ、おはこびありがとうございます。



 ちょっと長い名前になるんですが、銀河には、宇宙知的所有権機関うちゅうちてきしょゆうきかんという団体があります。



 いやね? 怪しい団体じゃございませんよ?

 東京特許許可局でもありませんよ?

 知的財産を扱う、おっきな組織です。



 どの位大きいかと申しますと、東京ドームではァ……とてもとても表現しきれないほど。



 いや、「地球何個分」……なんてのも難しいですな。とにかく大きい。



 英語でいうと、えー、Universal Intellectual Property Organization。略称UIPOウイポ。どうです? アタシの英語の発音も、なかなかのもんでしょ? なんども稽古してますからねぇ。



 知的財産ってのは、要は、考えたものがお金になる、財産になるってわけで。「それ、俺の特許でい。勝手に真似なんかさせるかい!」って感じの、了見の狭い、業突張ごうつくばりの話ですわな。



 思いつきが財産になる。まるで、無から有が生まれるように。まるで『錬金術』だねぇ。アイデア1つで金持ちになれるかも知れねえってんで、地球の頭の良い連中がこれに飛びついた。



 ところがどっこい、宇宙は広い。


 

 宇宙人との最初の接触、『ファーストコンタクト』があったのは、実ぁ、かなり昔の話でして。とっくのとうに、あまねく宇宙のあっちこっちに、知的財産はポコポコと生まれていたわけです。それこそ、地球人が猿だった頃より、ずっと前から。



 文明の進んだ星と、遅れた星とが、この銀河系だけでも、てんでバラバラだ。

 例えて言やぁ、道をふらーっと歩いていたら、向こうから、飛脚とアリンコと、ドローンと大八車と、バトルシップが、同時に飛び出してくるようなもんです。もう、混沌が這い寄るどころじゃないねぇ。



 ちゅうわけで、そのへんの混沌を上手いこと交通整理しようと、UIPOが出来た。



 正式名称、

「全宇宙的な知的財産権の保護を促進することを目的とする、宇宙連合の専門機関UIPO」ってんだ。いやぁ長ぇ名前だねえ。まるで落語の、じゅげむじゅげむだ。



 おとめ座銀河団の惑星ジュネーヴに本部があって、加盟する銀河フィラメントは184。いやよいやよも……ってな。事務局長はoeiurep・oiepur……アタシにゃぁ、ちゃんと発音できません。



 さあそのUIPOに、若い兄ちゃんがやって来た。

「ここが、《アート》の中心なんですね……」とか言いながら、地球の東京、中野から。

 この兄ちゃん。名を若気至わかき・いたるってんで。社会人になったばかりで、未だに学生気分が抜け切らねえっていうか。



 アー、ま、それも人情だわな。

 若気の至は未だに、別れた彼女を引きずってた。気持ちが、過去に残ってんだな。世の中諸行無常だってえのに。ま、そんなもんだって。



 至の連れは、同じ事務所の先輩女性、未来みくさんと、そのおいちゃんだ。おいちゃんはツアコン係。



 でもって未来さんは、笑い声やら仕草やらが、至の別れた彼女に激似だってんだから、そりゃ、至は前には進めないわな。



 ……ほれみろ。未来さんは、おみやげ屋にあちこち首を突っ込んでは、キャッキャと飛び跳ねてる。この惑星に来たばかりだってぇのに。



 あの発明を、宇宙規模で独占しに来たんだよな。中野から。



 エット、「酸素雰囲気下において所定の時間が経過した後に物質透過性を失う材料によって4次元球を構築し、前記所定の時間が経過する前に該4次元球を膨張させた事を特徴とする、マイクロダイソン球」?



 ア、こりゃ本当に、じゅげむじゅげむだ。



m(_ _)m

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