第02話 中野サンプラザ中野

m(_ _)m



 エ、今日もいっぱいのおはこび、ありがとうございます。



 宇宙時代だからって、いきなり銀河の話から始めちゃだめだよ。それじゃ地に足がつかねえってもんだ。無重力だからってな。「誰が対象なんでい?」って感じでサ。



 地球の話、しようかねぇ。

 ウー、宇宙人の存在が知られる、ズーっと前から、地球にも、知的財産を扱う所があった。「特許庁」ってんだ。



 しかしなあ。特許だけじゃなくて、意匠も商標も、実用新案も扱うってのに、「特許」庁。おかしいと思わないかい? 特許実案意匠商標庁って言うべきだ……。って、じゅげむじゅげむは、こないだ話したっけなァ。



 霞が関の、お役所がでーんと固まったあたりに、特許庁は昔あった。権利が欲しいと出された金を、こぞって投入したのかどうかは知らんが、立派なビルを建てていた。それがサ? 宇宙人と出会った今じゃ、銀河の中の、しがない末端組織。太陽系地球支部の、東京分室ってな感じかね。



 ア、場所も揉めたよ? 引っ越しするのしないのってな。



「人の作りしものは技術アートだ」ってんで、家電の雄、秋葉原が名乗りをあげた。しかしあそこぁ、萌えの街。背広来た偉いセンセ方は、入りづれえやな。



「美術こそが芸術アートだ」ってんで、上野も頑張ったねぇ。ただ、その頃パンダが生まれてな。興味がゼーンブ、そっちに行っちまった。



「文化……」ってんで、京都も名乗りをあげたが、どうにも奥歯にモノが挟まったような言い方で。「ぶぶ漬けいかかどす?」が、「とっとと帰れ」の意味だなんて、田舎モンにはわからんわな。ハッキリ言わないもんだから、特許庁じゃなくて、文化庁だけ移転しちまった。



 そんなこんなで、移転するのしないの。結局場所は、中野に決まった。

 中野にゃ漫画ショップの「まんだらけ」がある。その中に入った曼荼羅まんだらは、要は仏の悟った境地だ。その境地に備わる功徳くどくを、色あざやかに描いた絵図だってんで、曼荼羅だらけの中野こそが、人の知アートを扱うに相応しい。とまぁ、こうなったわけだ。だったら秋葉原でもいいじゃねえか。秋葉原にも、あるだろ? まんだらけ。



 ンー、中野には昔、「中野サンプラザ」ってビルがあってな? ア、歌手の方じゃなくてね? そのビルの背中には、斜面があった。普通、ビルは四角だってのに。



 そのな。小学生が、思わず駆け上がりたくなっちまいそうな斜面を、銀河へ飛び出す宇宙船の、「発射台」にしようってんで、大改装が行われたんだな。権利が欲しいという奴らの、出願手数料を使ってやった。



 結果、今の中野の北側の、ちょいと西にゃ、でっかい斜面を背中にしょった、おっきなビルがまた出来た。名前も変わって「中野サンプラザ中野」ってな。そこに、今の特許庁がある。発明が特許になるかならないか、白黒つけてくれる場所だわな。



 でっかい斜面はカタパルト。資料やら、発明の見本品サンプルやらを載せた宇宙船が、どしゅうどしゅうと駆け上がり、銀河へ向かって飛んでいくわけだ。まっすぐじゃなくて斜めにな。まるで攻撃ロケットみたいなもんだが、案外それであってるかもしれない。


 

 だってヨ? 積んだ発明品の中にゃ、地球の技術じゃ絶対に作れない地球外技術、アウターアートが、混じってるってぇんだから。うへぇ! おっかねえおっかねえ。汎銀河連邦の末席に連なるこの地球じゃ、アウターアートは超技術。「オーパーツ」って言っても良いかもしれんわな。



 そんなアウターアートを選り分ける、ひよこ鑑定士みたいな仕事もあってサ? フツーの地球人が、惚れた腫れたなんぞをやりながら、アートを守って戦ってる。まあ、「勝ち目の薄い戦い」ってやつだけどなァ……。



 しかし……「中野サンプラザ中野」か。

 これがオセロだったら、へへへ。「中野中野中野」になるわなぁ。

 中野が白で、サンプラザが黒かねぇ?



 ま、特許になるかどうかを、白黒つけるんだけどナ?



m(_ _)m

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