並列兵士 ツインエッジ

北方、即応旅団戦闘団

「私（わたし）はホレイシオ。中将（ちゅうじょう）だ。よろしく頼（たの）む」

　がっちりとした男性がまとうのは、紺色（こんいろ）の上着に同色（どうしょく）のネクタイ。施（ほどこ）された装飾（そうしょく）は黄色（きいろ）。パンツは濃（こ）い青色（あおいろ）。

　灰色（はいいろ）の室内（しつない）の北側。横一列でならんだ四人の前に立っている。

「本来（ほんらい）なら、このような任務（にんむ）に、若者（わかもの）を駆（か）り出（だ）すべきではないのだが」

　中年男性（ちゅうねんだんせい）が次の言葉（ことば）を発（はっ）するまえに、ライラが口を開く。

「わたしが、状況（じょうきょう）の説明（せつめい）をいたしましょうか？」

「助かる。ライラはよく通（とお）る声（こえ）で、羨（うらや）ましい限（かぎ）りだ」

　渋（しぶ）い声（こえ）のホレイシオ将軍（しょうぐん）が手招（てまね）きして、ライラが前に出る。隣（となり）に立って三人のほうを向いた。

「ニューヨーク市（し）は壊滅（かいめつ）しました」

「人口がゼロになった、って言ってくれ」

「では、そう訂正（ていせい）します」

　険（けわ）しい表情（ひょうじょう）で口をはさむグレンに、ライラが即座（そくざ）に返事（へんじ）をした。話を続（つづ）ける。

　隣（となり）に立つイリヤは、すこし困ったような顔で微笑（ほほえ）んでいる。

　銀色（ぎんいろ）の円盤（えんばん）は、街（まち）の上から姿（すがた）を消していた。のこされた銅色（どういろ）のロボットは、推計（すいけい）、１万体（まんたい）。コードネームは、ドウ。

　対（たい）して、銀色（ぎんいろ）のロボットは１体。コードネームは、ギン。

　ドウもギンも、無人（むじん）になった街（まち）から外へ出ていない。偏（かたよ）ることなく整列（せいれつ）していた。

　市（し）の西側。セントラル・パークに２つの装置（そうち）が残されている。

「応戦（おうせん）した部隊（ぶたい）からの情報（じょうほう）で、白（しろ）い装置（そうち）を使い、人間を消滅（しょうめつ）させていることが確定（かくてい）」

「先輩（せんぱい）たちのカタキ！」

　胸（むね）の前で右手を握（にぎ）りしめたグレン。左手でがっしりと包（つつ）み込（こ）んだ。

　現場（げんば）に居合（いあ）わせた部隊（ぶたい）はドウと戦（たたか）い、ほぼ全滅（ぜんめつ）。銃器（じゅうき）が通用（つうよう）しない装甲（そうこう）に、なすすべがなかった。

　将軍（しょうぐん）は何も言わない。穏（おだ）やかな表情（ひょうじょう）のまま。

　エリカが眉（まゆ）をひそめる。

「黙（だま）って聞きなさい。これからが重要（じゅうよう）なところよ」

「了解（りょうかい）」

「続（つづ）けます。もう１つの、銀色（ぎんいろ）の装置（そうち）から、別種（べっしゅ）のロボットが出現（しゅつげん）したとの情報（じょうほう）を得（え）ました」

　公園（こうえん）には、情報端末（じょうほうたんまつ）で写真（しゃしん）や動画（どうが）を撮（と）っていた人がいた。

　セントラル・パークだけではない。街（まち）の人々（ひとびと）が、ロボットの映像（えいぞう）を残している。インターネットを使って保存（ほぞん）されたため、データが失われることはなかった。ネットの情報統制（じょうほうとうせい）は難（むずか）しい。

　ライラは動画（どうが）を見せた。

　銀色（ぎんいろ）の装置（そうち）の右側、カプセル上部にある引き戸がスライド。中から銀色（ぎんいろ）のロボットが現（あらわ）れる。

　左側のカプセルは閉じたまま。

「出所（でどころ）は不明（ふめい）ですが、ほぼ同じ内容の画像（がぞう）がネットに出回っています」

　表示（ひょうじ）されたのは、カプセルが両方開（りょうほうひら）いていて、両方（りょうほう）ともドウが横たわっている画像（がぞう）。10枚あり、撮影（さつえい）された角度（かくど）と時刻（じこく）が異（こと）なる。

　イリヤが仮説（かせつ）を述（の）べる。

「断定（だんてい）はできませんが、ハイパフォーマンス装置（そうち）ではないかと思われます」

「うーん」

　反論（はんろん）する者はいなかった。グレンは唸（うな）っている。

　金髪（きんぱつ）の女性が、再（ふたた）び口を開く。

「多数（たすう）のドウより、ギンは上位（じょうい）の存在（そんざい）であると推測（すいそく）できます」

「いい暗号名（あんごうめい）だ。私（わたし）のセンスでは、こうはいかん」

「ありがとうございます。将軍（しょうぐん）」

　ホレイシオのほうを向いたライラ。軽くお辞儀（じぎ）をして、並（なら）んで立つ三人の横へ戻った。

「次は、イリヤの番（ばん）だな」

　グレンに言われて、遠慮（えんりょ）がちに口を開く青年（せいねん）。

「では、ここからはボクが話します」

　前に出たイリヤが、ホレイシオ将軍（しょうぐん）の横に立つ。三人のほうを向いた。エリカとグレンのほうに、すこし身体（からだ）を傾（かたむ）けて話し始める。

　敵（てき）ロボットのドウは、戦車（せんしゃ）の砲撃（ほうげき）にも耐（た）えた。

　装甲（そうこう）の隙間（すきま）からナイフを突（つ）き立（た）てたことで、機能停止（きのうていし）させることができた。

　腹部（ふくぶ）は、いくつかの板（いた）が並（なら）んだだけという構造（こうぞう）。手足の可動部分（かどうぶぶん）にいたっては、むき出しになっている。

　ドウは成人男性（せいじんだんせい）よりも重いため、数人（すうにん）がかりでその場から運び出された。回収（かいしゅう）したのは技術者（ぎじゅつしゃ）。それ以外の者は戦（たたか）い続（つづ）けることを選（えら）ぶ。彼（かれ）らが戻（もど）ることはなかった。

　グレンがぼやく。

「街中（まちなか）で大砲使（たいほうつか）って、効（き）かないなんて頭痛（あたまいた）いぜ」

「原始的（げんしてき）な武器（ぶき）に回帰（かいき）するとは、皮肉（ひにく）なものだな」

　将軍（しょうぐん）が、悲しそうな顔でつぶやいた。横目で表情（ひょうじょう）を見たイリヤ。口が強く閉じられる。再（ふたた）び開いた。

「分析（ぶんせき）の結果（けっか）、内部構造（ないぶこうぞう）は人間に近いと判明（はんめい）しました」

　ロボットに突（つ）き立（た）てられたナイフは、人間だと心臓（しんぞう）の位置（いち）。

　ドウに内燃機関（ないねんきかん）はない。内燃機関（ないねんきかん）で身近（みぢか）なものは、ガソリンを使って火花（ひばな）により点火（てんか）するエンジン。

　つまり、燃焼（ねんしょう）ガスを直接使用（ちょくせつしよう）して、熱（ねつ）を動力（どうりょく）に換（か）えていない。

　エネルギーが伝播（でんぱ）されていると推測（すいそく）。伝播（でんぱ）とは、広い範囲（はんい）に伝わること。

　動力（どうりょく）に変える部分（ぶぶん）は、胸（むね）の装置（そうち）だと推定（すいてい）される。

　白（しろ）い装置（そうち）か銀色（ぎんいろ）の装置（そうち）で、エネルギーを中継（ちゅうけい）している可能性（かのうせい）がある。

「なんだよ。全然（ぜんぜん）わかってないじゃないか」

「そうだけど、地球上（ちきゅうじょう）の技術（ぎじゅつ）じゃないってことは分かったよ。あ、いえ。分かりました」

　グレンにいつもどおりの口調（くちょう）で答えたイリヤが、渋（しぶ）い顔（かお）をした。

「すでに、爆撃（ばくげき）の許可（きょか）は下（お）りている」

　将軍（しょうぐん）は淡々（たんたん）と事実（じじつ）を述（の）べた。

「街（まち）を破壊（はかい）しても、ドウを破壊（はかい）できる可能性（かのうせい）は低い。そう進言（しんげん）されたらしいのですが」

「それで、オレたちの出番（でばん）。だろ？」

「状況（じょうきょう）が理解（りかい）できているのか疑問（ぎもん）だわ」

　まとまりのない三人の会話（かいわ）に、ライラは無言（むごん）のままだった。表情（ひょうじょう）を変えず、金髪（きんぱつ）ミドルヘアも揺（ゆ）らさない。

　イリヤが話を続（つづ）ける。

「パワードスーツには問題（もんだい）が多くて、実用化（じつようか）は無理（むり）です」

「色々（いろいろ）なところからヒントを得（え）てたのに、残念（ざんねん）だな。装着（そうちゃく）したかったぜ」

　パワードスーツという言葉（ことば）にすぐ反応（はんのう）したグレン。イリヤも続（つづ）く。

「まず、一番（いちばん）の問題（もんだい）がエンジンの熱。とても耐（た）えられない。かといって、大型化（おおがたか）すると重量（じゅうりょう）が問題（もんだい）になる」

「小型（こがた）にすると、耐久性（たいきゅうせい）が……だっけ？」

「ドウのような材質（ざいしつ）を作り出す技術（ぎじゅつ）が、現在（げんざい）の科学（かがく）にはない。なぜあのデザインなのかが不思議（ふしぎ）だけど」

「というか、秘密兵器（ひみつへいき）のことを忘れてるだろ」

　グレンから指摘（してき）されて、二人で話し込んでいたイリヤの背筋（せすじ）に力が入る。

「そうです。パワードスーツ用に開発（かいはつ）していたものを仕上（しあ）げました」

「使いこなしてみせます！　あたしが」

　エリカが、強い口調（くちょう）で宣言（せんげん）した。

　何かを思い出した様子（ようす）のグレン。つぶやく。

「あ。ゴリラでも扱（あつか）えないんじゃないか、って言ってた、あれか」

「高周波（こうしゅうは）ブレードが、元の切れ味をわずかに上げます」

　イリヤは自信満々（じしんまんまん）の表情（ひょうじょう）を見せた。

「わずかに、って……」

「使用者（しようしゃ）に振動（しんどう）が伝わりにくくしても、身体（からだ）への負担（ふたん）は大きくなるので」

　話を止（と）めたイリヤ。柔（やわ）らかい表情（ひょうじょう）のエリカが見つめる。

「武器（ぶき）は２本ね」

「はい。それで、二人がここに」

「ドウの装甲（そうこう）から武器（ぶき）を作れないのか？」

「大砲（たいほう）でびくともしない材質（ざいしつ）を、どうやって加工（かこう）するのさ」

「参（まい）ったな」

　口調（くちょう）を注意（ちゅうい）することもなく、将軍（しょうぐん）が告（つ）げる。

「エリカ。グレン。君（きみ）たち以外に振動剣（しんどうけん）を扱（あつか）える者（もの）はいない。この近くでは、な」

　前触（まえぶ）れもなく、ライラが話し始める。

「つまり、ギンを破壊（はかい）。装置（そうち）の鹵獲（ろかく）、または破壊（はかい）がおこなわれなければ」

「街（まち）は跡形（あとかた）もなく破壊（はかい）されることになるだろう」

　将軍（しょうぐん）が続（つづ）きを言った。

　鹵獲（ろかく）とは、敵（てき）の装備品（そうびひん）や補給物資（ほきゅうぶっし）を奪（うば）うことである。

　作戦（さくせん）の指揮権（しきけん）を持（も）つのは大統領（だいとうりょう）。ホワイトハウスの近くで起こった襲撃（しゅうげき）に対して、黙（だま）って見ているわけにはいかない。国（くに）のメンツに関（かか）わる。

　デイヴィッド大統領（だいとうりょう）は、あまり長く我慢（がまん）できないことで有名（ゆうめい）。

　ジョン大統領首席補佐官（だいとうりょうしゅせきほさかん）は苦慮（くりょ）していた。

　ウィリアム空軍参謀総長（くうぐんさんぼうそうちょう）からの助言（じょげん）で、空爆（くうばく）は先送（さきおく）りされている。

　猶予（ゆうよ）は、あとわずか。

「させないわ。絶対（ぜったい）に」

「ああ。オレたちでやるんだ」

　比較対象（ひかくたいしょう）に比（くら）べ背の低い長髪（ちょうはつ）の女性と、背の高い短髪（たんぱつ）の男性が拳（こぶし）を握（にぎ）る。将軍（しょうぐん）を見つめた。

「作戦（さくせん）は、私（わたし）の独断（どくだん）ということになる。動かせる駒（こま）はすくない」

「……」

「生（い）きて戻ること。これは命令（めいれい）だ」

「了解（りょうかい）」

「了解（りょうかい）！」

　二人が敬礼（けいれい）。遅（おく）れてイリヤとライラも敬礼（けいれい）した。

　ロッカーが開けられている。紺色（こんいろ）の上着をしまう、髪（かみ）の長い女性。

　白（しろ）いシャツの上からでも、鍛（きた）えられた肉体美（にくたいび）が見て取れる。エリカは、灰色（はいいろ）を基調（きちょう）とした迷彩用（めいさいよう）の戦闘服（せんとうふく）に身を包んだ。長い髪（かみ）を頭の上にまとめようとして、やめた。

　胸と二（に）の腕（うで）にあるポケットに、ナイフを入れる。

　ずらりと並（なら）ぶロッカーを前にしているのは、一人だけ。

　表情（ひょうじょう）に憂（うれ）いを湛（たた）えてはいない。長いまつげが下がって、まぶたに力が入る。目が開いた。

　クリーム色（いろ）の靴紐（くつひも）を、きつく結（むす）ぶ。

　ひとつに束（たば）ねた淡（あわ）い茶色（ちゃいろ）の髪（かみ）が揺（ゆ）れて、部屋（へや）のドアが閉まった。

　廊下（ろうか）に響（ひび）く足音。

　建物（たてもの）の入り口に、迷彩服（めいさいふく）を着た体つきのいい男性が立っている。靴（くつ）はクリーム色（いろ）。外ではちらちらと雪（ゆき）が舞（ま）っていた。

　背（せ）の高いグレンが白（しろ）い息（いき）を吐（は）く。

「寒（さむ）いな。そりゃそうか。もうすぐ冬のお祭り、だな」

「のんびりするのは終わってからよ」

　すこしだけ表情（ひょうじょう）を緩（ゆる）めたエリカも、白（しろ）い息（いき）を吐（は）いた。

　ドアが開く。

　雪（ゆき）は積（つ）もっていない。二人の靴（くつ）が普段（ふだん）と同じ速度（そくど）で動く。

　ニュージャージー州（しゅう）の北東部。ニューヨーク市（し）に通勤（つうきん）する者が多いため、街（まち）は静（しず）かになっていた。

「どうせ着替（きが）えるなら、私服（しふく）で集合（しゅうごう）した意味（いみ）なかったよな？」

「戻（もど）ってこい、ってことでしょ」

　建物（たてもの）の外へ出た二人は、軍用車両（ぐんようしゃりょう）に乗（の）り込（こ）まなかった。駐車場（ちゅうしゃじょう）へ向かう。アメリカの一般的（いっぱんてき）な自動車（じどうしゃ）に乗（の）り込（こ）む。色（いろ）は白（しろ）。

　大きく頑丈（がんじょう）な車体（しゃたい）は、広大（こうだい）な国土（こくど）に合わせたもの。大排気量（だいはいきりょう）エンジンが搭載（とうさい）されていて、悪路（あくろ）も苦（く）にしない。

　重量感溢（じゅうりょうかんあふ）れるマッチョなスタイルは、乗り手の趣味（しゅみ）。

　左側の運転席（うんてんせき）へ座（すわ）ったグレンに、助手席（じょしゅせき）のエリカが聞く。

「やっぱり、こういうのが好きなんだ」

「ん？　ああ見えて、将軍（しょうぐん）も鍛（きた）えてるからな。こういうのが好きなんだろ」

　車はホレイシオ将軍（しょうぐん）の私物（しぶつ）だった。迷彩服姿（めいさいふくすがた）の二人が、シートベルトを着用（ちゃくよう）する。

「将軍（しょうぐん）の？　慎重（しんちょう）に運転（うんてん）してよ」

「了解（りょうかい）。運転（うんてん）に集中（しゅうちゅう）するから、それの使（つか）い方（かた）を頼（たの）む」

　グレンが車のエンジンをかけた。ステアリング・ホイールを握（にぎ）り、ゆっくり進んでウインカーを出す。一時停止（いちじていし）して、ゆっくり進みながら道へ出る。

　ウェスト・ニューヨーク。川をはさんで、ニューヨーク市（し）と対岸（たいがん）の街（まち）。

　川は、北北東（ほくほくとう）から南南西（なんなんせい）へと流れる。沿（そ）うようにつくられた道も、川の流れに合わせていた。

　道路（どうろ）に車はすくない。不気味（ぶきみ）なほど静（しず）まり返（かえ）っていた。

　やわらかな光の中、車は右の車線（しゃせん）を進む。

　黒（くろ）い鞘（さや）に入った刀（かたな）を、抱（だ）き締（し）めるように両手で握（にぎ）るエリカ。インナーイヤー型（がた）のヘッドフォンを左耳にはめ、イリヤがおこなう振動剣（しんどうけん）の解説（かいせつ）を待（ま）つ。

　刀身中央（とうしんちゅうおう）でもっとも反（そ）った形の打刀（うちがたな）。長さ、約70センチメートル。

　柄（つか）と鍔（つば）のあいだに埋め込まれた機械（きかい）が、高周波（こうしゅうは）による振動（しんどう）を発生（はっせい）させる。

　柄（つか）は、手で持（も）つ棒状（ぼうじょう）のところ。鍔（つば）は、刃（やいば）と棒（ぼう）の境目（さかいめ）にある平（ひら）たい鉄板（てっぱん）。

　スイッチは銃（じゅう）の引（ひ）き金（がね）のような装置（そうち）。柄（つか）にあり、利き手の人差し指で押しているあいだ、作動（さどう）する。

　柄頭（つかがしら）の装置（そうち）と柄（つか）の中心部（ちゅうしんぶ）にある装置（そうち）については、語られなかった。

　柄頭（つかがしら）は、棒（ぼう）の先端（せんたん）。

　刃（やいば）の両側（りょうがわ）が切れると危（あぶ）ないという理由（りゆう）で、刀（かたな）が選（えら）ばれた。

　うしろの座席（ざせき）に置（お）かれているものも、同じ見た目。グレンの武器（ぶき）。

　宣言（せんげん）どおり、グレンは安全運伝（あんぜんうんてん）を続（つづ）けている。

　アメリカ陸軍（りくぐん）、第五軍（だいごぐん）。北方（ほっぽう）、即応旅団戦闘団（そくおうりょだんせんとうだん）。本日（ほんじつ）、五名が加（くわ）わった。

　戦闘部隊二名（せんとうぶたいにめい）。通信隊二名（つうしんたいにめい）。作戦指揮司令部（さくせんしきしれいぶ）と戦闘部隊司令部（せんとうぶたいしれいぶ）を統（す）べるのは兼任（けんにん）で、一名。

　ホレイシオ中将（ちゅうじょう）が全責任（ぜんせきにん）を取るための、形式上（けいしきじょう）のものだった。

　車は東へ。セントラル・パークを目指（めざ）す。