前半は、まるでキューブリックのあの映画や、ホーガンの代表作を彷彿とさせる近未来の宇宙が精密な描写で描かれる。
我々が憧れた、見たこともない宇宙。
おそらく、生きている間にこの光景を見ることはできないだろう。それを垣間見せてくれるのが、SFの醍醐味である。
しかし、物語はそれで終わりではない。
主人公が帰り着いた地球の光景。それは、遠い昔から連綿と受け継がれてきた、懐かしい、とても懐かしいおなじみの、そしてかけがえのないものである。
全ては変わっていくが、変わらないものがあって良い。
作中に登場するあるアイテムがアレで、少し笑ってしまった。
物語の結末も、とても懐かしい空気が流れてくるのだが、それは読んで確かめてもらいたい。
今も心に残る、あの夏の空気を……。