第21話 新しい始まり

 映画だったらここで主題歌が流れて、エンドロールだなと思っていたところで、ツバサが席に来た。

「そうそう。個人的にビッグニュースがあって」とツバサはいつもの美少女スマイルで話し始めた。


 私は、最近自分の身に起こったこと以上にビッグニュースな出来事はないだろうと思いながら「どうしたの?」と返事をした。


「うん。お祖母ちゃんのところに住んでた双子のお兄ちゃんが、この春からうちで一緒に住むことになったの」


「へ? 双子のお兄さんなんていたっけ?……そういえばそんな話してような?」

 その時まですっかり忘れてたけど、小学生の頃にそんな話をしていたような気がする。


 でもそんな記憶があったら、男のツバサを見た時に双子のお兄さんがいたこと思い出しそうなものなのに…。


 え? もしかしてこれもまた別の世界?


 いや、私の記憶は繋がってるから別世界ではないか。私の世界が書き換えられたような…。って、そんなばかな。私の考えすぎ?


 考えがまとまらない中、私は少しずつ思い出していた。


 お母さんが病気がちな中、二人同時に育てる自信がなくて、離れ離れに暮らしてるとか言ってたような気がする。


「中学生くらいになって、手がかからなくなってもお祖母ちゃんが離れたくないみたいだったんだ。でもお祖母ちゃんがもう歳だから施設に入りたいって話になって」とツバサが言った。


「それで一緒に住むことになったんだ。よかったね」と言ったあたりで、私ははたと気付いた。男女だから二卵性なのだろうけど、双子だったらあっちの世界の男のツバサに似てるのでは?


「双子の兄弟だけど、今まで一緒に住んでなかったから、何か緊張するー」

と言いながら、ツバサがスマホで見せてくれた写真は、まさにあの男のツバサそのものだった。


 いや、かすかに見える左耳のホクロが、あのツバサ本人であることを物語っているような気がする!


 私は男のツバサに会えること、そしてこれから始まるかもしれない新たな物語に勝手に胸をふくらませた。


 会ったら、絶対好きだって言おう! あのツバサじゃなかったら不思議がられるかもしれないけれど!


「ちなみにお兄ちゃんの名前はヒカルだよ」というツバサの言葉が小さく響いた。



  ーーーおしまいーーー

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