【問題編Ⅱ】人気小説家が二流な理由
まず、描写が下手だ。風景も心理も状況も、文からまるで読み解けない。
ホラー小説では重要視されるべき箇所のはずだが、「どこかで誰かに何かしらが起こっている」といった実に曖昧な情報しか伝わってこないのだ。
化け物が出るにしても、大きさも形も色も特徴も分からない。具体的に何をしているかも分からない。こんな状態で小説に没入するのも困難を極める。
突然取ってつけたように叫んだりするシーンがあるが、これではドン引きもいいところであり、結局読むのを中断してしまった。どんな作品だろうと一気読みするのが信条の私が、それを放棄する程には辛いものだった。
それに、話の内容も稚拙極まる。どこかで見たキャラクター、どこかで見たストーリー。起承転結、見事に他作品の継ぎ接ぎであり、まるで、オリジナリティを感じない。言ってしまえば厚顔無恥も甚だしい。
更に致命的なことに――基本的な文法すらまともに出来ていないときている。初めて読んだ際には「この作者は外国人か」と突っ込んでしまったほどである。ろくに校正もせずにGOサインを出した、出版会社についても非はあるにせよだ。
人気作に対してこのような持論を出すと「ならばお前はこんな作品を作れるのか」「いい年して僻みは醜い」などと野次が飛ぶだろう。それこそ、読んでもいないのに作品の否定をしているように受け取られかねない。その度に酷く不本意な気持ちにさせられる。
しかし、現につまらないという事実は変わらない。私自身に問題があるのだと思ったこともある。それとも購入した本が違っていた――海賊版、アンソロジーの類なのかとも。疑いを解決するためにあらゆる手をつかったが、わだかまりが解決することは遂になかった。
評論家の友人に思い切ってどこが面白いのかを尋ねたみたこともある。無礼は承知のうちである。
彼は目を丸くしながら手を振った。
あなたは――恐怖を感じていないのですか。
その仕草を見て、どうやら私と友人との間には隔たりがあるのだと悟った。だが、それが一体何なのかは考えても浮かんでこなかった。
結論として、私は不思議で不思議で夜も眠れていない。この現状こそホラーだと言いたくなってくる。
絶賛する著名人全員が、怪奇堂にカネを積まれたわけでもあるまい。それにしては、虜になっているメンバーやその人数が大きすぎるからだ。
今度また、新しい作品が賞を取るらしい。芥川だったか、直木だったか、ナントカ大賞だったかは分からないが……
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